シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


61200466 

△アジア法Ⅰ
Asian Law Ⅰ
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  藤本 一郎

<概要/Course Content Summary>

 本講義は,隣国であり,我が国にとって(たびたび政治的な摩擦があるにせよ)なお最大の貿易相手国である中国(主として中華人民共和国)の法制度につき,基本的知識から,幅広い知識を習得することを目的とする。 
 特に本講義では,単なる概念を学習するだけではなく,講師が現実に渉外業務で使っている,“使える中国法”を学習することに力を入れたい(そのためか,過年度は上場会社の法務部の方の聴講もあった)。 
 
 日本法等他国法との相違を意識する場面があるため,関連する日本法等にも若干触れる。日本法に関し高度なことは一切要求しない。もっとも,日本の基本法についての最低限の知識がなければ,若干授業を受けるのに辛い面がある可能性はある(例えば,申込と承諾との間に相違が生じた場合に,中華人民共和国法,日本の民法,米国UCC,CISGでは,それぞれ契約が成立するか否か,といった質問をすることがある)。日本法についての授業ではないこともあり,いちいち日本法の知識に劣る者に対し授業中に予め十分に配慮しながら進めるということはしない。 
 
 また「アジア法」というタイトルであることもあるため,韓国法を除く他のアジア法にも若干触れる。特に講師は,中華人民共和国法のほか,香港法,台湾(中華民国)法及びベトナム法に興味を持っている。 
 
 中国語ができるならより望ましいが,できなくても授業との関係では問題はない。 
 
 どうしても,講義形式の授業となり,双方向的な授業にはなり辛いが,積極的に授業に参加してくれる学生の参加を強く求めたい。所謂司法試験とは何ら関係のない科目ではあるが,実務感覚を特にお伝えしたいと思っている。

講師の写真

<到達目標/Goals,Aims>

 中国(主として中華人民共和国)の法制度について,その考え方と,十分な知識を習得すること。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 中国法入門(1) 
・中国現代史 
・中国憲法と国家制度 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) 中国法入門(2) 
・中華人民共和国の法令の種類と優劣(立法法) 
・中華人民共和国の裁判所(法院)制度 
・中華人民共和国の弁護士(律師)制度 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) 中国契約法(1) 
・中華人民共和国の「契約法」(合同法)の総論について勉強する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 日本の民法における契約の成立・効力・解除等の基本的な要件について予め確認して授業に臨むこと。 
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) 中国契約法(2),用益物権(物権法) 
・中華人民共和国の契約法のうち,不動産賃貸借契約など物権類似の部分と,物権法のうち,用益物権に係る部分について勉強する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 日本の民法における用益物権の基本(対抗要件,物権の独自性等)について予め確認して授業に臨むこと。 
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) 中国民事訴訟法(1) 
・中華人民共和国民事訴訟法につき,管轄,訴訟の提起と訴状の受理,審理,証拠,判決といった一連の流れを追う。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 日本の民事訴訟の流れについて予め確認して授業に臨むこと。 
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) 中国民事訴訟法(2) 
・中華人民共和国民事訴訟法における執行の問題と,仲裁制度について検討し,日中間紛争についてどのように解決すべきかを検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 日本の契約では,訴訟と仲裁のいずれの紛争解決手段を用いるのが普通か,また,いずれかの紛争解決手段を選択した場合に,どのように契約書に表現するかを確認・検討して授業に臨むこと。 
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) 中国不法行為法 
・中華人民共和国の不法行為法(侵権責任法)と,その特別法(主として製品品質法(産品質量法)等)について,勉強する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 日本の不法行為制度,特に損害賠償制度の概要について予め確認できていることが望ましい。 
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) 中国親族・相続法 
・中華人民共和国の家族の問題を考える上で,親族法(婚姻法)・相続法(継承法)を勉強することは,ビジネスとしての重要性は低いものの,欠くことのできない部分である。そこで,これらの法制度についても勉強する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 日本の親族・相続制度の概要について,予め確認して授業に臨むこと。 
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) 中国会社法(1) 
・中華人民共和国の会社法(広義)の基本的な仕組み,特に,会社法(狭義)と外商投資企業の三法(中外合資企業経営法,中外合作企業経営法,外資企業法)の相違に着目しながら勉強する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 我が国の会社法制の概要について予め確認して授業に臨むこと。 
 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) 中国会社法(2) 
・近時の法改正動向について言及する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) 中国の知的財産権 
・中華人民共和国においても,特許法(専利法)・商標法・著作権法・不正競争法(反不正当競争法)等の法令が整備されている。しかしながら,模倣品や権利の抜け駆け登録など,実務上外国企業が中国で知財の保護を受けるのは大変である。中国知財法の基本を学習した上で,そのような被害を受けた際にどのような対応が可能かを勉強する。 
 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 中国契約法(3)・技術ライセンス・中国独禁法(反壟断法) 
・中華人民共和国の発展にとって,技術を外国から導入しやすくすることは長年の課題であったため,技術の契約については,様々な法制度が存在している。 
 特に,中国契約法の典型契約の1つに「技術契約」なる項が存在し,多数の条文が置かれている。 
 また,外国と中国との技術の輸出入については,「技術輸出入管理条例」(技術進出口管理条例)なる行政規則が別途存在し,その中には一種の独占禁止法的な規定も存在し,実務上大きな意味を持っている。これらを概観し,中国とのライセンス契約において留意すべき点を勉強する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 中国労働法 
・中華人民共和国の労働法・労働契約法・労働仲裁法について概説し,中国の労働法制度について勉強する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 香港法 
・近時の香港の動向を意識して「香港基本法」を中心に学習する。 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) 台湾法  (授業時間外の学習/ Assignments)  

