シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


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△ヨーロッパ地域文化論2 (啓蒙の光と影)
Topics in the European Regions and Cultures 2
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  小野 文生

<概要/Course Content Summary>

 あの戦争と革命の世紀,暴力の世紀を経たはずの私たちは,果たして現在,どれくらい理性的であり得るのだろうか。また,理性にはなおどれくらい信頼を置くことができる/置くべきだろうか。そして,人間は進歩を続けることが可能なのだろうか。何よりも,なぜ「善きもの」をめざす運動が逆説的にも「最悪なもの」を呼び込んでしまうことがあるのだろうか。これらの問いこそ,「啓蒙」が突きつけた,今なおアクチュアルで簡単には解きがたい難問なのではないだろうか。 
 ヨーロッパ近代の文化を深く理解するためには,歴史事象としての「啓蒙/啓蒙主義」についての基本的な理解が不可欠である。またそれだけでなく,「啓蒙」は近代市民社会の基盤としていまなお一定の機能を果たし続けている以上,そうした近代の原理/心性としてはたらく「啓蒙」について理解し考察することは,私たちの暮らしている世界や社会の基層にあるものを相対化しながら,批判的に見直すという課題に結びつくだろう(その意味で,この講義の提起する諸問題は必ずしもヨーロッパに特殊限定的なものではないし,また過去の話でもなく,「あなた」自身のものでもある)。 
 ヨーロッパ近代の歴史は,啓蒙の発展・伝播による「解放」(市民権や法的平等や自由の獲得)の歴史でもあり,また,世界を合理化しながら「改善」していく「進歩」の歴史でもある。しかし,同時にその歴史はまた,「野蛮」で「文明化されていない」対象を見出し,駆逐していく過程でもあり,「進歩」から排除される存在を生み出す面,植民地主義につながる面や,自分たちとは異なる他者の「抑圧」としてはたらく面を持っている。こうした近代市民社会と啓蒙の(必ずしも順接的とは限らない)関係を丁寧に読み解くこと,いわば「啓蒙の光と影」を併せて理解することが,この講義の主題となる。その際,とりあげられる論点は,たとえば宗教と世俗化,進歩史観とユートピア,啓蒙主義とロマン主義の相克,国民国家の形成とナショナリズム,植民地主義とポスト植民地主義,ユダヤ人の「同化と解放」,ホロコースト/ショアー,シオニズム,ヒューマニズム,コスモポリタニズム,人間/市民であること,難民であること,などである。

<到達目標/Goals,Aims>

受講生には,本講義を通じて次のことができるようになることを願っている。 
(1)啓蒙という歴史事象,およびその運動によって生成・展開した多様な現象についての基礎的な知識を身につけ,それらに対する理解を深めること。 
(2)啓蒙の「光と影」の両義性について一定の感性と見解を持ち,そこにはらまれた問題について批判的に思考すること。 
(3)自分たちの生きている現代世界の社会・歴史・文化を原理的に見通すための展望や視座を得ること。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) オリエンテーション:人間性の暗き側面/〈アウシュヴィッツ〉以後の世界  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 啓蒙の世紀と市民社会の成立  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 啓蒙のプロジェクト:その両義性について  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「啓蒙とは何か」という問いをめぐって:カントからフーコーまで  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 反啓蒙とロマン主義:感情/「賢しら」批判/喪失の言説  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) ナショナリズムとコスモポリタニズム:世界共和国をめぐって  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 人権:ヨーロッパの普遍的理念?  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) ヒューマニズムと脱ヒューマニズムの展開:人間であることへの問い  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 友愛・人権・コスモポリタニズムの再審:寛容か,それとも歓待か?  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 市民であること,人間であること:内なる他者としてのユダヤ  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) ユダヤ啓蒙(ハスカラー):メンデルスゾーンからハイネを経て〈共生の神話〉の崩壊まで  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 『賢者ナータン』の夢:解放と同化のはざまで  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) シオニズム概観:歴史と現状  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 「悪の陳腐さ」という問いかけ:思考の可能性  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 総括:「啓蒙の弁証法」という問い  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習・復習(1時間) 

受講生の関心や授業の進度に応じて,場合によっては授業計画を若干変更する可能性があります。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

期末レポート試験・論文  80%  詳細(テーマや評価基準ほか)については授業中に説明しますが,テーマ設定,論理性,問いの深さ,表現力などが評価の対象。 
提出物  20%  毎授業の終わりに,授業で扱ったテーマに関する「考察」を書いて提出してもらいます。その「考察」の一部は,次の授業で紹介し,コメントをすることがあります。「感想」以上のものであることを期待します。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
22 27.3 27.3 18.2 4.5 22.7 0.0 2.3 *

<テキスト/Textbook>

テキストは特に指定しません。必要に応じてプリントや資料を配布します。

<参考文献/Reference Book>

徳永 恂  『ヴェニスからアウシュヴィッツへ-ユダヤ人殉難の地で考える-』講談社学術文庫 (講談社、2004)
 

上山 安敏  『宗教と科学-ユダヤ教とキリスト教の間-』(岩波書店、2005)
 

ホルクハイマー/アドルノ  『啓蒙の弁証法』(岩波書店、2007)
 

アーレント  『新版 エルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告-』新版 (みすず書房、2017)
 

上に挙げた参考文献以外に読んでほしい文献は膨大にあり,そのごく一部を授業で紹介します。たくさん,そして深く読み,自分自身の関心を広げながらテーマに向き合い,問題を考え抜くという思索の作業を期待します。

<備考/Remarks>

担当教員への連絡は,基本的に授業直後の時間帯に行うこと。それ以外の場合はDUETのメッセージ機能やe-classから連絡を試みること。それでも連絡が取れない場合は教員の所属学部事務室にて相談すること。 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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