シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


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△企業と労働法
Business and Labor Law
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  土田 道夫

<概要/Course Content Summary>

 労働法は,人が働く上で発生する様々な問題の法的解決を図ることを目的とする法である。 
 労働法はさらに,(1)個々の労働者と使用者との労働契約(雇用関係)を規律する雇用関係法,(2)労働組合と使用者との団体的関係にする労使関係法,(3)公的な雇用保障,職業紹介,能力開発等を内容とする雇用保障法の3領域に分かれる。また,企業人事を律する法である労働法は,企業を運営する上でも重要であり,企業法務の一環を成す法である。 
 
 労働法は今日,日本型雇用システムの変化を反映して大きく変貌しつつある。雇用における男女平等,終身雇用・年功制の後退に伴う新たな法律問題(年俸制・成果主義賃金,退職後の守秘義務・競業避止義務,職務発明,解雇規制の緩和等),企業組織の再編に伴う企業間移動の問題(出向,会社分割等),自立した働き方に伴う問題(裁量労働制,SOHO),雇用形態の多様化に伴う問題(パートタイマー,派遣労働者,ワークシェアリング等),高齢化社会の到来に伴う問題(定年延長・年金問題),国際的労働関係をめぐる法律問題(準拠法,国際裁判管轄),労働組合の組織率低下に伴う新たな労働者組織の課題(従業員代表制)などである。 
 
こうした変化に対応して,立法も大きく動いており,会社分割に伴う労働契約承継法の制定(2000年),労働審判法,公益通報者保護法の制定(2004年),雇用機会均等法の抜本改正(2006年)などが実現した。そして,2007年には,労働契約法という基本立法が制定され,パートタイム労働法や最低賃金法が抜本改正された。さらに,2012年,労働契約法の改正による有期労働契約法制の創設や,派遣労働者の保護の強化を内容とする労働者派遣法の改正が成就し,2014年には,パートタイム労働法のさらなる改正が成就した。2018年には,「働き方改革」の新たな立法政策として,長時間労働の是正(時間外労働の上限規制),年休制度の改善,ホワイトカラー・エグゼンプションを中心とする労基法の改正や,同一労働同一賃金の実現を内容とする労働契約法・パートタイム労働法の改正が行われた。労働法のこのような重要性が認識され,新司法試験の選択科目においても,選択者が最も多い科目となっている。 
 
 本講義は,このような動向をふまえつつ,労働法の3つの領域のうち,(1)の雇用関係法を取り上げる。雇用関係法は,学生諸君にとって最も身近な領域であり(学生アルバイトも労働契約によって働く「労働者」である),ほとんどの人が就職後に遭遇する雇用社会の基本ルールに満ちている。この基本ルール(法)を学ぶこと,そしてそれを通して,雇用社会において法がどのように機能し,いかなる方向に進んでいるかを学ぶことが本講義の目標である。春学期の「雇用関係法Ⅰ」とリンクしているので,ぜひ両方を受講して頂きたい。 
 講義の進め方としては,労働契約法,労働基準法等の法令に加え,判例によって形成された多くの労働契約法理を重視した講義としたい。また,企業法務の観点から,労働法コンプライアンスと法的リスク管理の点を摂取して進めたい。テキストをベースに進めるが,その都度レジュメや判例・資料を配布して一歩進んだ講義にしたいと考えている。なお,テキストである『労働法概説』は2019年に第4版として改訂したが,第3版でも対応できるよう工夫する。 
 
なお,本講義は,法学部の展開科目に位置づけられることから,労働法の基礎知識を習得して履修することが望ましい。 

<到達目標/Goals,Aims>

学生は,本講義を受講することにより,労働法(雇用関係法)の全体像を学ぶとともに,労働法と密接に関連する雇用社会の変化やコンプライアンスの重要性を学び,企業法務の重要な領域である法的リスク管理の手法について学ぶことができる。 
 

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 男女の雇用平等と法(1)--雇用機会均等法  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第11章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 男女の雇用平等と法(1)--雇用機会均等法,セクシュアル・ハラスメント・マタニティ・ハラスメント等  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第11章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 企業秩序と労働法--懲戒処分の規制  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第7章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 内部告発・内部通報と労働法  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第7章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 労働条件の決定・変更と労働法(1)--労働条件の不利益変更(1)  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第9章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 労働条件の決定・変更と労働法(2)--労働条件の不利益変更(2)  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第9章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 企業変動と労働法(1)--事業譲渡・合併  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第9章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 企業変動と労働法(2)--会社分割法制・労働契約承継法  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第9章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 労働災害(1)--労災保険法・安全配慮義務  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第8および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 労働災害(2)--安全配慮義務・取締役の責任  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第8章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) 知的財産と労働法--守秘義務・競業避止義務・職務発明  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第3,10章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 労働契約の終了と法(1)--退職,定年制,解雇  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第10章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) 労働契約の終了と法(2)--解雇法制の現在と将来  (授業時間外の学習/ Assignments) テキスト第10章および配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 「働き方改革」を考える  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストおよび配布資料の予習・復習 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 予備日  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストおよび配布資料の予習・復習 

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

期末筆記試験  80%  講義の内容を理解した上で,設問に対して的確に回答している答案を評価します。 
授業期間中小テスト  20%  講義の内容を理解した上で,設問に対して的確に回答している答案を評価します。 

<テキスト/Textbook>

土田道夫  『労働法概説』第4版  (弘文堂、2019) *『労働法概説』第3版でも差し支えありません。 

 

  適宜資料を配布する。 

 

<参考文献/Reference Book>

土田道夫  『労働契約法』第2版 (有斐閣、2016)
 

荒木尚志・村中孝史  『労働判例百選』第9版 (有斐閣、2016)
 

土田 道夫・豊川 義明・和田肇編  『ウォッチング労働法』第4版 (有斐閣、2019)
 

菅野和夫  『労働法』第12版 (弘文堂、2019)
 

菅野 和夫・土田 道夫・山川 隆一・大内 伸哉  『ケースブック労働法』第8版 (弘文堂、2014)
 

土田道夫・山川隆一・島田陽一・小畑史子  『条文から学ぶ労働法』(有斐閣、2011)
 

土田道夫・山川隆一  『労働法の争点』(有斐閣、2014)
 

土田道夫編  『企業法務と労働法』第1版 (商事法務、2019)
 

その他の参考文献については,開講時に紹介する。

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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