シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


61200364 

△国際環境法
International Environmental Law
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  繁田 泰宏

<概要/Course Content Summary>

 国際環境判例を中心に,環境の保護に関連する国際法の基本的な概念・原則について理解する。

<到達目標/Goals,Aims>

 ・国際環境法の基本原則の意義と限界について理解する。 
 ・国際的な環境紛争を解決するための多様な方法について検討する。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 国際環境法の対象,法源論について検討する。とくに国際環境法における環境の概念,多数国間条約の立法プロセス及びソフトローの機能に重点をおく。  (授業時間外の学習/ Assignments) 予め配布資料を精読し,国際環境法の基本的な枠組みを理解すること。 
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) 国際環境法の歴史的発展の過程を概観し,諸ケースで問題となる主要な環境諸原則の内容について予備的な理解を得る。  (授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) 国際法上の紛争解決の諸方式をふまえて,国際環境条約上の紛争解決方式の特徴について検討する。(以上,3回の予備的検討を経て,以下の事例研究に入る。)  (授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) 国際環境法の実体的原則(1)越境損害防止義務:トレイル熔鉱所事件 (1938年,1941年) 
 争点,仲裁判決内容を検討し,この古典的ケースで問題とされた越境損害防止義務の機能及び限界について考察する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 予め事案ごとに事実,論点を明確にした上で授業に備えること。 
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) 国際環境法の実体的原則(2)衡平利用原則:ガプチコヴォ・ナジマロシュ計画事件(1997年) 
 争点,ICJ判決内容について検討する。特に国際水路の衡平利用原則,環境モニタリング義務,交渉命令判決の意義と限界について考える。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) 国際環境法の手続的原則(1)事前通報・協議義務:ラヌー湖事件(1957年) 
 争点,仲裁判決内容を検討し,国際河川法で発展してきた手続的原則(事前通報・協議義務)及びその後の展開(国連国際法委員会作成の国際水路の非航行的利用の法に関する多数国間条約)を確認する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) 国際環境法の手続的原則(2)環境影響評価義務:ウルグアイ川パルプ工場事件(2010年) 
 争点,ICJ判決内容に基づいて,環境影響評価義務の意義とその国際法的位置づけについて検討する。それと共に,次回のテーマである,手続的原則(本件では事前通報・協議義務)と実体的原則(本件では汚染防止義務)との関係についても考察を加える。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) 国際環境法の実体的原則と手続的原則との関係:サンファン川事件(2015年,2018年) 
 争点,2015年ICJ判決の内容に基づいて,手続的原則としての環境影響評価義務の位置づけを理解するとともに,その手続的原則と実体的原則(本件では越境損害防止義務)との関係を検討する。さらに,2018年ICJ判決の内容に基づいて,環境損害の賠償問題も併せて検討する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) 深海底資源開発に伴う汚染:国際海底機構勧告的意見 
争点,ITLOS意見内容に基づいて,深海底開発企業の保証国の義務及び賠償責任について検討する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) IUU漁業の取締り:西アフリカ地域漁業委員会勧告的意見 
争点,ITLOS意見内容に基づいて,IUU(違法,無報告,無規制)漁業に従事する船舶の旗国の義務について検討する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) 海洋環境の保護・保全:南シナ海事件 
 争点,仲裁判決内容に基づいて,海洋環境保護義務違反の態様とその法的効果について検討する。併せて,九段線,島の地位,歴史的水域の問題も取り上げる。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 核実験と環境保護:核実験事件(1973-1974年) 
 争点,ICJ命令・判決内容を手がかりに,大気圏内核実験を禁止する国際法,民衆訴訟の問題,さらには本件に固有の事情(国家の一方的宣言による請求目的の消滅)についても考える。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 核兵器使用と環境保護:核兵器使用の合法性勧告的意見(1996年) 
 争点,ICJ意見内容に基づいて,核兵器使用と国際環境法,自衛権,国際人道法との関わりについて検討する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 原子力損害に対する国家責任:チェルノブイリ事故(1986年)と福島事故(2011年) 
 争点,国家責任法の適用可能性について検討し,チェルノブイリ事故を契機に作成された原子力事故三条約(原子力事故早期通報条約,原子力事故相互援助条約,原子力安全条約)と,福島事故後に日本が加入した原子力民事責任条約(補完的補償条約:CSC)の内容を確認する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) 日本と国際環境裁判:南極海捕鯨事件(2014年) 
 争点,ICJ判決内容に基づいて,日本によるオーストラリアの留保援用の妥当性や,捕獲頭数算定と致死的手法採用の合理性について検討する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上。 

予習の内容 
 ・予備的検討(第1~3回)においては,事前に指定するテキストの内容を理解する。 
 ・判例(第4回以降)については,受講者の報告をふまえて,予め指示された質問事項について考える。 
 ・配布する判例等のコピーは日本語の教材である。 
標準的な予習時間 
 1時間/週(学部で国際法を履修した者と未修者について,予習時間は異なる)

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  30%  毎回の質疑応答をとおして発言内容,予習の程度を評価する。欠席状況 
期末試験  70%  具体的な仮想事例問題を提示し,実体法と手続法の理解度を判定する。 

上記評価のポイントを参照。

<テキスト/Textbook>

繁田泰宏・佐古田彰 編  『ケースブック国際環境法』 (東信堂、2020) 2020年3月出版予定。 

 

山形英郎 編  『国際法入門――逆から学ぶ――』第2版  (法律文化社、2018)

 

配付物 
 ・第1~3回は,予習すべき著作の該当箇所を事前に指示する。 
 ・第4回以降は,必要最少限の判例及び参考文献のコピーを配付する。

<参考文献/Reference Book>

繁田泰宏  『フクシマとチェルノブイリにおける国家責任』(東信堂、2013)
 

松井芳郎  『国際環境法の基本原則』(東信堂、2010)
 

松井芳郎 編  『国際環境条約・資料集』(東信堂、2014)
 

薬師寺公夫・坂元茂樹・浅田正彦 編  『ベーシック条約集2020年版』(東信堂、2020年)2020年3月出版予定。 
 

浅田正彦 編  『判例国際法』第3版 (東信堂、2019)
 

小寺彰・森川幸一・西村弓 編  『国際法判例百選』第2版 (有斐閣、2011)
 

<備考/Remarks>

 国際法の基礎的な知識があれば受講に十分である。 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
Copyright(C) 2020 Doshisha University All Rights Reserved. 無断転載を禁止します。