予習の内容 
 テーマとなる日本法の知識は確認して参加されたい(例えば,中国契約法がテーマであれば,日本法ならどうだったか,を確認されたい)。 
 なお,授業時に,関連する法令とレジュメを配布する。復習をしっかりして貰いたい。授業後に課題を提出させることもある(授業外学習に関する説明を参照されたい)。 
標準的な予習時間 
 中国法については不要。日本法については,30分/週。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  25%  授業における発言内容等の平常点。 
提出物(レポート)  75%  全部で2回程度(授業中1回程度と,最後の1回)提出して頂くレポート課題を評価する。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A+ A B+ B C+ C F
15 6.7 13.3 20.0 26.7 20.0 0.0 13.3 0.0 2.8

<テキスト/Textbook>

 特に指定しない。

<参考文献/Reference Book>

射手矢好雄ほか  『中国ビジネス法必携 2012』(ジェトロ、2012)少し古くなりましたので,本当に興味がわいたら買ってください。授業に必須ではありません。 
 

田中信行 編  『最新中国ビジネス法の理論と実務』(弘文堂、2011)少し古くなりましたが,本書の後半は,中国ビジネス法について,最新の議論を,有力な中国ビジネス法の実務家が執筆しており,中国ビジネス法を実務で取り扱う者にとっては,欲しい一冊である。もっとも,単に授業に対応するだけであれば,購入の必要はない。 
 

高見澤麿・鈴木賢・宇田川幸則  『現代中国法入門-外国法入門双書-』第8版 (有斐閣、2019)学生向けの中国法の入門書。実務的な要素は余り重視されていないため,本講座の立場からは特に勧めないが,本講座がフォローできないより基本的な部分について,主として学術的な立場から更に学習を深めたいのであれば,あっても良い本である。単に授業に対応するだけであれば,購入の必要は全くない。 
 

射手矢好雄  『中国経済六法』2020年版 (日本国際貿易促進協会、2020)高価な六法であるので,買わなくても良いが,もしも本格的に勉強したいが中文が読めないなら,あるとより良い。単に授業に対応するだけであれば,購入の必要はない。2年に一度改定。間の年は「増補版」が出版される。 
 

 

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