シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10308325 

△憲法訴訟
Constitutional Litigation
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  松本 哲治

<概要/Course Content Summary>

 この講義では,憲法訴訟論の基本的な論点について,判例・学説に即して学習する。 
 最高裁判所大法廷が行う憲法判断は,社会的な注目を惹きつける。 
 違憲判決が注目された最近の例としては,再婚禁止期間や婚外子の相続分についての民法の規定に関するものがある。逆に,合憲判決も,たとえば,NHKの受信料に関する訴訟や夫婦同氏制についてのものが注目された。 
 社会的に意見が分かれる事柄について,裁判所が判断を下し,一定の解決が示されるが,これを巡ってさらに議論が続くという状況は,アメリカ・ヨーロッパを問わず,もはや世界的に普遍的な現象である。憲法裁判所のような特別の裁判所によるか,最高裁判所のような司法裁判所によるか,あるいは条約上の裁判所によるかを問わない。 
 法学部で学んだ者として,これについてどう考えるか,という基本的な理解を身につけることが,必要である。我々は選挙を通じて,政治的な意思決定を集合的に行っているが,それとは異なる裁判所の憲法判断になぜ拘束されなければならないのか。そのような裁判所の憲法判断はどのようにあるべきなのか。 
 このような,少し広い意味での憲法訴訟論は,市民として,また,法学的・政治学的な分析の共通の前提として理解される必要のあるものとなっている。夫婦別姓は,裁判所で決着が付けられるべき問題か否か。そしてそれはなぜか。また,たとえば,このような憲法訴訟論を抜きに,アメリカ政治や哲学の分析を完結するというようなことはありえないといってよいであろう。この講義では以上のような意味での憲法訴訟論についてまずは学習する。 
 狭い意味での,憲法訴訟論は,弁護士が実際に訴訟で,法令や処分などを違憲として争う際に,どのような方法をとるべきか(そして相手方はどう対抗すべきで,裁判官はどう判断すべきか)ということを巡る優れて技術的な議論ではある。その徹底的な学習は法科大学院での課題であるが,この講義では,その基礎的な部分についても学習する。  
 日本国憲法の違憲審査制は,付随的な違憲審査制である。つまり,特別の憲法裁判所ではなく,通常の司法裁判所が,司法権を行使する際に,つまり,具体的な事件争訟を解決する中で,その解決に必要な範囲で,憲法判断を示すことになる。このような司法権そして違憲審査制の理解は,「法の支配」の観念と強く結びついている。この講義では,このことについて,裁判所と司法権,違憲審査制の性格,憲法訴訟論の各論的な論点の順で講ずることによって,その意義を解明する。その中で,最高裁判所の違憲判決と憲法訴訟論上重要な憲法判断を示している判例については,それぞれ丁寧に学習を進め,上に述べた意味での憲法訴訟論の理解を深めることとしたい。 

<到達目標/Goals,Aims>

 憲法訴訟論の基本的な論点について判例・学説を理解できるようになること。とりわけ,司法裁判所による付随的違憲審査制には制度的な限界があるが,その限界こそが,この制度の正統性を支えていることを理解すること。また,違憲判決について,その内容を理解すること。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 裁判所と司法権(1) 裁判所の性格と地位―司法権の観念  (授業時間外の学習/ Assignments) 教科書に事前に目を通しておくこと。 
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) 裁判所と司法権(2) 裁判所の性格と地位―司法権の範囲ないし限界・司法権の帰属  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) 裁判所と司法権(3) 裁判所の構成・裁判所の活動方法  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) 裁判所と司法権(4) 裁判所の権能  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) 裁判所と司法権(5) 司法権の独立  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(1) 憲法訴訟の意義と性格(1) 憲法保障の諸類型と憲法訴訟  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(2) 憲法訴訟の意義と性格(2) 憲法訴訟の基本的枠組みー付随的違憲審査制の属性  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(3) 憲法訴訟の方法と対象(1) 憲法訴訟の当事者適格  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(4) 憲法訴訟の方法と対象(2) 憲法訴訟の対象  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(5) 憲法判断の方法とその効果(1) 憲法判断の回避  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(6) 憲法判断の方法とその効果(2) 合憲限定解釈  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(7) 憲法判断の方法とその効果(3) 違憲審査の方法と法令違憲・適用違憲  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(8) 違憲審査の基準と方法  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(9) 違憲判決の効力  (授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) 憲法訴訟(10) 憲法判例とその変更  (授業時間外の学習/ Assignments)  

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

期末試験(論述式試験)  100%  判例学説についての基本的理解ができており,それについて論理的に論じることができるか。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
81 13.6 21.0 16.0 21.0 28.4 0.0 1.7

<テキスト/Textbook>

毛利透・小泉良幸・淺野博宣・松本哲治  『憲法Ⅰ 総論・統治』第2版  (有斐閣、2017)

 

<参考文献/Reference Book>

戸松秀典・初宿正典  『憲法判例』第8版 (有斐閣、2018)
 

 その他については随時指示する。

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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