シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


61200226-001 

△租税法Ⅰ-1
Tax Law I-1
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  占部 裕典

<概要/Course Content Summary>

 租税法Ⅰでは,多くの租税に共通する法的問題(租税法総論)と所得税法の法的諸問題を中心にとりあげる。授業では,(1)租税法共通の基本原理や総論的問題の検討(「租税法の基礎理論と法的問題」),(2)所得税法をモデルにして租税実体法,租税手続法,租税争訟法のアウトラインの説明(「所得税法の成立から紛争処理までの概説」),(3)所得税法の課税要件,所得分類と各所得毎の法的問題点,損失の繰越控除・損益通算,所得控除等の内容と法的問題点についての検討(「所得税法の課税要件と法的問題」)を行う。授業の中心は(3)である。 
 租税法Ⅰは,租税法についての基礎的知識や応用能力を所得税法を通じて提供・養成するものであり,租税法関連科目を履修するにあたって基本となる科目である。 
 なお,租税法Ⅱでは,法人税法と消費税法を中心とした法的諸問題を,租税法Ⅲでは,地方税法にかかる法的諸問題,さらに国税通則法と国税徴収法を中心に租税手続法・租税争訟法の基本的問題を取り扱う。また,さらに租税法科目として,国際租税法があり,我が国の企業の国際的事業活動等,海外企業の我が国での事業活動等に対する我が国での課税問題を取り扱う。租税法を司法試験科目として選択する学生は,租税法Ⅰ・Ⅱ,租税法総合演習を履修することが望しい。

<到達目標/Goals,Aims>

 本科目は,受講生に下記のような能力や知識を習得させることを目標としている。 
(1)租税法の解釈の特殊性(税法と憲法・私法等の交錯を含む)に対応した租税法規の解釈能力の修得 
(2)所得税法を中心とした課税要件規定の争点についての理解 
(3)税務紛争に応じた税務争訟方法の選択と審理の進め方 
(4)具体的な税務争訟での主張・立証のあり方

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 租税法(国税)の体系と私法との関係 
 
 租税法は無数の法律と命令(施行令・施行規則)からなりたっているため,まず,租税法の体系を説明する(講義)。そのうえで租税法の解釈原理(文理解釈)を私法(民法・商法等)と租税法との関連性に着目しながら検討することとする(討議)。特に,後者については「譲渡担保と課税」「不動産の取得と課税」「交換と売買」「時効と課税」等にかかるケースを素材に討議する。さらに,地方税法の体系と地方税条例との関係も簡単に説明する(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) 租税法律主義と租税平等主義の具体的な適用場面 
 
 憲法上の課税原則である租税法律主義が租税法規の立法及び解釈にあたり,具体的にどのように適用されるかをみていく(講義)。課税要件法定主義・課税要件明確主義・合法性の原則,手続保障の原則にかかわる個別事例(ケース)を取り上げる(討議)。文理解釈の意義,租税法規不遡及の原則と例外,租税法律主義の一場面である合法性の原則の例外(租税法における信義誠実の原則),通達課税による問題などもここで取り扱う(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) 租税回避行為と課税 
 
 租税回避行為がいかなる場合に否認されるかを論ずる(講義)。判例が分かれている領域であるので,学説・判例の動向を詳細に検討する(講義)。特に最近の最高裁判例の検討を行い,さらに課税庁の否認のための手法である「私法上の法律構成による否認」についても検討を加える(討議)。同族会社の行為計算否認規定の適用上の問題もここで取りあげる。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) 所得税法のアウトライン(所得税の成立から納付まで) 
 
 所得税法の法的構成(法的構造)を概観する。そのうえで所得税法の具体的適用,所得税(租税債務)の確定手続(国税通則法を含む),納付(滞納手続にも言及。国税徴収法を含む),税務紛争処理手続といった,一連の流れを説明する(講義)。法人税法との相違についても言及する(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) 企業形態の選択と所得の帰属 
 
 所得税の課税要件を説明するが,ここでは特に納税義務者と所得の帰属を取りあげる。さまざまな私法上の企業形態(団体)と納税義務者との関係を論ずる。人格なき社団や信託(特定信託等を含む)の課税,さらに課税単位の問題もここで取りあげる(講義)。そのうえで,課税物件たる所得がだれ(納税義務者)に帰属するか(帰属のルール)を具体的事例において検討する(討議)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) 所得税制度の基本的仕組みと課税理論(1) 
 
 所得税法の租税実体規定の内容及びその背景にある租税理論を理解したうえで,具体的な事例に基づいて所得税額を算出させる。租税特別措置法に基づく分離課税,特に不動産・株式の申告分離課税及び利子・配当(一部)の一律源泉分離課税の制度的な問題点をもあわせて検討する(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) 所得税制度の基本的仕組みと課税理論(2) 
 第6回の続き。 
所得税法の条文と照らしながら,具体的な計算を行う(講義)。申告書を配付した上で申告書作成を行う。 
 
