シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10307738 

△企業税法
Corporate Tax
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  占部 裕典

<概要/Course Content Summary>

 企業税法では,法人税(法人税法),所得税(所得税法の事業所得),事業税(地方税法)及び消費税(消費税法)を中心とした企業課税の法的諸問題を取り扱う。 
 授業では,(1)法人税法をモデルにして租税実体法,租税手続法,租税訴訟法のアウトラインの説明(「法人税の成立から紛争処理までの概説」),(2)法人税法の課税要件規定の法的問題点の検討(重要判例の検討を含む)受用,(3)地方税のうち,法人住民税,法人事業税(外形標準課税)の概要と課税要件の法的問題点の検討,(4)消費税法の概要と課税要件の法的問題点の検討を行なう。

<到達目標/Goals,Aims>

 本科目は,受講生が下記のような能力や知識を習得することを目的としている。一方的な講義ではなく,質疑応答を中心とした双方向型の授業を行う。 
(1)法人税法と会社法等の関連性についての理解を深め,企業法務において企業税の知識が不可欠であるとの意識を高めること 
(2)法人税法を中心としたタックス・プランニングの能力を高めること 
(3)法人税法を中心とした課税要件規定の解釈上の論点についての理解 
 毎回の予習として,教科書と事前に配付されるレジュメの該当箇所を熟読するとともに,レジュメに掲載された重要判例についての検討が求められる。予習をせずに授業に臨むことはできない。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 法人税の意義,法人税の納税義務者 
 
 
法人税の対象となる「法人」について検討する。普通法人を中心に多様な企業形態に対する課税を,法人税法を中心に説明する。公益法人等や信託に対する法人税はここでとりあつかう。法人税と所得税の二重課税等(あるいは統合)の理論的な問題もここで取りあげる。なお,同族会社にかかる課税問題(留保金課税等も含む)はここで検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) 法人税制度の基本的枠組みと課税理論 
 
 
法人税法の所得と商法・会社法上の当期利益との関係(確定決算主義,法人税法と企業会計原則等の関係)を理解したうえで,法人税法・租税特別措置法における所得の金額の算定構造(いわゆる別段の定め)を概観する。別表4・5を中心とした申告調整との関係もあわせて説明する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) 法人所得の意義 
 
 
法人税法22条の「益金の額」「損金の額」「資本等取引」「公正処理基準(企業会計等との関係)」についての一般的な説明を行なう。法人税法22条2項の無償譲渡等の課税関係についてはここで詳細に検討する。なお,企業会計と税務会計との関係,一般に公正妥当な会計処理基準等についても検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) 法人税法における収益・費用の計上 
 
法人の収益・費用(損失を含む)をどの年度において計上すべきか(計上基準,年度帰属の問題)について,基本的な検討を加える。販売による収益,請負による収益,収益・費用の過年度修正等を中心に議論をする。また,いわゆる権利確定主義の例外といわれるもの(中心はデリィバティブ取引を中心とした時価主義会計)についてもここで議論をする。金融商品課税についてはここで取り扱う。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) (1)資本等取引 
(2)益金の額(益金算入,益金不算入項目) 
 
資本等取引の内容について,概略の説明をした上で,株式(出資等)に関する税務を中心に取り扱うが,ここでは増資,減資,自己株式,現物出資,DESを中心に論ずる。発行法人,当該株主,その他株主の3社の課税関係をみていくが,みなし配当の理解も深める。 
受取配当等の益金不算入,評価益の損金不算入等を取り上げる。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) 損金の額(損金算入,損金不算入項目) 
 
売上原価及び減価償却費(繰延資産の償却費を含む)を中心に検討を加える。 
減価償却費の改正(平成19年度改正)や減価償却資産(少額資産等)や資本的支出・修繕費をめぐる法的な問題について討議を行なう。リ-ス取引はここで扱う予定である。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) 損金の額(損金算入,損金不算入項目) 
 
第6回の続き。繰延資産,圧縮記帳,評価損,資産の陳腐化,有姿除却等にかかる論点を取り上げる。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) 損金の額(役員給与) 
 
