シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10307676-001 

△政治思想特殊講義-1 (政治と宗教)
Special Topics on Political Thought-1 -Politics and Religion-
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  古賀 敬太

<概要/Course Content Summary>

近代から現代にいたるまでの政治と宗教の関係を政治思想史の観点から講義する。特に信教の自由や政教分離に至る政治史と政治思想をドイツ,フランス,イギリス,アメリカの順に講義する。政教関係においては,政治と宗教が結びつくことによって,宗教の純粋性が脅かされると同時に,国家権力が宗教によって神聖化されるという事態が生じた。政治と宗教の一体性は,国家教会主義という形態をとることもあれば,教会国家主義(theocracy)という形態をとることもある。こうした政教一致体制から政教分離への形成過程は,一方において「寛容」に基づく国家秩序の再構築の試みであると同時に,腐敗した教会を克服し,宗教の純粋性を達成する試みでもあった。したがって,政教分離は,おおざっぱに言って,宗教に敵対的で,宗教を個人の私的領域にとどめようとするフランス的なライシテ(世俗主義)の方向と,宗教に好意的で,政教分離を前提とした上で,宗教の精神や活力を個人の魂の救いの領域のみならず,公的な領域においても生かそうとするアメリカ的な方向が存在する。本講義は,特に後者の立場に依拠して主なう。政治にとって宗教がはたすべき積極的な役割があるとすれば,どのような政治と宗教の関係が望ましいのか。こうした問題意識を持ちつつ授業では,近・現代の政治思想家を中心に政教関係の視点から講義する。その意味において,本授業は,前期の「政治思想の源流」の続編である。 
キーワードは,政教分離,政教一致,市民宗教,神権政治,エラストス主義である。

<到達目標/Goals,Aims>

学生が第一に,西洋と日本における近代から現代にいたるまでの政教一致から政教分離への歴史の変遷とその原因を把握し,第二に,現在の西欧諸国における政治と宗教の多様な形態を理解し,そして第三に宗教の公的な役割の是非について議論できるようにする。同時に,思想家の宗教観にも迫ることにする。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 1  (内容/ Contents) 初めに,ドイツにおける政教関係の展開  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストを読んでおく 
(実施回/ Week) 2  (内容/ Contents) M・ルターの宗教改革ー政治と宗教  (授業時間外の学習/ Assignments) 徳善善和『マルティン・ルター』 
(岩波新書)を読む 
(実施回/ Week) 3  (内容/ Contents) ドイツ啓蒙主義(カントとヘーゲル)における政治と宗教 
 -宗教概念の道徳化と概念化ー 
(授業時間外の学習/ Assignments) カント『実践理性批判』(岩波文庫)を読む 
(実施回/ Week) 4  (内容/ Contents) キルケゴールの国教会批判 
ーキリストとの同時性を生きるー 
(授業時間外の学習/ Assignments) キルケゴール『死に至る病』(岩波文庫)を読む 
(実施回/ Week) 5  (内容/ Contents) K・バルトの『ローマ書』の衝撃と「教会闘争」  (授業時間外の学習/ Assignments) 宮田光雄『カール・バルト』(岩波現代全書)を読む 
(実施回/ Week) 6  (内容/ Contents) フランスにおける政教関係の展開  (授業時間外の学習/ Assignments) ジャン・ポペロ『フランスにおけるライシテの歴史』(白水社) 
(実施回/ Week) 7  (内容/ Contents) ボダンとモンテーニューー「寛容」の思想  (授業時間外の学習/ Assignments) 保苅瑞穂『モンテーニュ』(講談社学芸文庫)を読む 
(実施回/ Week) 8  (内容/ Contents) パスカルの『パンセ』の宗教観  (授業時間外の学習/ Assignments) パスカル『パンセ』(中公文庫)を読む 
(実施回/ Week) 9  (内容/ Contents) フランス啓蒙主義の政治と宗教(1)ーヴォルテールの寛容思想  (授業時間外の学習/ Assignments) ヴォルテール『寛容論』(中公文庫)を読む 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) フランス啓蒙主義の政治と宗教(2)-J・J・ルソーの市民宗教  (授業時間外の学習/ Assignments) ルソー『社会契約論』(岩波文庫)を読む 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) トクヴィルの政治と宗教  (授業時間外の学習/ Assignments) トクヴィル『アメリカのデモクラシー』(第一巻,岩波文庫) 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) ベルグソンの政治と宗教  (授業時間外の学習/ Assignments) ベルグソン『道徳と宗教の二源泉』(岩波文庫) 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) イギリスにおける政教分離  (授業時間外の学習/ Assignments) 大西直樹・千葉眞編『歴史の中の政教分離』(彩流社) 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) ホッブスとロックの政治と宗教  (授業時間外の学習/ Assignments) ロック『寛容についての書簡』(『世界の名著』32ロック,ヒューム,中央公論社) 
 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) ヒュームとバークの政治と宗教  (授業時間外の学習/ Assignments) バーク『フランス革命の省察』(『世界の名著』34バーク,マルサス,中央公論社) 

場合によっては,授業計画を変更する可能性あり。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加,グループ作業の成果等)  20%  出席,授業態度 
小レポート  20%  授業中にレポートの内容を指示 
期末レポート試験・論文  60%  15回の講義の理解度を試験 
特記事項    出席が半分以下の場合は,受験資格なし。 

積極的に授業に取り組み,レポートの課題に取り組むと同時に,政教分離の歴史的流れを理解する。

<テキスト/Textbook>

古賀敬太  『西欧政治思想史と宗教-思想家列伝-』初版  (風行社、2018.3) 受講者は必ず購入し,事前に読んでおくこと。試験の時のテキストの持ち込みは可。 

 

<参考文献/Reference Book>

古賀 敬太  『『近代政治思想における自由の伝統』-ルターからミルまで-』(晃洋書房、2001年)近代における政教分離の理論的・歴史的背景を理解する書物 
 

他に宮田光雄『国家と宗教』(岩波書店),マーク・リラ『神と国家の政治哲学』(NTT出版),古賀編『政治概念の歴史的展開』(第五巻)所収の「政治と宗教」の項を参照。

<備考/Remarks>

政治思想史,並びに政治と宗教に関心を持つ学生の積極的な参加を期待する。 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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