シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


11922201 

△中国語圏の経済と貿易
Economy and Trade in Chinese-Speaking Regions
2単位/Unit  秋学期/Fall  京田辺/Kyotanabe  講義/Lecture

  呉 青姫

<概要/Course Content Summary>

 この講義では,グローバル化する中国語圏の経済と貿易の動向について,幅広い角度から紹介・解説していく。工業化70年の過程において,中国はGDPが世界第二位の経済大国となり,世界経済に対しても大きなインパクトを持つようになってきた。本講義では最新の情報を取り入れずつ,マクロ・ミクロ経済知識や国際経済知識と融合して中国の国内総生産ないし国民総生産を構成する諸要素の実態及び構造体制を考察し,それらによって得られた経済効果もしくは阻害要因に関して丁寧且つ詳細に説明していく。具体的には,リーマンショック後「新常態」へとギアチェンジをしている中国が,かつてはどのような経済システムを有しており,今後どのようなシステムに換えていくのかについて要素別・時間軸を辿って整理していきながら相互関連性を説明していく。なお,少人数の講義であるので,授業の中では学生からの質問や発言を積極的にとりいれ,双方向のコミュニケーションを通じて理解を深めていくことを心がけたい。

<到達目標/Goals,Aims>

 本講義では中国経済関を要素別・時間軸別に整理していきながら,受講生がそれぞれの要素間の関連性を念頭に入れずつ多角度かつ複眼的に中国経済を認識し,中国経済関連の新聞記事の内容をある程度理解できるようにすることを目標とする。具体的には,中国経済関連の重要なトピックスおよびその相互の関連を,バランスの取れた視点で理解することである。日本経済新聞などの中国経済に関する記事を,その背景まで踏まえて深く理解できるようになることを目指す。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1週  (内容/ Contents) イントロダクション・中国概況: 
 世界における中国の位置づけとして中国の人文・地理・歴史・社会・政治・経済等の学際的角度から中国と他の国との相違点に触れながら中国がどのような国なのかに関して解説する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 普段より中国の社会や経済に関するニュース,新聞や雑誌の記事,テレビのドキュメンタリーなどに積極的に触れておくことが望ましい。 
(実施回/ Week) 第2週  (内容/ Contents) 中国社会主義の展開と経済: 
 新中国が設立後の貧困国から離陸期・高度成長期を経て「新常態」の着陸期を迎えた今日に至るまで,影響力をもった経済現象を時間軸に沿ってまとめることでマクロ経済視点から中国経済を概観し,社会主義経済体制のもとで計画経済」から「市場経済」への大きな転換を経験した中国経済の実態および本講義の全体像を提示する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第3週  (内容/ Contents) 財政制度改革 
 中国現行の財政制度は1980年代の行政構造の変化に伴って形成されているが,中央と地方の縄引き関係によって時に資源配分と所得配分のアンバランスの現象を生じさせた。財政制度の変遷およびその問題点をまとめることで,現状課題となっている地方政府の財源不足の問題を解決するために,今後中央と地方がどのような配分関係を構築していくべきなのかに関して考案する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第4週  (内容/ Contents) 金融制度と資本市場 
 中国は国有銀行の独占体制から1990年代に金融制度の緩和によってインフォーマル金融機関や資本市場が発展された。しかし,資本市場が未成熟であり,IMF8条国として資本取引は認められないなど部分的自由化を実施してきた。2015年に中国は金融制度の新たな節目を迎えているが,一連の資本市場形成のプロセスと整理しながら,世界最大の資本国としての今後のプレゼンスについて考える。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第5週  (内容/ Contents) 対外開放と直接投資 
 WTO加盟後,中国は主に外部資本と外需依存による輸出主導型成長を遂げてきた。しかし,持続的発展のために今世紀の初頭から「走出去」戦略を打ち出しで海外M&Aを積極的に行い,リーマンショック後に外需依存から内需依存に転換せざると得なくなると輸出志向にとって代わって「一帯一路」戦略を打ち出した。局部的自由貿易圏の促進,海外直接投資や人民元外交など中国の対外経済活動の諸相をまとめながらその戦略転換を分析する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第6週  (内容/ Contents) 人民元の国際化 
2015年に人民元はSDRの国際通貨として採択され,国際化の第一歩を踏み切ってはいるが,国際化になるまでには程遠い。経常収支と資本収支における人民元の流通状況及び国際通貨の概念を取り入れながら人民元の管理化された国際化の現状,アジア地域における共通通貨を目指している人民元の役割,期日通貨としてのドルとの違いを比較しながら人民元の国際化諸条件とその実現可能性を探る。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第7週  (内容/ Contents) 小括  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第8週  (内容/ Contents) 国有企業改革 
 元来の国営企業は1980年代の経営請負制の導入によって所有権と経営権を分離することで国有企業となり,1993年には不良債権の処理・利益配分権を巡った国有企業改革を通じて現代企業へと変身した。しかし,社会主義の根幹となる国有企業の改革は一概的に民営化を進めることができず,国有資本・集団資本・非公有資本の株を融合した混合所有経済を実施することで国有企業のウェイトを低下させた。国有企業改革の変遷および進行状況と現状課題を整理する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第9週   (内容/ Contents) 労働市場改革 
中国の労働市場は労働力過剰から労働力不足へと転換したことである。1980年代頃から2010年以前は農村余剰労働力の問題が重要視されてきた。ところが2010年に人口構造の変化によって人口オーナス期に入ると労働力不足の問題が顕在化した。潜在成長率の低下,すなわち廉価労働力による比較優位が維持できなくなったことによる賃金率の上昇は技術革新を促すことで産業構造の変化をもたらす等経済他分野への影響が軽視できない。中国労働市場の変遷およびそれが経済発展における重要性を学ぶ。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第10週  (内容/ Contents) 社会保険制度の形成 
 1950年代から都市部では重工業化発展に寄与した都市部の国営・国有企業と集団企業の従業員とその扶養家族に公的社会保障制度が整備されていた。農村地域では人民公社と社員による共同出資によって合作医療保険が形成された。しかし,財政難およびすべての国民を対象としてない理由で幾度かの改革を行っていたが,都市と農村が分担された多重構造の体制であった。ところが,2009年に行った国民皆保険によって社会化されるようになる。社会保険制度の変遷過程を総括し,ポスト改革期を迎えた現状における課題の解決策に関して考案する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第11週  (内容/ Contents) 変貌する農村経済 
 1984年頃人民公社が解体されるにつれ,五級財政システムが取り入れられることによって郷鎮政府が公的末端行政となり,上級政府の支援無き財政の自主管理を行うにつれて農村と都市は二重に分断された全く異なる経済システムを構築してきた。ところが都市化建設需要によって農業用地を工業用地に転換していく過程の中に始動した「社会主義新農村建設」(2006年)や「都市と農村の一体化」(2014年)政策は零細農業を大量生産に生産方式を変えるなど組織化された農村経済発展を目指した。農村経済の変貌及び時期別特徴をまとめる。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第12週  (内容/ Contents) 技術革新による新興産業の台頭 
長年の外資導入は中国に技術蓄積をもたらしたがゆえに「世界の工場」と呼ばれていたOCM生産段階から今日には「大衆創新・万衆創業」のスローガンの下で供給側に生産性上昇を求めた「イノベーション駆動型発展戦略」による積極的な研究開発活動が行われている。その結果,先端技術を誇る新興産業が続出している。「新常態」経済期において持続的発展をしていくためには技術革新が必要不可欠である観点からそれが各経済分野に与える影響を考案する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第13週  (内容/ Contents) 環境問題と環境産業 
 過去の産業革命が動力革命であったのと同じように,40年間の工業化成長拡大過程はまさしく一次エネルギー消費型の開発だった。かつて中国は環境投資が経済成長を抑制するとし,環境問題への取り組みを怠っていたが,それが雇用を創出に寄与すると見直し,2006年にはグリーニューディール政策を導入した。その後,「グリーンオリンピック」や「低炭素万博」を通じて省エネルギー消費の普及化やエコ消費の進展を目指した環境産業への取り組みが見られた。中国におけるグリーンニューディールの具体例を取り上げながら今後の発展性を考案する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第14週  (内容/ Contents) 新経済政策の台頭 
 経済が離陸し,「新常態」に突入してから中国では持続発展可能な新しい経済政策が続出している。最終講義では特にテーマを決めず,話題になっている或いは萌芽期である各種中国の新しい経済政策の新動向などを取り上げながら,他の経済政策との関連性や影響等を議論する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第15週  (内容/ Contents) 総括  (授業時間外の学習/ Assignments)  

