<概要/Course Content Summary>
民法第二編「物権」のうち,175条~294条,具体的には,物権総論(第1章),占有権(第2章),所有権(第3章),用益物権(第4~6章)を扱います。 民法の世界では,「物権」と「債権」という2つの権利概念によって,私たちのあらゆる生活関係が規律されています。このうち「債権」は,特定の人に対して特定の給付(ex. 購入した物の引渡しや,売却代金の支払い)をするように求めることができる権利のことですから,二当事者間での財貨の移動を規律する秩序です(財貨移転秩序と呼んだりします)。これに対して「物権」は,契約などに基づく債権債務関係に立たない人どうしで,「私Aの所有物だから返してくれ」,「いや,自分Bこそが所有者だから返さない」といった争いが生じる場合に,係争物(財貨)が誰にどのように帰属しているのかを規律するルールです(財貨帰属秩序と呼んだりします)。 物権法は,所有権(物権の王様)を頂点に,物に対する支配権の体系として形作られています。物に対する支配権を保障することは,個人主義・自由主義の社会ではとても重要です(所有権絶対の原則)。例えば,土地や建物,様々な生活用品や道具・機械などは,生活や経済活動を営む上で欠かせない基盤ですが,それらに対する支配権が保障されていなければ,自由に生きていくことなどできないからです(近代市民革命以前の,領主様の気分次第で土地を取り上げられても文句が言えなかった時代を想像してみてください)。したがって物権法は,民法の世界(市民社会)において最重要の法制度の一つです。 なお,例えば所有権の帰属をめぐって争いが生じる場合には,「どういう原因に基づいて」所有権が主張されているのかによって議論が左右されることがあります。例えば,「法律行為の取消しの効果として」所有権の帰属が主張される場合,「契約の解除の効果として」所有権の取得が主張される場合,「相続や遺言による」所有権取得が主張される場合など,いろいろな場合があり得ます。これらの議論をスムーズに理解するには,それぞれの制度(取消し,解除,相続・遺言など)の基本を各自でフォローすることも必要になりますので,注意してください。もっとも,民法概論で解説されたレベルのことが理解できていれば十分です。 講義は,配布資料に沿って進めますが,教員からの情報提供を受けてそれを覚えればよいというものではありません。受講者には,講義で得た情報を自ら整理し理解する(そうすることで,その知識を使えるものにする)ことが求められます。学期末の試験も,講義内容を覚えているかではなく,きちんと理解できているか・得た知識を使えているかを問うような内容にする予定です。 <2020年度特記事項> ・この講義は,オンデマンド配信方式です。
<到達目標/Goals,Aims>
学生が,物権法の全体像を把握し,その規律内容,特色,民法の体系において果たす役割を正確に理解して,日常の事象を「物権的視点」から見ることができるようになること。
<授業計画/Schedule>
(実施回/ Week)
|
(内容/ Contents)
|
|
(実施回/ Week)
1
|
(内容/ Contents)
物権法の世界
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
2
|
(内容/ Contents)
所有権の意義・用益物権概説
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
3
|
(内容/ Contents)
所有権に基づく物権的請求権
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
4
|
(内容/ Contents)
物権変動総論(意思主義,公示の原則,対抗要件主義)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
5
|
(内容/ Contents)
不動産物権変動の対抗(不動産登記法概説)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
6
|
(内容/ Contents)
不動産物権変動の対抗(登記が必要な物権変動の範囲)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
7
|
(内容/ Contents)
不動産物権変動の対抗(取消し・解除と登記)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
8
|
(内容/ Contents)
不動産物権変動の対抗(取得時効・相続と登記)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
9
|
(内容/ Contents)
不動産物権変動の対抗(177条が適用される物権変動の範囲)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
10
|
(内容/ Contents)
不動産物権変動の対抗(177条にいう「第三者」の範囲)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
11
|
(内容/ Contents)
動産物権変動の対抗(178条)と即時取得(192条)
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
12
|
(内容/ Contents)
共同所有
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
13
|
(内容/ Contents)
物権法の重要判例を読む
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
14
|
(内容/ Contents)
占有の効力
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
(実施回/ Week)
15
|
(内容/ Contents)
授業内評価
|
(授業時間外の学習/ Assignments)
|
各回とも,事前に周知される予習をすることが重要です。一度自分の頭で考えてみたことと,講義で解説された内容がどのように違うかについて発見を繰り返していくことが,効率的に学習をすすめるコツです。 講義進行上の都合により,上記授業計画は変更される可能性があります。
<成績評価基準/Evaluation Criteria>
最終試験(授業内評価)
|
100%
|
扱われた規律の意義・趣旨および解釈論の理解度と,それらを具体的な事例に適用して解決を導く基本的な思考手順が身についているかどうかを評価する
|
<参考文献/Reference Book>
上記は,購入を強制するものではありません。各書の特徴を初回講義で紹介します。それも聞いた上で購入等検討すれば十分です。
|