2022年度

(水曜日5講時)
面接/Face-to-face

＜概要/Course Content Summary＞

「着物のすばらしさを再認識し，子どもたちに絵本制作を通じて未来の需要を喚起してみませんか」　
　
呉服市場は衰退して久しく，市場規模は1980年前後のピーク時は1兆8,000億円だったのに対し，2010年では3,000億円，2020年では2,380億円と大幅に縮小しています。　
　
呉服市場の再生を願うところではあるものの，産業として今後も発展させていくことが難しい状態になりつつあります。需要縮小の中，染織作家や一部の着物ファン層だけでは維持が難しく，職人は減少，後継者も減り，廉価品が出回り，シルクの着物はより手の届かないものになるという状況です。　
　　
さらに近年は新型コロナウイルス感染症の影響も大きくなっています。成人式の中止や全国の大学などで卒業式を中止する動きが広がり，若者が着物に接する機会も少なくなっています。　
　　
こうした状況の中，日本文化の教育として「着物への憧れ」を広めていくことは有効な手段であると考えられます。　
　　
本プロジェクトでは京都西陣の着物産業の素晴らしさ，技術の高さ，華やかさに触れつつも，伝統と歴史ある産業が後継者不足，需要不足などの厳しい現状に直面していることを理解し，その１つの解決策として「若年層への着物の良さを広める」ためのプロモーションを企画し，実行していきます。　
　
具体的には着物の良さに気づくための幼児・小学生低学年向け絵本・読本を制作し，幼稚園・保育園・小学校等にプロモーションするまでを最終目標としたプロジェクトです。プロジェクトを通じて，学生自身が「世界の民族衣装の中の日本の着物」の良さを発見し，また着物産業における問題点や活路について理解を深めることで，日本をよりよく発信できる国際性豊かな人材に成長してくれることを期待しています。　
　
この科目ではまず，着物産業の現状を知るためにフィールドワークを実施し，問題意識の共有をするところから始めます。その中で，各分野の職人減少の危機について理解を深めます。　
　
その上で，学内や学生のまち京都の中で留学生に接し，世界の民族衣装についても理解を深めます。世界の民族衣装として日本の着物を理解し，『世界の着物，日本の着物（仮称）』という読本・絵本の制作について企画を始めます。　
　
制作にあたっては文章化，イラスト化，紙面台割の検討を履修生が企画制作していきます。適宜デザイン会社のアドバイスを受けながら制作に取り組んでいきます。　
　
完成した後は京都市内の幼稚園・保育園・小学校等に配布し，着物に興味をもつきっかけとして活用していきます。　
　
科目担当者は，広告会社㈱テイストの代表として，デザイン，印刷，PR，プロモーションに長年携わり，京都の伝統工芸，伝統産業の顧客に活性化のための解決策を提示してきました。本授業では，着物産業を題材とし，産業の理解，活性化のための解決策の立案，プロモーション活動のプロセスについて学んでいただきます。　

＜到達目標/Goals,Aims＞

1．着物産業の理解を通じたマーケティング能力向上　
　着物産業の市場調査やフィールドワークを通じ，現在の着物のターゲット層のマーケット分析，流通経路を研究する事により，社会に出たときの市場調査や商材の分析能力の向上ができるようになる。　
2．世界の中の日本の再認識　
　単に着物の理解だけではなく，留学生との交流や京都でのフィールドワークを通じて世界の民族衣装の中の日本の着物のの理解を深め，国際社会の中での日本文化，という広い視野で物事を理解できるようになる。　
3．着物のを題材としたプロモーションの理解　
読本・絵本制作から幼稚園・保育園・小学校での発表までを通して需要を喚起するプロモーションの理解が深まるようになる。

＜授業計画/Schedule＞

1．着物産業見学は現場の実際の作業工程により実施回が前後する可能性があります。　
2．幼稚園・保育園・小学校へのプロモーションは相手方の計画に左右される場合があり，相手方の都合により実施日，実施時間が前後する可能性があります。　
3．授業には適宜ゲストスピーカーが登壇することがあります。

＜成績評価基準/Evaluation Criteria＞

社会情勢の変化に伴い授業実施方式等が変更となった場合，評価項目を適宜調整する場合があります。

＜テキスト/Textbook＞

授業中に配布するプリントや資料など。

＜参考文献/Reference Book＞

参考文献は上記にとどまりません。着物，西陣織，YouTubeコンテンツなど，各人が理解を深められる資料に幅広くあたってください。

＜参照ＵＲＬ/URL＞

＜授業形態備考/Class type＞

この授業の性質上、原則「教室で対面授業」を行います。ただし、コロナ禍の状況次第では双方向オンラインでの授業を行う可能性があります（Zoomなど）双方向でのオンライン授業の場合は原則、カメラ機能をオンにすることが必須です。 

＜備考/Remarks＞

1．絵本制作などのグラフィックツールやイラストのスキルを有していることが必須ではありません。初心者同士でもチームとして力をあわせたり，協力者を取り付けることにより良い作品は完成しますので，デザイン経験者，未経験者問わず意欲のある学生を歓迎します。　
2．自分のノートPCやソフトウェアを使用したい場合は各自の責任で持ち込み可能です。