シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


11610204 

△知的財産権
Intellectual Property Rights
2単位/Unit  秋学期/Fall  京田辺/Kyotanabe  講義/Lecture

  小澤 壯夫

<概要/Course Content Summary>

主に理工学部の学生が,将来,製品製造企業やソフトウエア開発企業等における研究者,技術者等として活躍する際に,最低限知っておくべき知的財産権の基礎知識を学習する。具体的には,知的財産権をビジネスに活用するために,特許権,著作権,意匠権,商標権等の出願,権利化,活用,訴訟対応等についての知識を習得し,技術経営や知的財産戦略を考える上での基盤を提供する。 
 
【受講条件】 受講に必要な知識等は特にない。ただし最終回授業は学内LANから学外WEB閲覧を行うので,当該授業までにネットワーク利用資格認定試験に合格しておくこと。 
 
現役の弁理士である教員が,実務を通じた講義を行っている.

<到達目標/Goals,Aims>

知的財産権に関する基礎知識を習得し,知的財産権の特徴を把握した上で,ビジネスの種々の場面で知的財産を戦略的に活用するための対応を見いだせるようになることを目標とする。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【序論】 「企業における知的財産活動の概要,知財立国~企業経営にとって知的財産とは何か?」 
 企業等における研究開発活動の結果として創作される知的財産,特に発明について,企業経営の中で,どのような知的創造サイクルで活用されるのかを学習する。また知財立国の必要性を理解する。 
(Keyword:知的創造サイクル,知的財産の活用,知財立国) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:企業等における活動と知的財産権との関係,知的創造サイクル,日本の知財政策と現状 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【特許権の成立】 「特許権を取得するためには何が必要か?,特許権の帰属紛争を防止するためには何が必要か?」 
 発明を創作した場合,どういう条件であれば特許権を得られるのかを学習する。また発明の帰属をめぐる発明者と所属企業との紛争についても学習する。 
(Keyword:発明,産業上利用,新規性,進歩性,発明の帰属) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:特許要件,新規性,進歩性 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【特許権の効力範囲と制限】 「特許権の効力とは?,取得した特許権をビジネスに有効活用するポイントは何か?」 
 特許権の効力および特許権の侵害について学習し,特許権の活用として他人へのライセンスについても学習する。また特許権の制限についても学習する。 
(Keyword:独占排他権,権利の侵害,ライセンス,利用発明) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:特許権の効力制限,特に独占排他権 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【様々な特許権】 「特許戦略の選択~化学物質特許,遺伝子特許,微生物特許,ソフトウエア特許,ビジネス方法特許とは?」 
 特許制度の中で特徴ある種々の特許について,その特色,効力,実際の紛争事例等を学習する。また医療行為と特許権の問題にも言及する。 
(Keyword:化学物質特許,生産方法特許,遺伝子特許,微生物特許,ソフトウエア特許,ビジネス方法特許,医療行為と特許権) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:化学物質特許,遺伝子特許の特徴,ソフトウエア特許の特徴 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【特許の審査,審判】 「特許となるまでの審査とは何か?,特許後の審判とは何か?」 
 出願が特許となるまでの,特許庁における「審査」および出願公開公報の見方を学習する。また「審査」に不服な場合は,「審判」という手続きで不服を申し立てることができ,最終的には「裁判」をすることも可能である。これらは第6回講義の理解に必要であるから,しっかりと理解してほしい。 
(Keyword:出願,出願公開,審査,登録,拒絶理由,意見書,補正,拒絶査定不服審判,無効審判,審決取消訴訟) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:審査過程,裁判所との三権分立の考え方 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【特許の紛争】 「企業が特許紛争に巻き込まれたら技術者はいかに対応すべきか?」 
 本講義では特許権侵害に関する裁判制度,その他の紛争解決手段の概要を学習する。特許侵害裁判の勝敗は,企業の技術戦略や経営に大きな影響を及ぼすので,しっかりと学習してほしい。重要な判決について言及する。 
(Keyword:差止請求,損害賠償請求,特許裁判,裁判外の紛争解決) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:特許紛争への対処法 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【中間評価 60分】  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習:中間評価で不明であった事項の復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【著作権の成立】 「著作物とは何か?,著作権の成立要件と効力は?,ソフトウエアは著作権のみで保護できるのか?」 
 著作権と特許とは,知的財産権としては同類であるが,際だった差異点(発生要件,効力の相対性)も有する。これらを学習し,また著作権で保護されるソフトウエアの範囲と,特許権で保護されるソフトウエアの範囲の差異についても学習する。 
(Keyword:著作物,著作者人格権,模倣,依拠,職務著作,相対的独占権,支分権) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:著作権と特許権との相違点 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 【著作権の効力とその制限】 「著作権の効力とは?,制限される場合とは?,インターネット時代の著作権」 
 著作権法の目的は文化の保護にあるから,その目的に合致する範囲では,著作権の効力は制限を受けることとなる。これらを学習し,また放送,演奏等を保護する著作隣接権についても学習する。 
(Keyword:著作権,差止請求,損害賠償請求,フェアユース,著作隣接権,インターネットと著作権) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:著作権の制限事項とその理由 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 【意匠権・商標権】 「たかがデザイン,されどデザイン~特許と対極をなす商標~ビジネスにとって意匠権・商標権とは?」 
 製品性能に差異がさほど生じなくなると次第に製品の美的外観,デザイン性が重視されることとなる。この製品の美的外観を保護するのが意匠権である。また自己の製品を他の製品から識別する役割を果たすネーミングが商標であり,それを保護するのが商標権である。これらの概要を学習する。 
(Keyword:機能美,工業上利用,物品,意匠の類似,ブランド戦略,商標の類似,商標権侵害) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:意匠権,商標権の概要 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) 【不正競争の防止】 「アンフェアな競争をするとどうなるか~企業活動にとって不正競争とは?」 
 有名な商標と紛らわしい表示を用いたり,デッドコピー商品の販売は不正な競争行為であり,これを規制するのが不正競争防止法である。この法律の適用範囲とその効力,限界等を学習する。 
(Keyword:不正競争行為,ノウハウ,営業秘密,産業スパイ,秘密保持命令) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:営業秘密の定義,違反時のペナルティ 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 【知的財産権の主要国での保護】 「米国,EU,中国の特許,商標~グローバルビジネスに欠かせない知財的視点は何か?」 
 経済活動のグローバル化に伴い,海外における知的財産権の保護も考える必要がある。この際に,避けて通れない国家として,アメリカ,EU,中国等があり,これらの特許,商標制度を学習する。 
(Keyword:属地主義,先発明主義,個人発明者の保護,パテントトロール,懲罰的賠償,先使用主義) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:米国,中国の知財制度の問題点 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) 【知的財産権の世界的保護】 「条約による保護~世界特許制度は可能か?」 
 知的財産権制度は早くから多国家間保護が必要であると認識され,このために,パリ条約,PCT条約,WIPO条約,TRIPS協定等の国際条約が存在する。これらについて学習し,知的財産権の世界的保護を考える。 
(Keyword:パリ条約,PCT,WIPO,TRIPS協定,知的財産権制度の南北問題) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:パリ条約3大原則,PCT,TRIPS協定の概要 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 【事業戦略と知的財産マネジメント】 「知的財産を事業戦略に活用するためのポイントは何か?」 
 近年,企業の事業戦略には,知的財産の活用が必要不可欠なものとなってきている。知的財産を巧みに活用し,事業経営を行っている代表的な企業を取り上げて,その重要性を考える。 
(Keyword:三位一体経営,知財ミックス,パテントプール,オープン化,ブラックボックス化) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:知財マネジメントによる事業活動の保護・促進 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 【先行特許文献サーチ】 「自らの研究課題について,国内・海外の先行特許文献を探し出すのか?」(本授業は情報処理実習教室を利用予定で,学内LANから学外WEB閲覧を行うので,本授業までにネットワーク利用資格認定試験に合格しておくこと。) 
 日本国特許庁は無料で検索できる特許電子図書館(IPDL)を提供している。IPDLの特許分類(FI,Fターム,IPC分類)を学び,キーワードに頼ることなく,自らの研究課題の先行特許文献を特許分類で探し出せるようになろう。またIPDL以外に,欧州(EPO),PCT(WIPO),米国(USPTO)の特許サーチの基礎を学ぼう。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習:特許分類検索の特徴と手順,特許公報の読み方 

