<概要/Course Content Summary>
このクラスは,4年次演習からの新規登録を認める。 労働法を勉強すれば,法と社会の仕組みがわかる――少しオーバーだが,まんざら誤りでもない。 もともと労働法は,実社会に密着し,人々のダイナミズムにあふれた領域である。そして今日,労働法は,日本型雇用システムの変化を反映して大きく変貌しつつある。雇用における男女平等,終身雇用・年功制の後退に伴う新たな法律問題(成果主義人事,転職の増加,解雇規制のあり方,定年延長等),企業組織の再編に伴う法律問題(出向・転籍,事業譲渡・会社分割,M&A),雇用の多様化に伴う問題(パートタイマー,派遣労働者等),仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をめぐる問題(労働時間規制のあり方,過労死等),知的財産権法との交錯(守秘義務・競業避止義務,職務発明),国際的労働関係をめぐる法律問題(準拠法,国際裁判管轄),労働組合の組織率低下に伴う新たな労働者組織の課題(従業員代表制)などである。 こうした変化に対応して,立法も大きく動いており,会社分割に伴う労働契約承継法の制定(2000年),労働審判法,公益通報者保護法の制定(2004年),雇用機会均等法の抜本改正(2006年)などが実現した。そして,2007年には,労働契約法という基本立法が制定され,パートタイム労働法や最低賃金法が抜本改正された。さらに,2012年,労働契約法の改正による有期労働契約法制の創設,65歳までの雇用確保措置の強化を内容とする高年齢者雇用安定法の改正,派遣労働者の保護の強化を内容とする労働者派遣法の改正が成就し,2014年には,パートタイム労働法のさらなる改正が成就した。2018年には,「働き方改革」の新たな立法政策として,長時間労働の是正(時間外労働の上限規制),年休制度の改善,ホワイトカラー・エグゼンプションを中心とする労基法の改正や,同一労働同一賃金の実現を内容とする労働契約法・パートタイム労働法の改正が予定されている。労働法のこのような重要性が認識され,新司法試験の選択科目においても,選択者が最も多い科目となっている。 21世紀におけるこうした雇用社会の変化を洞察しつつ,発生する問題を「法的に」どのように解決していくか――ここに労働法のおもしろさがある。男女の雇用平等問題一つをとっても,労働法・憲法・民法に基づく法的考察と同時に,社会における男女の関係のあり方(ジェンダー)や,性的分業についての考え方が問われるのである。知的好奇心にあふれた学生諸君の参加を期待する。 本演習は,3年次演習をふまえて,労働法の様々な深み,広がりを味わう場としたい。もちろん,社会や企業で通用するプレゼンテーション能力,コミュニケーション能力,問題解決能力の養成が目的であることに変わりはない。また,企業法務の観点から,労働法コンプライアンスと法的リスク管理(予防法務)の視点を摂取して進めたい。どのテーマを取り上げる場合も,調査(Investigation)→思考(Think)→報告(Presentation)→討論(Debate)という方法が基本となるが,具体的なテーマと方法については,ゼミ生諸君の関心と自主性を尊重して決めたいと考えている。特に,4年次演習の場合は,その年のゼミ生の希望によって内容は様々であるが,ゼミ論文集を公刊するのが恒例となっており,秋学期は,その中間発表に充てることもある。 ゼミのモットーは,「よく学び,よく遊べ」,「意欲+能力+努力,その結果が成果である」。コンパや種々の行事も積極的に行う。
<到達目標/Goals,Aims>
学生は,本演習を受講することにより,調査(Investigation)→思考(Think)→報告(Presentation)→討論(Debate)というプロセスを体験し,社会や企業で通用するプレゼンテーション能力,コミュニケーション能力,問題発見・解決能力を養うことができる。
<授業計画/Schedule>
(実施回/ Week)
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(内容/ Contents)
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
[秋学期]
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(内容/ Contents)
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(授業時間外の学習/ Assignments)
報告メンバーは,報告・レジュメ等の準備。他のメンバーは,内容の予習・復習。以下同じ。
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(実施回/ Week)
第1回
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(内容/ Contents)
オリエンテーション。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
第2回~第15回
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(内容/ Contents)
全員を班分けした上で,報告と討論。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
演習に関連するテキスト・資料・裁判例等を予習・復習すること。
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随時,ゼミ論文集の準備。 授業時間外の学習:演習に関連するテキスト・資料・裁判例等を予習・復習すること。
<成績評価基準/Evaluation Criteria>
出席
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60%
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演習に備えて準備を行い,確実に出席する。
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報告・討論
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40%
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報告は,聞き手に配慮して工夫を凝らし,討論には積極的に参加する。
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<テキスト/Textbook>
土田 道夫・豊川 義明・和田 肇 『ウォッチング労働法』第4版
(有斐閣、2019)
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土田 道夫 『労働法概説』第4版
(弘文堂、2019)
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<参考文献/Reference Book>
<備考/Remarks>
演習は,対面授業形式で行います。ネット配信は併用しません。 詳細は,第1回の授業時に説明します。
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