シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10407163 

△開発経済1
Economic Growth and Development 1
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  上田 曜子

<概要/Course Content Summary>

全体の内容 
開発経済学は,途上国の経済を研究する学問であり,その目的は,途上国における貧困問題を解決すること 
にある。 
開発経済学は,経済学の中では,比較的新しい学問体系である。戦後,アジア・アフリカ諸国が植民地支配から独立を遂げ,新しい国づくりに着手した時期に,いかに工業化を進め,経済発展・経済成長を達成すべきかという政策的な問題関心から始まったといえる。その後,開発経済学は,多様化し,現在では様々な角度から研究が進んでいる。 
本講義では,発展途上国の経済発展を理解するために必要な基本的知識について講義する。開発経済学の内容に加えて,受講生の理解を深めるために,アジア諸国を中心に発展途上国の経済発展・開発の事例についても言及する。卒業後,途上国や新興国を対象とした仕事に従事する受講生がいることも踏まえて,役に立つ情報を提供していきたい。また,最新の途上国経済に関連した話題についても解説する。 
 
授業の進め方 
ネット配信で講義を行う。受講生は,オンディマンドで録画された講義を視聴できる。講義の際に講義資料を提示する。講義資料に「本日のポイント」を明示し,受講生がさまざまなテーマについて自らの考えをまとめる手助けとする。Zoom等を用いて質疑応答の機会を設ける。 

<到達目標/Goals,Aims>

受講生は,この講義を通じて,途上国経済に関する理解を深めることができる。途上国に関する知識を得ると,次の2点で受講生にメリットが生じると考えられる。 
第一に,先進国としての日本が途上国に対してなしうること,そして世界経済における日本の役割について考えるきっかけとなるという点である。近代化と経済発展に成功したいわゆる「先進国」と呼ばれる国々は,世界全体でみると少数派である。その一国の国民として,我々が,途上国の発展にどのように貢献できるのかを考えることは重要である。受講生にとって,この講義が今後の日本が進むべき道を考える契機となることを期待する。 
第二に,アジア,ラテンアメリカ,アフリカ諸国の経済発展の事例にも言及するので,現地経済に関する知識を得ることができる。卒業後,海外勤務を希望する学生にとっては,途上国経済について学んでおくと,将来役に立つと思われる。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 1,2  (内容/ Contents) 開発経済学とは?, 開発経済学を学ぶ意義,途上国の定義,「経済開発」「経済発展」の指標,人間開発指数  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 3,4  (内容/ Contents) 途上国を経済発展の軌道に乗せるにはどうしたらよいのだろうか?, これまでの研究で明らかになっていること 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 5,6  (内容/ Contents) 人口成長と天然資源の制約 
出生の経済学 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 7,8  (内容/ Contents) 農業が経済発展において果たす役割 
緑の革命 
日本の農業保護政策は,先進国として正しい政策か 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 9,10  (内容/ Contents) 工業化政策①:輸入代替工業化政策 
なぜ,途上国は国内産業を保護したのか 
ラテンアメリカと輸入代替工業化政策 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 11,12  (内容/ Contents) 工業化政策②:輸入代替工業化政策から輸出指向工業化政策への転換 
アジアNIEsの経済発展はいかに達成されたか 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) 直接投資の受け入れと輸出指向工業化政策 
途上国における工業化政策の実例 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) グローバル化と途上国の経済発展 
中所得国の罠 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 予備  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習 

講義内容に関連したゲスト・スピーカーを招聘する場合がある。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

レポート試験(期末レポート)  80%  学期末に3500字程度(予定)のレポート試験を実施する。 
講義内容の理解度,記述の正確さ,論理性,日本語の文章表現力について評価する。 
 
平常点レポート(2回)  20%  講義内容を400字程度に要約する平常点レポートを2回実施する。 

レポート試験については,上記の評価ポイントに加えて,レポートとしての体裁(主張や結論は明確か,主張の根拠となるデータや参考文献が引用されているか,参考文献が記載されているか)も評価のポイントとなる。

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
763 27.8 34.6 22.7 6.9 8.0 0.0 2.7

<テキスト/Textbook>

特に教科書は指定しない。講義の参考文献は配布資料に明示する。開発経済学の入門書として,参考文献に掲載している大塚啓二郎『なぜ貧しい国はなくならないのか(第2版)』を推奨する。

