シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


16002349-001 

△東洋史(2)-1 (中国近現代社会にとっての「近代化」とは?)
Oriental History (2)-1 -What is modernization for modern society of China?-
2単位/Unit  秋学期/Fall  京田辺/Kyotanabe  講義/Lecture

  細井 和彦

<概要/Course Content Summary>

 中国の近代は日本とほぼ同時期の19世紀後半から始まる。「近代化」運動は西洋列強(遅れて日本とアメリカが参入)への抵抗の形を見せた。19世紀半ばから西欧列強の圧力(侵略行為)に対抗するための運動(戦争,改革・改良,革命運動)が並行して展開した。西欧列強の侵略に対抗する中国側の動向を,「侵略行為=衝撃VS改革・革命運動=反応」と解釈するパターンが一般的には理解しやすい。だが,この観点は一面的で矛盾点が多く,近代化へ向かう中国社会の潮流を完全には表現できていないと言える。 
 では,どのように解釈すればよいのだろうか。清朝末期の中国社会には,すでに近代化へと向かう状態にあり,列強の侵略はきっかけにすぎなかったと考えられる。中国社会は西欧列強への抵抗行為を,西洋の諸事物(広義の文化)を取捨選択的に受容(中国式の置換作用)して西洋に対抗しようとする行為の連続であると解釈できる(抵抗の一つの「型」として)。つまり「近代化(=西洋化)」政策を採用しながら,中国の富強をはかり近代国家の体裁を整えて,西洋列強に対抗しようとした歴史と見る観点である。もちろん,政策の実施過程では,中国本来の伝統的システム(思想・慣習・習慣)からの激しい抵抗運動(排外運動)もあった。「近代化」政策は紆余曲折をへて採用され続けたのであるし,挫折も経験した。2018年に40周年を迎えた1978年からの改革開放政策は,この延長線上にあると解釈することが可能である。中国社会の「近代化」は現在も継続中だと言える。以上のような「近代化」の観点から中国近現代を見つめ直すのが本講義の主要な内容である。本講義で使用する「近代化」とは,合理化(思考・行動・法律・制度),利便性,効率性,科学的という言葉で表現することも可能である。 
 授業の形式は講義形式が中心となるが,中国という対象をイメージしやすいように,できるだけオリジナル画像を使用して,現在の中国の状況も解説したい。また中国に関連する話題性のある現象(事件),特に現代中国に関する時事問題などについては,解説をしたり,アンケート等で受講生諸君の意見を聞く機会を設けたいと考えている。必要に応じて,現在の中国の動向を意識したトピックス分析も行う。

<到達目標/Goals,Aims>

到達目標は以下の3点である。 
1.「近代中国の歴史は帝国主義諸国による侵略の屈辱の歴史である」という観点はあまりにも一面的であることを理解できるようになること。「近代化」のために各方面で西洋文化の摂取する試みがなされた事実を確認し,それがその後の歴史の展開にも影響があったであろうことを認識できるようになること。 
2.中国近代史を理解するためには,視野を広く持ち,東アジアからアジア,さらに欧米を含めた世界史的視野から見るべきであるということを認識できるようになること。 
3.近代中国で発生した事件は単純に「悪」であるとは決めつけられない。事件の発生には,必ず背景と原因が存在する。つまり,ステレオタイプの理解や解釈ではなく,中国近代を多面的に理解できるようになること。物事の真偽を判断するに際しては,多面的な視点から見た方がより客観的判断が可能であることを,歴史事実を学びながら理解できるようになること。 

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 本講義受講のための重要事項の諸連絡とシラバス補足説明-清朝の構造  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内容全体の流れの理解を復習 
(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「朝貢−冊封」体制とは?−アヘン戦争以前の東アジア国際秩序  (授業時間外の学習/ Assignments) 配布資料による朝貢と現在の貿易関係の相違を復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 条約締結のためなら何でもするか?−英国による対清使節団派遣  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習-配布資料を参照しながら講義した内容理解(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) なぜ,英国は麻薬を売らねばならなかったのか?−英清貿易とアヘン(1)  (授業時間外の学習/ Assignments) 配付資料を参照した復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) なぜ,英国は麻薬を売らねばならなかったのか?−英清貿易とアヘン(2)  (授業時間外の学習/ Assignments) 三角貿易と多角貿易の仕組みを復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 太平天国は農民改革か?アヘン戦争との関係は?−一般的通説への疑問  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習で歴史解釈の方法の理解を深める(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 曾国藩の登場-曾国藩による太平天国の鎮圧の方策  (授業時間外の学習/ Assignments) 配付資料読解による復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「首切り役人」から「近代化の創始者」へ-曾國藩評価の変遷に見る中国式歴史人物評価  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習で歴史解釈の方法の理解を深める(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 清朝の変質?-李鴻章ら漢人官僚による洋務運動の開始  (授業時間外の学習/ Assignments) 明治維新による日本の近代化路線を予習(1時間) 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 洋務運動を推進した幕僚たちの近代化解釈  (授業時間外の学習/ Assignments) 配付資料を利用して言説の特徴を復習(1時間) 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) 近代化される文化要素−教育・医学・情報・交通  (授業時間外の学習/ Assignments) 同時代の日本の社会状況を予習しておく(1時間) 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 義和団運動と光緒新政への流れ-体制改革へ向かう清朝  (授業時間外の学習/ Assignments) 配布プリントで全体の流れを復習 
(1時間) 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) 清朝末期の政治体制改革の動向-伝統保守・改良・革命  (授業時間外の学習/ Assignments) 配布プリントで全体の流れを復習 
(1時間) 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 辛亥革命と中華民国の行方-孫文か,袁世凱か?  (授業時間外の学習/ Assignments) 配布プリントで全体の流れを復習 
(1時間) 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 「全体のまとめ」-日中関係を中心にして  (授業時間外の学習/ Assignments) 全体の復習と自分の意見をまとめておくこと(2時間) 

※受講生諸君の興味と関心に応じて(特に意見・要望等があった場合),一部の「テーマ」を変更する場合もある。 
※授業の形式は講義形式が中心となるが,中国という対象をイメージしやすいように,できるだけ映像を使用したい。また中国に関連する話題性のある現象(事件)については,解説したり受講生諸君の意見を聞く機会を設けたいと考えている。 
※時事問題も必要最小限の範囲で,取り上げるようにする。 

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

講義内容理解点  30%  授業終了前に書いてもらう授業内容に関する感想・意見や質問が授業内容に対して的確であるかどうかを評価の目安にする。時には復習小テストを実施する。 
期末筆記試験  70%  到達目標をどれぐらい達成できているかどうかを判断できる試験問題を出題する。単純に講義内容を記述してもらうのではなく,受講生の意見を求めるような出題形式にする。 

※日頃から積極的に授業参加してくれる学生諸君のために,コメント点の割合を高く設定した。

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
27 18.5 18.5 11.1 7.4 44.4 0.0 1.6

<テキスト/Textbook>

  使用しない。テーマごとにプリントと資料を配布する。 

 

<参考文献/Reference Book>

三谷博等編  『大人のための近現代史 19世紀編』(東京大学出版会、2009)
 

岩波新書  『シリーズ中国近現代史①/②』(岩波書店、2009,10)
 

※他は講義中に適宜,紹介する。

<参照URL/URL>

随時,講義中に紹介する。 
 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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