シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


61200365 

△国際租税法
International Tax Law
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  占部 裕典

<概要/Course Content Summary>

 国際課税における二つの場面での課税関係(アウトバウンド・トランザクションに対する課税とインバウンド・トランザクションに対する課税)を,実際の取引や投資活動を設定したうえで,どのような手順で課税関係(国内税,租税条約,外国税法の適用)を考えていくのかを示します。そのうえで,具体的なケ-スを用いて討議を行います。そのうえで,わが国の採用する二重課税の排除方式(直接外国税額控除・みなし税額控除・外国税額損金算入等)や国際租税回避の態様とその規制について説明するとともに,問題点を検討します。 
また,国際租税法にかかる重要判例等の動向にも適宜言及します。講義のなかで,具体的なケースや裁判例を受講生全員で議論することもあります。国際租税事案についての紛争解決能力及び具体的な経済活動を行う際のタックス・プランニングの能力を養うことを最終目的とします。 
なお,この科目の受講にあたってはできる限り「租税法Ⅰ」を受講していることが望ましい(ただし,受講要件ではありません)。

<到達目標/Goals,Aims>

 国際租税事案についての紛争解決能力及び具体的な経済活動を行う際のタックス・プランニングの能力を養うことを最終目的とします。少なくとも法人税法を中心にした具体的な事案において,課税要件事実を認識したうえで適切な課税関係を導くことができるようにします。 
 具体的には,下記のような内容についての能力や知識を習得させることをねらいとしています。  
(1)居住地国及び投資先国における課税のための基礎的な概念(居住者と非居住者,内国法人と外国法人,国内源泉所得,ソース・ルール,恒久的施設など)と課税方式(租税条約との関係を含む),二重課税の排除方法(外国税額控除方式を中心に)。 
(2)税負担を最も軽減するためのタックス・プランニング(国際的企業再編・租税回避手法を含む)の進め方(特に,タックス・プランニングにとって重要である),「国際的な租税回避手法に対する法規制」(日本及び先進国のみに限定)に係るケースを検討することにより,わが国の法規制の内容及び外国の法規制との相違。 
(3)わが国及び外国との関係における国際的税務訴訟における訴訟手続,審理の進め方等。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 国際租税法の必要性と最近の訴訟の実態(国際租税法(の授業)ではどのような内容を取り扱うか,国境を超えた取引の課税関係を律する法律等とは) 
 
国際的な企業活動,投資活動における国際租税法の知識の必要性を説くとともに,国際租税法の全体像(15回の授業の内容)を概観します。所得税・法人税が中心となりますが,消費税法,相続税法における国際的な局面についても言及します。また,最近の国際課税にかかる重要判例等を取り上げて国際租税法への興味をかき立ててもらい,いかなる局面で国際租税摩擦が生ずるかなどを議論します。 
そのうえで,国際課税のための法源,国内税法と租税条約の関係(OECDモデル租税条約の主な内容など,国際租税法で用いる法令や解釈原理などを説明します。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) 居住地課税管轄と源泉課税管轄~全世界所得主義課税と国内源泉所得主義課税 
 
居住者と非居住者の区別~課税所得の範囲,内国法人と外国法人の区別~課税所得の範囲,居住者・内国であることの効果(条約との関係)などを説明します。また,最高裁平成23年2月18日判決,最高裁平成27年7月17日判決等を取り上げます。 
国際取引・投資活動と国際税制との関係(国際課税法の解釈と適用) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) インバウンド・トランザクション~国内源泉所得(種類とソ-ス・ル-ル) 
 
改正前の国内源泉所得とその課税方法について概観します。(1)国内源泉所得とはなにか,(2)ソ-ス・ル-ルとはなにか,(3)帰属主義とはなにか,を法令に則して解説します。最高裁平成16年6月24日判決,東京地裁平成25年9月6日判決等にも言及します。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) インバウンド・トランザクション~総合主義から帰属主義への転換 
 