「役員給与」(役員報酬・役員賞与・役員退職金)の会計上,税務上の取扱いについて詳細に検討する。会社法におけるCGCにおける多様なインセンティブ役員報酬にかかる議論とあわせて税務上の問題も検討する。なお,定期同額給与や事前確定届出給与,退職金にかかる最近の重要判例も含めて検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) 損金の額,債務,損失の確定と引当金・準備金 
  
寄附金・交際費の範囲,使途秘匿金について検討を加える。そのうえで,損失の確定,貸倒引当金(改正概要)等の計上にかかる問題を取り上げる。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) 法人事業税(外形標準課税)の課税理論と課税計算 
 
法人事業税を概観する。法人住民税や事業所税についても言及する。そのうえで,最近の企業の減資の動きとあわせて税法上の関連問題(優遇措置等)を検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) (1)グル-プ法人税制 
(2)連結所得に対する法人税 
 
平成22年度の法人税に関する改正として導入されたグル-プ法人税制を概観する。 
わが国の連結納税制度の特徴と問題点を検討する。連結法人の意義と範囲,課税物件・課税標準(連結事業年度・連結所得の金額等),寄附金の処理,連結欠損金の繰戻・繰越などの連結納税制度の重要項目を順次説明する。最近の改正動向についても検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 組織再編税制(1)(法人合併,法人分割) 
 
法人の設立・合併・分割及び解散をめぐる所得課税の制度(法人組織税制)及びその背景にある租税理論を新会社法の規定と関連づけながら検討する。特にこれらの制度を用いたタックス・プランニングの重要性及び租税回避行為に対する課税庁の対応についても検討を加える。どちらの制度も平成13年度以後導入されたものであり判例等は少ないが,今後の企業活動(M&A等)にとってもっとも重要な領域の1つである。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 組織再編税制(2)(現物出資,事後設立,株式交換) 
  
出資と資本金等の額,配当と利益積立金額,みなし配当等を論じた後に適格現物出資と適格事後設立を検討する。自己株式の分配・取得もここで言及する。株式交換・株式移転についての一般的課税を論じた後に,適格株式交換・適格株式移転を検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 消費税の課税理論と消費税制度の基本的枠組み 
 
わが国の消費税の構造と特徴を明らかにしたうえで,消費税の税額(税額の計算構造と税額控除)の算定に至る過程を検討する。そのうえで,特に現行消費税制の問題点について討議する。地方消費税,最近の消費税の改正動向についても言及する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) (1)消費税の納税義務者,消費税の課税対象 
 
免税事業者,消費税が課される取引(課税取引)と課されない取引(不課税取引,非課税取引・免税取引)について検討する。課税資産の譲渡等に関する重要判例を取り扱う。 
 
(2)課税標準と税率 
 
消費税の会計処理,消費税額の納付税額についての本則課税原則,仕入税額の計算方法,簡易課税制度(みなし仕入率と事業区分)等を概説する。そのうえで,簡単な消費税の計算事例を解くこととする。 
仕入税額控除の帳簿保存等の重要判例等もここで検討する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書の該当部分の通読と毎回の内容にあわせて事前に指摘する判例を通読しておくこと 

所得税法の基礎的な知識を修得しているものとして,授業は進められる。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加等)  100%  欠席が5回以上の場合には評価の対象とならない。 

毎回,受講生全員に対する質疑を中心に授業は進むので,その応答内容が評価のポイントとなる。

<テキスト/Textbook>

  「租税法教材」(レジュメ)・資料をコピーして配付予定。 
また,各回取り上げるべき判例のリストを配布する。毎回の予習範囲はレジュメに記載。 

 

金子 宏  『租税法』最新版  (弘文堂) ほぼ毎年版が改まるので最新の版を購入のこと 

 

中里実ほか  『租税判例百選』第6版  (有斐閣、2016)

 

<参考文献/Reference Book>

占部裕典  『租税法の文理解釈と限界』(慈学社、2015)
 

 

 

<備考/Remarks>

法学研究科以外の学生が受講する場合には,必ず登録前に担当教官に相談すること。 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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