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

小レポート  30%  学んだ内容の理解度をみるために,複数回のレポートの成績により評価する。レポートの内容は授業で触れたものになるので,比較的に簡単なものになる。 
クラスで発表など  20%  後半の授業ではグループ発表による評価をする。同じテーマの人が同じグループになって各自調べてきた内容を報告する形となる。 
期末試験  50%  期末試験の成績によって評価する。試験は論述形式で行う。評価のポイントとして,講義の内容を踏まえているかどうかという点と共に,きちんと論理立てて答案を作成できているかどうかを重視する。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
10 80.0 0.0 0.0 10.0 10.0 0.0 3.3

<参考文献/Reference Book>

梶谷懐・藤井大輔  『現代中国経済論[第2版]』(ミネルヴァ書房、2018年5月)本書は中国経済の現状を多角的に分析し,平易な文章による解説で定評を得た『現代中国経済論』を全面的に改訂したものである。改革開放,冷戦の終結などを経て,中国は世界第二位の国内総生産を誇る経済大国となった。しかし,国内にはいまだ多くの矛盾がある。今回の版では,中国経済の「二重の罠」や,「一路一帯」構想など,最新の動向にも触れながら中国経済の全容を読み解く。 
 

丸川知雄  『現代中国経済』(有斐閣、2013)ダイナミックに発展する「世界の工場」中国の多様な側面を新しい分析やデータを交えて描きながら,世界一となった中国の工業力の源泉である労働,資本,技術の現状と将来を分析し,中国経済成長の持続可能性を論じており,本講義と関係性があるので参考文献としてお勧めします。 
 

 

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