シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


16600103-704 

△プロジェクト科目2-704 (京都の魅力を発掘し、訪日外国人向けの体験ツアーを作成・実施)
Project-based Seminar 2-704 -Discovering Kyoto's charm. Creating and operating your experience-based tour for inbound tourists-
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  PBL/PBL

  藤本 賢司 新 茂之

1

<概要/Course Content Summary>

 もはや京都で外国人観光客を見ない日はない。観光を基幹産業と捉え,国をあげた取り組みで訪日旅行客数は好調に伸び,高い経済効果を上げている。しかし,オーバーツーリズムの問題,ガイド・観光施設の多言語スタッフの不足,魅力発信の不十分さなど,多くの課題がある。 
 
 一方で技術革新を基盤に,旅行会社を介さない個人旅行客の増加,シェアリングエコノミーの拡大,モノ消費からコト消費へのトレンドの推移(さらには「ヒト消費」とも言える状況になりつつある),旅行者の趣向の多様化,航空券の値段が需要に基づき絶えず変化するダイナミックプライシングが主流となりパッケージツアー商品の設定が困難になるなど,観光業界を取り巻く状況は大きく変化を続けている。 
  
 Airbnb(エアービアンドビー)などの民泊は完全に市民権を得たし,2018年1月の通訳案内士法改正により外国語での有償案内に通訳案内士の資格が不要となり,体験ホストと言われるような新たなガイドの参入が相次ぎ,「素人革命」とも言うべき,革新が現場では起きている。そして,その新しいガイドが案内する専門特化した短時間の体験ツアーは,急激に拡大しつつある「ニューツーリズム」と呼ばれる市場の一角を占めるようになった。 
 
 目指すべく観光立国日本の実現のため,今こそ教養を備えた優秀な人材が観光業界で必要であり,自ら課題を発見し,既存の常識に囚われず主体的に新たな価値創造をできる若い世代の台頭は,社会全体の要請でもある。 
 
 本授業では,訪日外国人をビジネス相手とするインバウンド業界の概況からはじまり,ガイドの心得・ツアーの造成(下見・企画)および広報の仕方を座学で行う。さらに最前線で活躍中のガイドから実践的な話を聞き,実際に外国人に人気のツアーに多数参加してもらう。その中からヒントを得てもらい,3〜5人のチームを組み,全員がガイド・添乗員・企画制作・営業広報などの役割を担当し,京都を舞台にした外国人向けの約1時間のテーマ性のある独自の体験ツアーを作ってもらう。実際にロケハン=下見を行い,京都の魅力を抽出して,コンセプトを練り上げ,体験商品に結実させる過程は,様々なスキルが問われる創造的な営みである。 
 
 今回,ターゲットである訪日外国人に魅力を伝えるためのチラシの作成と宣伝も受講者に行ってもらう。一度相互参加のデモツアーを行ない改善を経て,最終的に全チームが本物の体験ツアーを行ない参加者(訪日外国人)からフィードバックをもらう。受講者には,一般的でありきたりではない,深みとテーマ性のあるユニークな体験の造成を期待しており,我々も一緒に京都の新たな魅力を発掘したいと考えている。優秀体験には希望があれば,実際に商品化して販売をすることも可能である。 
 
 科目担当者自身も,旅行業に10年以上従事,ツアーの企画・ガイドを行なっており,本校の卒業生でプロジェクト科目の元受講生でもある。本授業はその経験を活かし,現場目線を大切にし,より実践的となるように設計している。また,学生の主体性に重きを置き,「本プロジェクトが学生にとって貴重な成長機会となってほしい」という想いをベースに授業と執り行う。 