勤労性所得に対する課税(1) 
 給与所得と退職所得を中心とした所得税法の規定を概観する(講義)。法人税法34条(役員給与)との関連も論ずる(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) 勤労性所得に対する課税(2) 
 
 給与所得と退職所得を中心に,法的問題を論ずる(講義)。給与所得課税(特にフリンジ・ベネフィット課税の問題,ストックオプション課税を含む),退職所得(みなし退職金を含む)課税の問題(10年退職金事件,退職年金との関係,打切り支給の問題等)をケースを通じてみていく(討議)。なお,源泉徴収手続の抱える法的な問題は,給与所得との関係でのみ論ずる(討議)。法人税法34条(役員給与)との関連も論ずる(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) 資産性所得に対する課税 
 
 譲渡所得課税の趣旨,キャピタル・ゲイン課税(財産分与に係る課税関係),譲渡所得の金額の計算に際しての取得費等の範囲などを論ずる(講義)。そのうえで,みなし譲渡所得についての理解を深める(講義)。「資産の譲渡」「取得費」「譲渡に要した費用」にかかる最高裁判例を素材に議論をする(討議)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) 金融資産に対する課税 
 
 利子所得,配当所得(みなし配当を含む)に対する法的問題を論ずる(講義)。投資信託課税,株式譲渡課税の論点もここで取り上げる。配当においては,法人税法における資本等取引との関係についても説明する(講義)。なお,一時所得は,ここで言及する予定である(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) 事業所得に対する課税 
 
 事業所得に対する課税を取り上げる。ここで取り上げる問題の中心は,事業の該当生判断,収益の計上時期と必要経費の範囲である。所得税法における収入の計上時期(所得の年度帰属の問題)については詳細に検討を加える(講義)。権利確定主義及び管理支配基準,その特別の規定による収益の計上基準(現金主義等)を論ずる(討議)。そのうえで,必要経費の範囲を,家事費,家事関連費,損害賠償金,親族に対する給与等の支払(所得税法56条を含む)等を順次取扱い,検討していく(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 事業所得に対する課税(必要経費を中心に) 
 
 第11回の続き。必要経費のうち,売上原価(棚卸資産の評価),減価償却費,繰延資産,準備金・引当金等を概説する。さらに,有姿除却,少額減価償却資産,資本的支出・修繕費,資産損失,貸倒損失等について概観するとともに,重要判例を取り上げる(講義)。必要に応じて法人税法の対応規定との対比を行う(講義)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 不動産所得に対する課税 
 
 不動産所得の問題は事業所得と重複する面が多いが,不動産所得固有の問題を,山林所得も含めて検討する(講義)。なお,雑所得(公的年金等を中心に)はここで言及する。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 資産損失,損失の繰越控除,損益通算,所得控除等 
 
 さまざまな資産にかかる損失の課税上の取扱いを検討する(講義)。最高裁判例等をもとに,事業用資産,業務用資産,生活に必要な資産等にかかる資産損失について議論をする(討議)。所得控除(人的控除)については,順番にその内容と控除の趣旨を説明する。雑損控除,医療費控除を中心にその控除対象について判例をもとに検討をする(討議)。また,具体的な裁判例(裁判資料)を用いて,総合事例の検討を行う(討議)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) まとめ 
 
総合事例を用いて,第1回~第14回のまとめを行う(講義・討議)。 
(授業時間外の学習/ Assignments) 配付したレジュメの冒頭に毎回の予習内容を記載して,指示。 

予習の内容 
 毎回の予習として,テキストと事前に配付されるレジュメの該当箇所を熟読するとともに,レジュメに掲載された「事例問題」についての検討が求められる。 
標準的な予習時間 
 2時間30分程度/週

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  20%  授業での質疑応答,小問に対するレポ-トの内容,欠席状況 
期末試験  80%   

 試験問題は,2題の事例(横断的な事例)による。

<テキスト/Textbook>

金子宏  『租税法』最新版  (弘文堂) ほぼ毎年版が改まるので最新版のものを購入のこと。 

 

中里実 ほか  『租税判例百選』第6版  (有斐閣、2016)

 

「租税法Ⅰ教材」(レジュメ)・資料(重要判例等)をコピーして配付予定。授業はこのレジュメをベースにして進みます。なお,テキストは上記「租税法」以外でもかまいません。テキストについては,第1回の講義で説明しますので,それまで購入の必要はありません。 
 
配付物 
 15回分のレジュメ・資料を事前に一括配付。 
 授業に応じて関係資料も随時配付。

<参考文献/Reference Book>

三木義一・関根稔・山名隆男・占部裕典 編著  『実務家のための税務相談』第2版 (有斐閣、2006) 参考書の詳細についても第1回の講義で説明をします。 
 

 

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