総合主義から帰属主義に法改正された理由を検討したうえで,帰属主義にともなう法改正の概要を解説します。 
外国法人に対する課税原則について,いわゆる「総合主義」に基づく従来の国内法を,2010年改訂後のOECDモデル租税条約に沿った「帰属主義」に見直しが行われました。この国際課税における大改正の背景,帰属主義への変更に伴う外国法人への国際課税の枠組みを説明します。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) インバウンド・トランザクション~事業からの所得・恒久的施設と課税の範囲 
 
国内源泉所得の範囲,PE帰属所得以外の国内源泉所得,PE帰属所得(恒久的施設の定義を含む),PE帰属所得の計算,外国法人の国際課税原則の見直しと所得税法への影響をみていきます。  
また,恒久的施設のもつ意義及び定義がここでは問題となります。恒久的施設としての代理人・子会社などを取り上げ,恒久的施設の意義を説明します。電子商取引等を取り巻く国際課税問題はここで言及します。  
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) インバウンド・トランザクション~人的役務の提供からの所得 
 
人的役務の提供を受けた場合の課税関係はどのようになるかを検討します。 
的役務の提供事業の対価,国内法の課税関係(自由職業所得,給与を中心に)租税条約の課税関係),自由職業所得条項のある条約締結国の場合,免税芸能法人等に関する届出等を説明します。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) インバウンド・トランザクション~投資性所得(利子・配当・株式譲渡等の金融商品・使用料等) 
 
非居住者又は外国法人に対する使用料(ロイヤルティ)の取扱い,非居住者又は外国法人に対する利子の取扱いを論じます。特に,所得源泉地のルール(使用地主義,債務者主義)について,租税条約において国内法の規定と異なる規定が置かれている場合等の検討を行います。 
非居住者又は外国法人に対する利子の取扱いを論じます。特に,所得源泉地のルール(使用地主義,債務者主義)について,租税条約において国内法の規定と異なる規定が置かれている場合等の検討を行います。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) インバウンド・トランザクション~旧(現行)規定に基づく計算と改正規定に基づく計算 
 
具体的な事例を通じて,国内源泉所得に関する総合事例で法的な論点を検討するとともに,納付税額の算定を行います。国内源泉所得についての所得の金額の算定と租税債務確定方式(総合課税と分離課税)と納税方式(申告納税と源泉徴収)について,これまでの知識を整理します)。また改正前と改正後の規定による課税関係を事例を通して整理していきます。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) アウトバウンド・トランザクション~所得の金額の算定と申告・納税手続等,二重課税の排除方式 
 
内国法人が海外での事業・投資活動により所得を取得した場合,どのようにわが国あるいは外国で課税され,二重課税が発生するかを具体的に論じた後に,わが国の採用する二重課税排除方式(直接外国税額控除。廃止された間接外国税額控除にも言及。みなし税額控除・外国税額損金算入)を論じます。また,事例に基づいて実際の税額計算を行います。  
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) 外国税額控除方法の具体的検討 
 
外国税額控除の要件(対象となる外国税額の定義など),控除限度額の計算のしくみ,控除余裕額・超過額の繰越等を具体的な事案(Amoco Corp. v. Commissioner, 7th Cir.1998,大阪地裁平成13年5月18日判決,大阪高裁平成14年6月14日判決,最高裁平成17年12月19日判決など)を通じて理解するとともに,外国税額控除枠等を利用したタックス・プランニングの可能性について検討を行います。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) (1)外国子会社配当益金不算入制度  
 
外国子会社配当益金不算入制度について概説するとともに,導入の意義,関係法令に及ぼす影響,その効果をみていきます。外国子会社配当益金不算入制度の導入と間接外国税額控除の廃止についても検討を行います。 
 
