シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


61200125-002 

△刑法演習Ⅱ-2
Criminal Law Seminar II-2
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  演習/Seminar

  松原 久利

<概要/Course Content Summary>

 本演習では,刑法各論の基礎学力を習得した者の応用力を磨き,さらに将来の刑事司法実務に対応できる基礎的な能力の養成をめざす。 
 刑法においては 犯罪成立の一般原則や各犯罪成立要素の有機的な関連について,体系的に認識すると同時に,具体的な犯罪成立要件のあてはめの判断を行わなければ,抽象論や観念論に終始し,実務への架橋となり得ない。そこで,本演習では,刑法各論の重要な論点について,各回のテーマを基本にしつつ,具体的な重要判例や判例を基にして若干修正した事例の中から,論点をあげて犯罪の成立要件を検討するケース・スタディを演習形式で行う。こうしたケース・スタディを通して,刑法各論の論点について実践的な問題解決を行える実力の養成を図る。 
 受講生は,毎回,全員が事前に配付される事例について検討したうえで出席し,質疑応答やディベートを通じて,論理的に問題解決を導くことが求められる。 
 なお,受講生の理解度を確認するため,数回,練習問題の検討を行う予定である。そのために,授業計画を一部変更することがある。

<到達目標/Goals,Aims>

 刑法各論上の重要論点について問題の所在や主な判例・学説の内容を正確に理解した上で,具体的な事例において各犯罪の成立要件を充足するかどうかを事実関係に即して適切に判断する能力を身につけることが,到達目標である。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 生命および身体に対する罪1 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。      
 <殺人罪> 
  (1) 自殺関与罪・同意殺人罪と殺人罪の限界 
    (最判昭和33・11・21) 
 <傷害罪> 
  (1) 傷害の意義(最決平17・3・29) 
  (2) 胎児傷害・致死(最決昭63・2・29) 
  (3) 同時傷害の特例(最決平28・3・24) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 基本書や判例を読む。 
択一問題や事例問題を解く。 
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) 生命および身体に対する罪2 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <遺棄罪> 
  (1) ひき逃げ(最判昭34・7・24) 
自由および私生活の平穏に対する罪1 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <逮捕・監禁罪> 
  (1) 偽計による監禁(最決昭38・4・18) 
 <住居侵入罪> 
  (1) 集合住宅の共用部分への立入り(最判平20・4・11) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) 自由および私生活の平穏に対する罪2 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <業務妨害罪> 
  (1) 公務員の公務に対する業務妨害(最決平14・9・30) 
名誉および信用に対する罪 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <名誉毀損罪> 
  (1) 名誉毀損罪における真実性の錯誤(最大判昭44・6・25) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) 財産に対する罪1-財産罪総論- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <財産罪総論> 
  (1) 窃盗罪の保護法益(最決平1・7・7) 
  (2) 廃棄目的と不法領得の意思(最決平16・11・30) 
  (3) 使用窃盗と不法領得の意思(最判昭和55・10・30) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) 財産に対する罪2-窃盗罪と強盗罪(1)- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <窃盗罪> 
  (1) 占有の意義(最決平16・8・25) 
  (2) 死者の占有(最判昭41・4・8) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) 財産に対する罪2-窃盗罪と強盗罪(2)- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <強盗罪> 
  (1) 暴行後の領得意思(東京高判平20・3・19) 
  (2) 財物奪取後の暴行と2項強盗罪(最決昭61・11・18) 
  (3) 事後強盗(最決平16・12・10) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) 財産に対する罪3-詐欺罪と恐喝罪(1)- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <詐欺罪> 
  (1) 詐欺罪における財産上の損害(最判平13・7・19) 
  (2) 搭乗券の詐取(最決平22・7・29) 
  (3) クレジットカードの不正使用(最決平16・2・9) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) 中間試験  (授業時間外の学習/ Assignments) 試験問題の講評を踏まえて,自己の答案の改善点を認識する。 
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) 財産に対する罪3-詐欺罪と恐喝罪(2)- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <詐欺罪> 
  (1) 誤振込み(最決平15・3・12) 
 <恐喝罪> 
  (1) 権利行使と恐喝罪(最判昭30・10・14) 
財産に対する罪4-横領罪と背任罪(1)- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <横領罪> 
  (1) 不法原因給付物と横領(最判昭36・10・10) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 基本書や判例を読む。 
択一問題や事例問題を解く。 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) 財産に対する罪4-横領罪と背任罪(2)- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <横領罪> 
  (1) 横領罪における不法領得の意思(最決平13・11・5) 
  (2) 横領後の横領(最大判平15・4・23) 
  (3) 親族相盗例(最決平20・2・18) 
 <背任罪> 
  (1) 背任罪における「図利加害目的」(最決平10・11・25) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) 財産に対する罪4-横領罪と背任罪(3)- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <背任罪> 
  (1) 背任罪と横領罪の区別(最判昭34・2・13) 
財産に対する罪5-盗品等の罪- 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <盗品等の罪> 
  (1) 被害者に対する盗品の売却あっせん(最決平14・7・1) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 公衆の平穏および安全に対する罪 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <放火罪> 
  (1) 難燃性建造物に対する放火罪(最決平1・7・7) 
  (2) 公共の危険の意義(最決平15・4・14) 
  (3) 公共の危険の認識(最決昭60・3・28) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 公共の信用に対する罪 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <文書偽造罪> 
  (1) 架空人名義の履歴書作成(最決平11・12・20) 
  (2) 資格の冒用(最決平15・10・6) 
  (3) 虚偽公文書作成罪の間接正犯(最判昭32・10・4) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 公務の執行を妨害する罪 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <公務執行妨害罪> 
  (1) 「職務を執行するに当たり」の意義(最決平1・3・10) 
  (2) 職務行為の適法性(最大判昭42・5・24) 
刑事司法作用に対する罪1 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <犯人蔵匿罪> 
  (1) 身代わり犯人(最決平1・5・1) 
 <証拠隠滅罪> 
  (1) 内容虚偽の供述調書の作成と証拠偽造罪 
    (最決平28・3・31)  
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) 刑事司法作用に対する罪2 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <偽証罪> 
  (1) 虚偽の陳述の意義(大判大3・4・29) 
汚職の罪 
  以下の論点につき,判例を中心に検討を加える。 
 <賄賂の罪> 
  (1) 社交儀礼と賄賂罪(最判昭50・4・24) 
  (2) 一般的職務権限の限界(最大判平7・2・22) 
  (3) 警察官の職務権限と収賄罪(最決平17・3・11) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 同上 

