<概要/Course Content Summary>
2000年代以降の“韓流”からK-POPブーム以降,ぎくしゃくしながらも「近くて近い国」になりつつあったところに,政治的なバックラッシュの波が押しよせている。 2015年には遅まきながら日韓首脳会談が開かれ,年末ぎりぎりの12月28日に外相会談が開かれ,日本軍「慰安婦」被害者の頭越しに,日韓「合意」をむすび,両政府は政治決着をつけようとした。その後,ロウソク革命により,文在寅(ムンヂェイン)政権が誕生し,今その揺り戻しが始まっている。一方,朝鮮民主主義人民共和国とは何の話し合いもできていない(日本軍「慰安婦」被害は朝鮮半島のみではなく,日本軍が派遣されたすべての地域〔大東亜共栄圏〕に及んでいることも忘れてはならない)。 2016年7月には朝鮮学校高校無償化適用を求める裁判で大阪地裁は原告大阪朝鮮学園の主張を認め,全面勝訴となったものの,2018年9月の控訴審では逆転敗訴となり,その後最高裁では棄却された(その後,東京・愛知・広島・福岡での高裁判決は敗訴に終わり,最高裁でもすべて棄却された)。教育の問題を政治・外交的な問題に転化している。このことをどう考えるか? 2018年は朝鮮半島では南北首脳会談が3回開かれ,史上初の朝米首脳会談が開かれ,分断国家の大いなる歩み寄りが見られた。そして,大韓民国(8月15日)・朝鮮民主主義人民共和国(9月9日)はいずれも昨年建国70周年を迎えた。10月30日には韓国大法院(最高裁)が元徴用工裁判で被告新日鐵住金に対して損害賠償命令を下し,日本政府が不服を示している。また,K-POPアイドルグループに対し,「反日」であると決めつけ非難がおこっている。 2019年は日本の植民地支配に対して,朝鮮の民衆が立ち上がった三一独立運動から100周年を迎えた。 2020年は日本の敗戦・朝鮮の解放75年,朝鮮戦争勃発70年,韓日国交正常化55年(朝鮮民主主義人民共和国とはいまだに国交がない)の年を迎え,コロナ19禍の中,これといった進展もなく,2021年を迎えた。 また,ヘイトスピーチ(差別扇動表現)問題はまだまだおさまらない。特に,「在日特権を許さない市民の会(在特会)」による京都朝鮮第一初級学校襲撃事件(2009年12月4日)は,京都地裁で画期的な有罪判決が出たあと,大阪高裁は被告在特会の控訴を棄却,さらに最高裁への上告も棄却(2014年12月9日)され,“高額”の損害賠償と在特会の刑が確定し,実行者は刑に服した。また,これらのことにより,日本政府は国連人種差別撤廃委員会からの勧告(在特会・朝鮮学校問題など)を受けているが,強制力がないことから改善しようとしない(包括的な差別禁止法の法制化が急がれる所以である)。2016年には国レベルで「ヘイトスピーチ規制法」が施行され,大阪市では地方自治体としては初めての「ヘイトスピーチ対処条例」を施行された(2019年12月に川崎市は罰則付きのヘイトスピーチ条例が成立した)。 関西地方でのヘイトスピーチデモがおさまってきたかと思っていた矢先,2021年夏に宇治市ウトロ地区で奈良県在住の22歳の青年による放火事件が起こり(昨年夏に4年の実刑判決を受け,現在刑に服している),その模倣犯ともいえる事件が発生した。2022年4月に大阪府茨木市にあるコリア国際学園で隣の箕面市に暮らす29歳の青年が玄関前で放火をおこなったのだ。ヘイトスピーチから一層深刻化したヘイトクライム(憎悪犯罪)である(こちらは現在係争中)。 昨年2023年は関東大震災朝鮮人・中国人虐殺から100年。日本政府は一度も謝罪・補償もおこなっていないどころか,証拠となる資料は見当たらないとしている。 これらにより,朝鮮半島との関係は改善されるどころか,感情的な対立を深めている。これらのことが日本に暮らす人々にどんな影響を与えているかをヘイトスピーチに反対する取り組み・日本軍「慰安婦」問題・朝鮮学校「無償化」排除問題・日本人「拉致」問題などを事例として検討したい。
<到達目標/Goals,Aims>
朝鮮と日本の間には長い友好親善の歴史があった。ところが,近現代に入り,その関係を損なうできごとがあった。35年にわたる朝鮮植民地支配がそれで,これに対する正確な知識・理解の欠如が,現代日本に生きる私たちにどんな影響を及ぼしているかを検討する。いくらか減ったかのように見えるヘイトスピーチ(差別扇動表現)を克服し,誰もが暮らしやすい日本社会にするためには何が必要か考える力をつける。また,自分が得た情報を鵜呑みにしないで,検証する姿勢を身につける。そして,副題にあげた“植民地主義の克服を目指して”,大学生のみなさんとともにできることは何かを探る。
<DO Week期間の初回動画等の配信/The delivery of the first video, etc. during the “DO Week”>
あり/ Deliver the video
・「国際教養基礎論1-51」第1回ガイダンス(担当:こうのすけ)
<授業計画/Schedule>
実施時期 /Week |
授業回/Number of Lesson |
授業実施方法 /How to conduct a Lesson |
授業実施時間数 /Class Hours |
内容/Contents |
授業時間外の学習/Assignments |
第1週 DO Week
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1 |
オンデマンド(動画視聴)/On-demand(watching video)
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90 分/min |
ガイダンス 朝日関係史からはじめよう-歴史修正主義の克服のために-同志社の大先輩尹東柱/ユンドンヂュを知っていますか? |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第2週
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2 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
なぜこんなにたくさんいるのか?-在日朝鮮人の歴史 |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第3週
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3 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
朝鮮学校ってどんなとこ?(1) |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第4週
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4 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
朝鮮学校ってどんなとこ?(2) |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第5週
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5 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
京都朝鮮学校襲撃事件裁判 |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第6週
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6 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
日本軍「慰安婦」問題をどうとらえるか?(1)「平和の処女像」を知っていますか? |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第7週