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(第5回講義以降の出席等)  10%  出席確認を行う。ただし欠席につき,正当理由がある場合でも,1点/1回であるので,救済対象とはしない。 
中間評価 60分  40%  【択一評価】 第7回講義日に於いて,前半に講義をする特許法等について,研究者,技術者が知っておくべき基本知識を,択一形式で出題する。 
期末筆記試験 70分  40%  【択一試験】 後半に講義をする著作権法,意匠法,商標法,不正競争防止法,条約,知財権マネジメント,特許サーチ等について,研究者,技術者が知っておくべき基本知識を,択一形式で出題する。 
               10%  【論文試験】 全講義のなかから重要な事項について問う問題2問を論文試験形式で課す。 
特記事項    成績評価基準は,平常点,中間筆記試験および期末筆記試験の点数合計が60%以上を合格とする。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
102 26.5 25.5 22.5 15.7 9.8 0.0 2.4 *

<テキスト/Textbook>

特許庁  『産業財産権標準テキスト 総合編』最新版を使用  (社団法人発明協会、2007年) 本講義の全般にわたる内容が記載されている。 

 

特許庁  『産業財産権標準テキスト 特許編』最新版を使用  (社団法人発明協会、2007年) 本講義のうち,特許権に関する内容が記載されている。 

 

丸島儀一  『知的財産戦略』最新版を使用  (ダイヤモンド社、2011年) 本講義のうち,事業戦略と知的財産マネジメントに関する内容が記載されている。 

 

授業では別途配付する授業資料を主体として,講義を行う。したがって,上記テキストは参考資料の位置づけで,購入の必要は必ずしもない。

<参考文献/Reference Book>

丸島 儀一  『キヤノン特許部隊』(光文社新書、2002年)強力な知財部隊による特許活用経営の成功を果たしたキヤノンの歴史が記載されている。 
 

 

 

<参照URL/URL>

特許庁 
知的財産権の行政に関する情報サイトである。 
知的財産高等裁判所 
知的財産権の司法に関する情報サイトである。 
パテントサロン 
知的財産権関係のニュースサイトである。 
 

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