予習の内容 
 重要度の高いケースについては,テキストや体系書の該当部分で基礎を確認した上で,取り上げる判決・決定の原文や調査官解説を読んで内容を理解する。 
 重要度のそれほど高くないケースについては,判例集や判例解説書等でポイントを確認する程度で足りる。 
標準的な予習時間 
 2~3時間/週

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  10%  発言内容,レポート,小テスト,欠席状況などから評価する。 
中間試験  20%  刑法各論の重要論点が複数含まれた事例問題を出題する。 
期末試験  70%  刑法各論の重要論点が複数含まれた事例問題に対する分析能力,解答作成能力を60%,期末におこなう基礎知識確認試験の成績を10%の割合で勘案し,評価をおこなう。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A+ A B+ B C+ C F
15 0.0 0.0 20.0 33.3 13.3 20.0 13.3 0.0 2.4

<テキスト/Textbook>

山口厚・佐伯仁志 編  『刑法判例百選Ⅱ各論』第7版  (有斐閣、2014)

 

配付物 
 基本教材(第1回授業開始前に配付する) 
 各回で取り上げる判決・決定の原文,調査官解説など(各授業日の2週間ほど前に配付する) 

<参考文献/Reference Book>

大塚裕史・十河太朗・塩谷毅・豊田兼彦  『基本刑法Ⅱ各論』第2版 (日本評論社、2018)
 

そのほか,各回で扱う判例に関する批評・解説を適宜使用する

<備考/Remarks>

 本科目は,京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻との単位互換プログラムにより,京都大学において開講される「刑法総合2」を受講することによって,成績評価を受け,単位を取得することができる。詳しくは,別冊子を参照すること。 

 

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