<参考文献/Reference Book>

Yujiro Hayami and Yoshihisa Godo , Development Economics :  From the Poverty to the Wealth of Nations ,  Third Edition .   (Oxford University Press, 2005) .  ISBN:0-19-927271-6  同書は,理論を紹介しているだけではなく,実際にアジアなどの途上国での豊富な調査経験も踏まえて執筆された名著である。 
 

 

速水佑次郎  『新版 開発経済学-諸国民の貧困と富-』新版 (創文社、2000)ISBN:4-423-89551-X 上記の英語本の日本語訳版。ただし,英語の本よりも古い版である。開発経済学の教科書としては,個人的に最も好きな本である 
 

マイケル・P・トダロ,ステファン・C・スミス  『トダロとスミスの開発経済学』原著第10版 (ピアソン桐原、2010)ISBN:978-4-86401-013-9 海外の大学でも広く使用されている開発経済学の教科書(英語)の翻訳本。原著は,2020年に13版が出版された。 
 

アンガス・ディートン  『大脱出-健康,お金,格差の起源-』(みすず書房、2014)筆者は2015年ノーベル経済学賞の受賞者。貧困からの「大脱出」について論じている。比較的読みやすく,格差問題に関心のある人に読んで欲しい一冊。 
 

大塚啓二郎  『なぜ貧しい国はなくならないのか-正しい開発戦略を考える-』第2版 (日本経済新聞出版社、2020)開発経済学の入門書。筆者のアジアやアフリカでの体験を踏まえたうえで,開発経済学の論点をコンパクトに論じている。途上国問題に関心を持つ人の最初の一冊として推薦する。 
 
 

A.V.バナジー,E.デュフロ  『貧乏人の経済学-もういちど貧困問題を根っこから考える-』(みすず書房、2012)MITの教授他による一般向けの著作。通常の開発経済学の本とは異なり,世界の最貧者に注目し,行動経済 
学の観点から,彼らの行動を分析した上で,世界の貧困問題を解決する方法を模索している。たとえば,日本でも「途上国の子供たちのために現地に学校をつくりましょう」という類のキャンペーンがみられる。しかし貧乏な親は,学校が無料であっても子供を通わせたがらないという。学校を作れば,貧しい子供たちが学校へ通うようになるという発想は,単純すぎるのである。読み物としても面白い。援助の実務に関心がある人にお勧めの一冊。著者の二人は2019年のノーベル経済学賞を受賞した。 
 
 
 
 

戸堂康之  『開発経済学入門』(新世社、2015)途上国の経済成長を分析するための理論モデルのほか,途上国の長期的な成長に不可欠と考えられる技術発展について解説を行っている。途上国が先進国から効率的に技術を吸収するための方策について具体的に述べられている。 
 

ディーン・カーラン, ジェイコブ・アペル  『善意で貧困はなくせるのか?-貧乏人の行動経済学-』(みすず書房、2013)受講生の中には,純粋な「善意」から,途上国問題に関心を持ち,貧しい人たちの力になりたいと考えている学生さんがいることでしょう。私もかつてはそのような学生の一人でした。この本は途上国の問題を解決するには「善意」だけでは不十分で,「善意」を超えて行動するための最善の解決方法について教えてくれます。現在注目を集めている行動経済学の手法を使って社会実験を行い,その結果に基づいて貧困を解決するための具体的な方策を提案しています。「善意」だけでは不十分ということをを教えてくれた本です。 
 
 

その他の参考文献は,講義中に配布する資料に明記する。 
日本語の参考文献としては,大塚(2020)および戸堂(2015)を推薦する。

<参照URL/URL>

The World Bank 
世界銀行による統計データが閲覧できる。講義で提示するデータの多くは,このデータを使用している。 

<備考/Remarks>

ネット配信で講義を行う。受講生は,オンディマンドで録画された講義(MS Teams あるいはZoomを用いて録画)を視聴できる。講義の際に講義資料を提示する。講義資料は,e-class およびDUETにも掲載する。講義やレポートに関する連絡は,e-class および DUETを通じて行うので,各自確認すること。Zoom等を用いて質疑応答の機会を設ける。課題については,レポート試験1回,平常点レポート2回である。 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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