科目担当者が伏見稲荷ハイキングツアーのガイドを行う様子

<到達目標/Goals,Aims>

・京都の現状を見据えながら魅力を探る作業を通じて,多角的な視点・発想力が求められ,一つの問題を深掘りする力が身につくようになる(課題発見力)。 
・体験ツアー作成を通じて,近年社会で必要とされる,新たに価値を生み出していく力を身に付けることができる(課題解決力)。 
・体験ツアーのコンセプトを練り上げることで,情報社会において重要な,必要な内容を一次情報から抽出し,それを加工して伝える,情報収拾・発信力を鍛えることができる(情報力)。 
・ガイド,添乗員,企画,営業などの役割分担をしながら,一つの体験商品を作り上げることで,チームワークによる成功体験と,社会にでてから不可欠なチームプレーに必要なコミュニケーション能力が磨かれる(チーム力)。 
・求められる能力の異なる役割分担をチームとして体験することで,自分の特性や好みを知ることができる。それは,社会に出てからの進路を決める上で大きな指針となるものである(自己分析)。 
・観光業界の概況と最前線の現場に触れることで,今後観光業界の仕事・研究をする者にとっては,貴重な肌体験を積むことができる(観光業の仕事体験)。 
・実際に体験ツアーのガイドをし,訪日外国人の参加者からフィードバックも得ることで,外国人おもてなしの最前線に立ち,国際感覚を実体験として身につけることができる(国際感覚)。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) ●秋学期 
(実施回/ Week) (1)9月29日  (内容/ Contents) ガイダンス(本授業の流れ,インバウンドの概況・概論,コロナ後のインバウンド・観光産業の現状,ガイド最前線の話とガイドの醍醐味,オンラインツアーの話,ツアーを作る楽しさ,ツアー作成時の役割)  
参加者の自己紹介(強み,やりたいこと,外国人に伝えたい京都の魅力)  
京都のインバウンドの課題や問題提起(オーバーツーリズム後のゼロツーリズム,地域創生,地域・観光事業者の果たす役割) 
【(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) Airbnb Online Experienceに掲載のオンラインツアーを自分なりに閲覧すること。 
(実施回/ Week) (2)10月6日  (内容/ Contents) 第1回オンラインツアー参加(オンライン富士登山) 
第1回グループワーク(3つのグループに分かれ,参加する前と後でイメージが変わったかを共有し,どのようなオンラインツアーを作りたいかを発表。議論20分+発表10分) 
【藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 普段の生活の中で,オンラインツアーの候補を探しながら,周囲を観察すること。 
(実施回/ Week) (3)10月13日  (内容/ Contents) 第2回オンラインツアー参加(琴バスオンラインバスツアー「南薩観光・村方さんと巡る鹿児島・南九州市の旅 薩摩の小京都『武家屋敷』と平和の尊さを知る『知覧』」) 
ゲストスピーカー講演 
オンラインバスツアーの狙いと工夫 
【(ゲストスピーカー・琴平バス株式会社代表取締役楠木泰二郎)・(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/三条】 
(授業時間外の学習/ Assignments) ツアーで工夫をされていた点を自分なりに考える。オンラインツアーの感想と希望のオンラインツアーの内容(概要)と希望の役割をレポートにまとめて提出。 
(実施回/ Week) (4)10月20日  (内容/ Contents) ゲストスピーカー講演 
ゲストの楽しませ方,英語にたよらないコミュニケーション,写真撮影ポイントの選定 
マーケティング(ターゲットの選定,コンセプトメイキング,売れるツアーとその売り出し方,どのような体験が人気があるのか) 
役割分担の発表(ガイド,Zoom運営担当,企画制作,営業広報等) 
チーム発表 
第1回チームワーク(コンセプトメイキング。どんなツアーを作りたいか,何を取り上げたいかを話し合い,発表を行う。議論25分+発表15分) 
【(ゲストスピーカー・ photoguider-Japan代表赤松学)・藤本・〔新〕/今出川・今出川キャンパス周辺】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 希望の役割を考え,動機を発表できるよう考えること。 
 