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7 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
日本軍「慰安婦」問題をどうとらえるか?(2) |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第8週
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8 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
官製ヘイトとメディアと言論弾圧の進行(1) |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第9週
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9 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
官製ヘイトとメディアと言論弾圧の進行(2) |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第10週
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10 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
韓日関係を悪化させているのは誰か? |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第11週
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11 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
善隣友好の歴史・朝鮮通信使を知っていますか? |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第12週
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12 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
朝鮮人戦時動員と日本人「拉致」問題 |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第13週
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13 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
国内植民地としてのアイヌモシリ・琉球と日本 |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
第14週
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14 |
面接/Face-to-face
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90 分/min |
「反日」とは何か? 「抗日」とは? 「愛国」とは? |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
授業期間終了後/After the Class Period
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15 |
オンデマンド(動画視聴)/On-demand(watching video)
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90 分/min |
まとめ―誰もが暮らしやすい日本社会とは |
つねにメディア・ネットなどで情報をチェックする |
<授業実施時間数/Class Hours>
授業実施方法/How to Conduct a Lesson |
授業実施時間数/ Class Hours |
面接/Face-to-face |
1170 分/min |
オンデマンド(動画視聴)/On-demand(watching video) |
180 分/min |
オンデマンド(授業内課題)/On-demand(assignment in class) |
0 分/min |
リアルタイム配信/Real-time online |
0 分/min |
その他/Others |
0 分/min |
総合計/Total Amount of Class Hours |
1350 分/min |
毎回,関連した映像を紹介することによって,問題への理解を深めていただく。特別ゲストをお呼びする場合もある。毎週の講義とは別に,大学公認の「同志社大学日朝関係史講座」(5月開講・毎週金6限・今出川キャンパス)の受講を勧める。また,朝鮮学校見学会・猪飼野(生野区)フィールドトリップ・朝鮮料理試食会も企画(自由参加)する。※情勢が刻々と変化していることもあり,それに応じたシラバスの内容の変更もありうることをお断りしておく。
アクティブラーニング/Active Learning
使用システム/System Tools
e-class, Teams, Panopto
<成績評価基準/Evaluation Criteria>
平常点(出席,クラス参加等)
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20%
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授業への積極的な参加を評価する。
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中間レポート試験
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40%
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在日朝鮮人の歴史的経緯や日本社会と朝鮮半島との関係をどのように理解しているかをみる。
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期末筆記試験
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40%
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講義内容に関連し,テーマを設定し,いかに自分に引き付けて論じられているかをみる。
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教室での筆記試験が実施できない場合は,レポート試験等の他の成績評価方法に変更することがある。
<テキスト/Textbook>
特に指定はしない。講義の中で,随時参考文献等は紹介する。
<参考文献/Reference Book>
毎週,朝鮮韓国在日に関する情報を随時配信する。これもまた重要な参考文献となる。催し・研究会・講演会などに積極的に参加してほしい。
<参照URL/URL>
<連絡方法 / Contact method>
科目担当者への連絡方法/Contact method from student to instructor
メール
科目担当者からの連絡方法/Contact method from instructor to students
DUET
<備考/Remarks>
面接授業を予定しているが,登録者多数等で教室での面接授業が実施できない場合は,遠隔授業に変更することがある。
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