(2)国際的租税回避の手法とBase Erosion Profit Shifting 
 
租税回避の手法を論じます。国際租税回避の多様な態様を具体的に検討します。OECD租税委員会 BEPS15の行動計画等,わが国のBEPS への対応を説明します。そのうえで,国際的租税回避行為に対して,先進国がどのような対応を採用しているか(世界の動向)を説明します。わが国の最近の国際租税回避事案にかかる判決を素材に課税庁の対応について議論します。条約漁りの手法や問題はここで説明します。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 移転価格税制 
 
価格移転操作,移転価格税制の基本的なしくみ,独立企業間価格の具体的な算定方法,棚卸資産以外の独立企業間価格の具体的な算定方法,事前確認制度,相互協議手続,移転価格税制の執行規定について概説します。そのうえで,あわせて移転価格税制における国際税務争訟の審理手続などを概説します。特に,独立当事者間価格の算定にかかる現在の課題を明らかにしたうえで,具体的な事例を通じてその算定方法についての理解を深めます。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) タックス・ヘイブン税制 
 
企業活動及び投資活動におけるタックス・ヘイブン国の活用方法,タックス・ヘイブン税制のしくみを説明します。現行タックス・ヘイブンの問題と改正動向もあわせて論じます。そのうえで,外国関係会社,特定外国子会社等,タックス・ヘイブン税制の適用対象となる内国法人の範囲,課税対象留保金額の計算,適用除外要件などを具体的な事例を通じてさらに理解を深めます。なお,コーポレート・インバ-ジョン規制もここで説明します。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) (1)過少資本税制 
 
過少資本に対する規制のアプローチ,過少資本税制の導入と租税条約(独立企業原則条項・差別禁止条項等との関係)を検討した上で,わが国の過少資本税制のしくみを説明します。適用対象法人,国外支配株主等,損金不算入要件及び金額,類似法人の総利付負債・資本金等比率,損金不算入額の取扱いについて,具体的な事例を通じて理解を深めます。なお,条約漁り(トリティ・ショッピング)への対応はここで言及します。 
 
(2)国際的な税務訴訟と裁判管轄権 
 
国際税務訴訟における裁判管轄権や準拠法に関する問題,審理手続における国際税務訴訟の固有の問題などを明らかにしながら,その訴訟手続を概説します。わが国とアメリカにおける訴訟手続を修得するために,現実の事件を素材に,訴状・準備書面等を用いながら国際税務訴訟における主張・立証の進め方を検討していきます。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) 国際課税にかかわる最近の重要判例を概観して,第1~14回までのまとめを行う。  (授業時間外の学習/ Assignments) 毎回のレジュメの冒頭に予習の内容を指示している。 

予習の内容 
 予習は,レジュメにおいて指示していますが,毎回の各テーマに該当するレジュメ部分の講読と具体的な事例に対する解答を作成することです。 
標準的な予習時間 
 1時間30分程度/週

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  20%  授業での質疑応答,小レポ-ト(2回程度を予定),欠席状況 
期末試験  80%   

特記事項 
期末試験は,択一問題と論述問題(横断的な事例)によります。

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A+ A B+ B C+ C F
12 8.3 25.0 33.3 25.0 8.3 0.0 0.0 0.0 3.5

<テキスト/Textbook>

 テキストは使用しません。受講生は必要に応じて参考文献を参照のこと。 
 事前にレジュメ(教材)及び判例・関係論文をコピーのうえ配付します。 
 
配付物 
 15回分のレジュメ・資料等を一括配付

<参考文献/Reference Book>

増井良啓・宮崎裕子  『国際租税法』第4版 (東京大学出版会、2019)
 

 

 

赤松晃  『国際課税の実務と理論-グローバル・エコノミーと租税法 -』第4版 (税務研究会出版局、2015)
 

占部裕典  『国際的企業課税法の研究』(信山社、1998)
 

 

 

 

 

 上記の文献は,適宜図書館で利用のうえ,参考にしてください。

 

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