シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


31800003-003 

△理論と方法-3 (歴史・文化・ポストコロニアル)
Theory and Methods-3 -History, Culture and Post-Colonialism-
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  錢 鷗 冨山 一郎 村田 雄二郎 鄭 祐宗

<概要/Course Content Summary>

冨山一郎 
ファノンをめぐる議論はしばしば,精神科医としてファノンの活動にかかわる精神分析学的な用語が多用された『黒い皮膚と白い仮面』(1952年刊行)と,アルジェリアの病院を辞しアルジェリア民族解放戦線に参加していく中で執筆された激しい主張の『地に呪われたる者』(1961年刊行)を,切断してなされてきた。とりわけホミ・K・バーバをはじめとして,ポストコロニアル理論の中でファノンが言及される時,前者の『黒い皮膚・白い仮面』が中心的にとりあげられ,激しい暴力的な対峙関係を前提にする後者は,ポストコロニアル状況を議論する際には敬遠される傾向にある。しかし両者は深く結び付いているのだ。そしてその結節点こそ,言葉と暴力が拮抗する地点に他ならない。臨床あるいは停留の位置においてファノンを読むとは,この結節点を逃さないことでもあるだろう。演習ではこの点に焦点を当てながら議論をしていきたい。 
 
村田雄二郎 
1.東アジアの歴史世界(1)册封体制論…西嶋定生(1919-1998)『古代東アジア世界と日本』(李成市編,岩波現代文庫,2000年)を素材に,戦後日本の歴史学に大きな影響力を与えた東アジア册封体制論の時代的意義とその問題点について考える。 
2.東アジアの歴史世界(3)朝貢貿易論…濱下武志(1943 - )『近代中国の国際的契機――朝貢貿易システムと近代アジア』(東京大学出版会,1990年)が提唱した朝貢貿易システム論やアジア交易圏論に即しつつ,新たな「アジア史」から「世界史」へと接近する理論や方法の可能性を考える。 
3.東アジアの歴史世界(4)互市体制論…岩井茂樹「朝貢と互市」(和田春樹ほか編『岩波講座 東アジア近現代通史 第1巻 東アジア世界の近代 19世紀』岩波書店,2010年)など,朝貢貿易システム論への批判的仮説として提起された互市体制論の要点を紹介し,東アジアの前近代国際関係の特質について考える。 
 
錢鷗 
内藤湖南の「東洋的」近代への期待は,のちの内的発展論の思想的資源となったが,国際ーー外部による管理説に代表される彼の近代中国についての結論は多くの批判を受けてきた。一方,J.K.フェアバンクは,中国の「近代」についてその契機となったアヘン戦争を西洋の衝撃として把握した。そうした「外因論」視点は大きな影響を及ぼしたと同時に,さまざまな角度から疑義を呈された。とりわけ,戦後の中国近代史研究の視点を総括した著作としてP.A.コーエンの『知の帝国主義』などがある。しかしここでは,思想や言説の論理から「近代中国」がいかに構築されてきたのかを問題にすることにとどまらなく,根底としての「文化」や「知」に潜まれる政治イデオロギー,隠喩的世界像とはなにかを透視してみたい。そして,その多岐にわたる中国論が内包するグローバルな今日的問題性について,もう一度真剣に読み直しながら議論していきたい。 
 
鄭祐宗 
制度は人間を規定し,それらの制度は人間と人間との間に力をめぐる線引きをする。制度は人間すべてを一つの制度のもとに置くのではなく,人間を部分と部分とに切り分ける。本授業では現代の東アジアを強く規定するサンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)を主題に,この条約がどのように人間を切り分けているのかを考察し,他方でこの条約をめぐる未決定性や不決定性について考えることで,東アジアのオルタナティブな可能性について議論したい。そのオルタナティブを得るための素材として,入江啓四郎の対日講和条約研究,豊下楢彦の講和条約第三条論,近年の戦後日韓関係研究を批判的に参照する。本授業では学術研究につきまとう「力の論理」についても合わせて考えたい。

<到達目標/Goals,Aims>

歴史・文化・ポストコロニアルに関連する理論と方法を理解し,それらを参照して史料を読み表現できるようになる。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) オリエンテーション  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) フランツ・ファノンを読む1-『黒い皮膚・白い仮面』を中心に  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) フランツ・ファノンを読む2-『黒い皮膚・白い仮面』を中心に  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) フランツ・ファノンを読む3-『地に呪われたる者』を中心に  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 東アジアの歴史世界1-册封体制論  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 東アジアの歴史世界2-朝貢貿易論  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 東アジアの歴史世界3-互市体制論  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 入江啓四郎の対日講和条約研究   (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 豊下楢彦の講和条約第三条論  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 戦後日韓関係研究の現在  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) 内藤湖南の「東洋」と「文化」1  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 内藤湖南の「東洋」と「文化」2  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) P.A.コーエンの『知の帝国主義』  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 発表,議論  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 発表,議論  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業中に指示する 

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  60%   
レポート  40%   

所定の文献を読解し,積極的に議論に参加すること。

<参考文献/Reference Book>

冨山一郎  『始まりの知-ファノンの臨床-』(法政大学出版局、2018年)
 

西嶋定生  『古代東アジア世界と日本』(岩波書店、2000年)
 

増淵龍夫  『歴史家の同時代史的考察について』(岩波書店、1983年)
 

濱下武志  『近代中国の国際的契機-朝貢貿易システムと近代アジア-』(東京大学出版会、1990年)
 

岩井茂樹「朝貢と互市」和田春樹ほか編  『岩波講座 東アジア近現代通史 第1巻 東アジア世界の近代 19世紀』(岩波書店、2010年)
 

内藤湖南  『内藤湖南全集-第5巻-』(筑摩書房、1972年)
 

コーエン.P.A  『知の帝国主義-オリエンタリズムと中国像-』(平凡社、1988年)
 

入江啓四郎  『日本講和条約の研究』(板垣書店、1951)
 

古関彰一・豊下楢彦  『沖縄 憲法なき戦後―講和条約三条と日本の安全保障』(みすず書房、2018)
 

豊下楢彦  『昭和天皇・マッカーサー会見』(岩波現代文庫、2008)
 

池上大祐  『アメリカの太平洋戦略と国際信託統治―米国務省の戦後構想 1942-1947』(法律文化社、2014) 
 
 

吉澤文寿編著  『歴史認識から見た戦後日韓関係―「1965年体制」の歴史学・政治学的考察』(社会評論社、2019年)
 

授業中に随時指示。

 

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