シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


11640013 

△有機化学Ⅱ
Organic Chemistry II
2単位/Unit  秋学期/Fall  京田辺/Kyotanabe  講義/Lecture

  水谷 義

<概要/Course Content Summary>

有機化学ⅠおよびⅡは,大学における「有機化学」の導入部に相当する。そのため,本講義内容を十分に理解できるかどうかが,大学4年間を有意義に過ごせるかどうかを決定する。高等学校で学んだ化学を土台にし,さらに進んで「有機反応論」あるいは「有機反応機構」の立場から大学における有機化学を講義する。なお,本科目は「学習・教育目標B化学分野における専門知識の修得(1)専門基礎」に含まれ,有機化学分野の専門基礎知識を学習することになる。また同時に,「学習・教育目標A理工学において基礎となる知識の修得(3)数学および物理学を含む理工学基礎」を含み,理工学基礎的な内容もあわせて学習する。 
有機化学Ⅰから引き続き,官能基別の化学を講義する。ヒドロキシ官能基を有するアルコール類は,有機化合物群の中でも極めて多岐にわたる反応が可能であり,多くの誘導体に導くことができる。アルコールは極性分子であり,酸としても塩基としても作用できる特徴を持っている。このような分子としての特徴がどのようなアルコールの反応と結びつくかを勉学すると,必ずや有機化学の誘惑に取りつかれるだろう。教科書では次に分子の構造を決定する上でその習得必須である核磁気共鳴分光法(NMR)について,詳しく記述されている。しかし,1年次の学生諸君には,この時点でNMRについて理解することは困難である。そこで,この箇所は簡単な説明にとどめる。次にアルケンおよびアルキンの化学を学ぶ。アルケンの代表的な反応は求電子付加反応である。高等学校でも学ぶこの種の反応を,反応機構の立場から系統的に理解する。また,アルケンは工業的に大事なアルコール,エポキシド,ポリエチレンなどのポリマーを合成するための原料である。これらの工業的に大切な化合物がどのような反応から得られるかを学ぶ。 
具体的な到達目標は以下のようである: 
(1)各官能基別化合物のIUPAC命名法による命名を修得する。 
(2)アルコールの分子の極性,酸,塩基としての作用,水素結合などの基本的特性を理解する。 
(3)アルコールの工業的製法および実験室的製法を学ぶ。 
(4)アルコールが起こす求核置換反応,脱離反応を,ハロアルカンの反応と対比させて学ぶ。 
(5)アルコールから誘導されるエーテルの合成法およびエーテルの反応について修得する。 
(6)アルケンの合成法をハロアルカンやアルコールの脱離反応を復習しながら理解する。 
(7)アルケンが起こす求電子付加反応の機構を理解し,付加の配向性を決める理論を習得する。 
(8)付加反応における触媒の働きを,反応機構の立場から理解する。 
(9)アルキンについての到達目標はアルカンのそれと同様である。 
(10)NMRおよび赤外分光法(IR)についての初歩的な理解とその極めて大きな重要性を認識する。 
 
アルコールの反応を理解するためには,有機化学Ⅰの内容を十分に理解している必要がある。NMRやIR分光法は分子の構造を決定する上で非常に重要であるので,必ず「分子分光学2」を履修して,勉学することが必要である。 
本講義で使用する教科書は,良く勉学する学生にとっては,極めて優れた内容を持っている。しかし,多くの学生にとって,入門書としては少し高等な記述も含まれており,また内容が多すぎるかも知れない。授業では,大学1年次の学生にとっては難し過ぎるため,3年次の「有機反応論Ⅰ」および「有機反応論Ⅱ」の講義にまわす部分をその都度指示するので,注意して受講すること。教科書には理解を助けるための練習問題が数多く置かれている。簡単な解答は教科書の末尾に示されているが,毎時間,前の週で講義された部分の練習問題の解答をレポート形式で提出することを義務付けている。自らがレポート用紙に答えを書き入れることにより,理解度が高まるからである。 
この科目はA(3)およびB(1)に該当する。

<到達目標/Goals,Aims>

アルコールはハロアルカンと類似の反応をするが,反応の条件がやや異なることを学ぶ。その理由が水酸基の脱離のしにくさにあり,水酸基を脱離しやすくするにはどうすればよいかという,化学上の高等手段が理解できるようになる。アルコールからエーテルが誘導され,エーテルは溶媒あるいは有機合成の原料となることを学ぶ。さらに,高等学校の授業にも取り上げられているアルケンの二重結合への付加反応が,実は素晴らしく美しい機構で進むことが理解できる。さらに,燃やすことしか知らなかったアセチレン(エチン)とその誘導体が,アルカンやアルケンとは異なる高い反応性を有しており,現代有機化学のトレンディー物質となっていることを学ぶ。本講義においても,カーリーアローによる反応機構の記述を習得する。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) ヒドロキシ官能基:アルコールの性質,合成1  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents)         〃            2  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents)         〃            3  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) アルコールの反応とエーテルの化学 1  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents)         〃        2  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) アルケンおよびシクロアルケンの性質,合成1  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) アルケンおよびシクロアルケンの性質,合成2  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) アルケンの反応1  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) アルケンの化学2  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) アルケンの化学3  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) アルケンの化学4  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) アルキンの性質,合成 
アルキンの化学1 
(授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) アルキンの化学2  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) アルキンの化学3  (授業時間外の学習/ Assignments) 練習問題についてのレポート作成 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 総復習  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習 

パワーポイントを用いた講義を行う。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

レポート  20%  正解が丁寧に書かれているか。 
期末評価  80%  毎週正しいレポートを提出した場合,期末評価(100点満点)で50点以上の成績を納めた者を合格とする。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
82 24.4 36.6 22.0 9.8 7.3 0.0 2.6

<テキスト/Textbook>

加納 航治  『基本有機化学』第1版  (三共出版、2011) ISBN:9784782705995 

 

<参考文献/Reference Book>

ボルハルト・ショアー  『現代有機化学 上』第8版 (化学同人、2019)ISBN:9784759820294 有機化学の教科書として詳細に記述され,一生使うことができる。購入を強く勧める。 
 

 

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