ロケハン=下見場所の候補を選定し,歴史的背景などのその場所の魅力を発表できるよう考えること。 
(実施回/ Week) (5)10月27日  (内容/ Contents) ツアー作り(ツアーの組み立て方,演出の仕方) 
第2回チームワーク(役割決め,オンラインツアー候補決め,ロケハン場所決め) 
【(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/今出川】 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) チーム毎に次回のロケハン場所を決定し,必要であれば下見や,予約・許可申請を行うこと。 
(実施回/ Week) (6)11月10日  (内容/ Contents) 各チームに分かれロケハンを行う,担当が各チームに同行し随時アドバイス 
【(ゲスト・堤)・(ゲスト・稲垣)・藤本・〔新〕/現地】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 必要であれば,再度同じ場所もしくは新たな候補地のロケハンを行う。 
(実施回/ Week) (7)11月17日  (内容/ Contents) 各チームがロケハン後の結果を発表(15分) 
集客方法(集客媒体,告知方法,申し込み管理方法) 
第3回チームワーク(ツアーの具体的な作成,スライドの作成,原稿の作成,リハーサルの段取り,集客戦略) 
【藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 発表チームは模擬ツアーの準備と模擬ツアー用のアンケートの準備を行う。各チーム集客の戦略を練り,準備を開始する。 
(実施回/ Week) (8)11月24日  (内容/ Contents) 日本語模擬ツアー Aチーム(30分) 他のチームは全員参加 
質疑応答とフィードバックとアンケート回答(30分) 
第4回チームワーク(30分) 
【(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 発表チームは模擬ツアーの準備と模擬ツアー用のアンケートの準備を行う。 
発表を終えたチームはフィードバックを元にツアーの作り込みを行う。 
(実施回/ Week) (9)12月1日  (内容/ Contents) 日本語模擬ツアー Bチーム(30分) 他のチームは全員参加 
質疑応答とフィードバックとアンケート回答(30分) 
第5回チームワーク(30分) 
【(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 発表チームは模擬ツアーの準備と模擬ツアー用のアンケートの準備を行う。 
発表を終えたチームはフィードバックを元にツアーの作り込みを行う。 
(実施回/ Week) (10)12月8日  (内容/ Contents) 日本語模擬ツアー Cチーム(30分) 他のチームは全員参加 
質疑応答とフィードバックとアンケート回答(30分) 
第6回チームワーク(30分) 
【(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 発表チームは模擬ツアーの準備と模擬ツアー用のアンケートの準備を行う。 
発表を終えたチームはフィードバックを元にツアーの作り込みを行う。本番ツアーの日時を決定し,集客を開始する。 
(実施回/ Week) (11)12月15日  (内容/ Contents) ゲストスピーカー講演 
英語化と集客(伝わりやすい英語のコツ,言語に頼らない伝達の補助ツール,集客方法の分析) 
リハーサルの勧め(効果的なリハーサルの行ない方) 
第7回チームワーク(本番ツアー準備,リハーサルの段取り,アンケートの作成) 
【(ゲストスピーカー・ 料理体験ホスト佐々木沙恵子)・藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 本番ツアー準備,リハーサルの段取り,アンケートの作成 
(実施回/ Week) (12)12月22日  (内容/ Contents) 各チーム本番ツアー(30~60分) 
アンケート集計・反省会(30分) 
【(ゲスト・堤)・(ゲスト・稲垣)・藤本・〔新〕/現地】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 参加者から回収したアンケートを集計・分析を行なうこと。 
(実施回/ Week) (13)1月12日  (内容/ Contents) 各チームがアンケートの分析などを元にオンラインツアーのフィードバックを発表 
第8回チームワーク(成果報告書準備,成果発表会準備) 
【藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 成果報告書準備と提出。成果発表会の準備。 
(実施回/ Week) (14)1月19日  (内容/ Contents) ジャンルの異なるオンラインツアーガイド3名によるパネルディスカッション(60分) 
テーマ:ガイドをはじめた動機とガイドの魅力,ゲストに喜んでもらったエピソード,オンラインツアーの魅力と可能性 
第9回チームワーク(成果報告会準備) 
【(ゲストスピーカー・稲垣)・(ゲストスピーカー・阪田)・(ゲストスピーカー・織田)・(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments) 成果報告会の準備 
(実施回/ Week) (15)1月26日  (内容/ Contents) オンラインツアーの講評と総括(各チームのオンラインツアーについて,オンラインツアーの可能性。今後の観光産業の展望) 
第10回チームワーク(学んだこと,これからやってみたいこと。議論30分+全員の発表30分) 
【(ゲスト・堤)・藤本・〔新〕/今出川】 
(授業時間外の学習/ Assignments)  

ゲストスピーカーは都合により,変更する場合があります。 
5〜7人のチームを3チーム作成して,プロジェクトを遂行してもらいます。チームは第4週に科目担当者が決定・発表をします。 
新型コロナウィルス感染症の影響で訪日外国人がいなくなってしまいました。この状況変化を受けて,作成・実施する体験ツアーを「訪日外国人向けの対面のリアルツアー」から「母国にいる外国人向けのZoomを使ったオンラインツアー」に変更をします。それに伴い,一部授業計画やゲストスピーカが変更となっています(概要・到達目標は変更なし)。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加等)  20%  出席だけでなく,授業への積極的な態度(姿勢・発言,事前準備)も評価対象とします。 
チーム・クラスへの貢献度  25%  チーム・クラスの中の役割を見極め,いかに役割に応じた貢献をしたかを判断します。 
成果物(体験ツアー)  25%  体験ツアーの内容を下記の項目から評価します。 
独自性/課題性/集客/ツアー運行/参加者の満足度/完成度の総合評価 
プロジェクト達成結果の評価  20%  本プロジェクトを通じて,本プロジェクトが掲げている到達目標を達成できたかどうかと,学生自身の変化を評価対象とします。 
最終成果報告会の評価  10%  成果報告会参加者による評価を反映 

<参考文献/Reference Book>

アレックス・カー/清野由美  『観光亡国論』(中央公論新書、2019)今,直面するオーバーツーリズムを始めとする観光公害の理解とその解決論の一つの視座となる参考書。 
 

<備考/Remarks>

 体験ツアーは英語での実施を想定しているので,英語力の向上も期待できるが,英語力は必ずしも必須のスキルではなく,英語力の向上も本講座の本分ではない。英語ガイド役は一番英語ができる者がすればよく,それよりもチームとして目標を共有し,一つの体験ツアーを作成・実施するという,新たな価値を創造する営みこそが大切である。よって,英語力は参加するにあたり一つの目安であり,必要条件ではない。英語に自信がなくとも体験ツアー作成に意欲のある学生の参加は歓迎である。 
 本授業は火曜日の3限目に行われる。2回,学外の現地集合解散の授業があり,その際は開催場所に応じて昼休み時間を移動に費やすこととなる。また,その際の移動費用は原則として授業運営費から支出する。 

 

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