シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10305821-004 

△特殊講義B-4 (明治のアメリカ移民)
Special Topics B-4 -Emigrants to America in Meiji Japan-
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  岡林 伸夫

<概要/Course Content Summary>

 近代の日本人にとって「外国」とはいったいどういう意味を持っていたのだろうか。たとえば明治時代を通じて人々をとらえていた価値観の一つは,「立身出世」とか「成功」などという言葉で表現された社会的上昇志向であった。そのもっとも突出した部分が「アメリカで一旗あげる」という行動であるといってよいだろう。日本人にとってまずそこは,明治のエリートたちが「洋行」するイギリス・フランス・ドイツとはちがって,金もなく学ぶ機会もない「貧書生」たちが晴れて「洋学紳士君」になれることを夢見た地であった。さらにそこは,日本の社会のなかで金持ちになったり高い社会的地位を得ることを閉ざされた庶民が,「一攫千金」や「成功」を夢見て出稼ぎや移民に奔走した地でもあった。そして明治末期にその夢が消え去ろうとしたとき,日米双方が未来の日米戦争を妄想しはじめる……。 
 本講ではこういったアメリカ移民を中心としながら,またそのような移民を奨励する活動の主翼を担った社会主義者たちの意識や行動を並行させながら,明治社会が「外国」に対して持った価値観の一側面をたどってみることにする。そして受講者諸氏にはこれらを,現在の私たち自身や周囲にも厳然として存在しつづけている「人はなぜ国境を超えて動こうとするか」という問題(留学・外国人労働者・密航・民族差別問題など)と重ね合わせながら受講していただけたらよいだろう。

<到達目標/Goals,Aims>

 現在の日本はすでに「移民社会」化に直面している。つまり過去においては「移民する」側であった日本が今や「移民される」側になっているのだ。その時にあって学生諸氏が過去の個々人の移民の事例を学ぶことをとおして,「移民」の社会構造や心理を考えていただければよいだろう。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) イントロダクション―明治青年の実情,参考文献  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:なし 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 近代日本のアメリカ移民史概要  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:『写真絵画集成日本人移民1 ハワイ・北米大陸』日本図書センター 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 幕末から明治へ―移民の発端  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:横田順彌『明治不可思議堂』ちくま文庫 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) ハワイ官約移民の開始  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:猿谷要『ハワイ王朝最後の女王』文春新書 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) アメリカにおける東アジア系移民―中国人移民の場合  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:ロバート・G・リー『オリエンタルズ』岩波書店 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 日本人アメリカ移民の開始  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:出原政雄編『歴史・思想からみた現代政治』法律文化社:岡林伸夫「人口問題と移民論――明治日本の不安と欲望」(『同志社法学』361号) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 片山潜の「留学」  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:片山潜『自伝』改造社,岩波書店(再刊) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 帰国後の片山潜―『渡米案内』から「渡米協会」へ  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:岡林伸夫『ある明治社会主義者の肖像―山根吾一覚書』不二出版 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 山根吾一の登場―渡米と帰国後  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:同上 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 山根吾一と「渡米協会」および『渡米雑誌』  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:同上 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) 『渡米雑誌』の内容―渡米者の姿  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:山根吾一編『最近渡米案内』,復刻『近代欧米渡航案内記集成 第4巻』ゆまに書房:岡林伸夫「ボストンの蔵原惟郭」(『同志社談叢』29号 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 渡米奨励論と渡米批判論  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:岡林伸夫『ある明治社会主義者の肖像―山根吾一覚書』不二出版 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) アメリカにおける日本人移民排斥問題  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:同上 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 日米未来戦記の登場―「夢」の終焉  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:横田順彌『明治「空想小説」コレクション』PHP研究所:岡林伸夫「人口問題と移民論――明治日本の不安と欲望」(『同志社法学』361号) 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) その後―「在米日本人」から「日系アメリカ人」へ  (授業時間外の学習/ Assignments) 予復習のための参考文献:大岡信『北米万葉集』集英社新書 

以上は講義の順序を示すものであって,必ずしも一回の授業時間で区切るとはかぎらない。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

小テスト  30%   講義内容の理解度を問うために予告なく2回程度行なう。 
期末レポート試験・論文  70%   この講義から受講者自身がいかに自分の関心と問題意識を組み立て,どのような事例を取り上げて考察するかを評価の最大のポイントとする。 

<テキスト/Textbook>

特定のテキストは使用しない。

<参考文献/Reference Book>

岡林 伸夫  『ある明治社会主義の肖像-山根吾一覚書-』(不二出版、2000年)
 

出原 政雄編  『歴史・思想からみた現代政治』(法律文化社、2008年)
 

岡林 伸夫  『人口問題と移民論-明治日本の不安と欲望-』(同志社法学会、2013年3月)同志社法学第361号 一般に市販されているものではないが,同志社大学図書館の検索システム(DOORS)から無料でPDFファイルをダウンロードできるので,それを入手してプリントアウトしてください。 
 

以上の3冊をとりあえずあげておく。その他の参考文献については上記「授業時間外の学習」の欄を参照,および授業当初にリストを配布。

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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