シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10305811-017 

△特殊講義A-17 (アメリカ史概説2)
Special Topics A-17 -A History of The United States in a Nutshell 2-
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  阿川 尚之

<概要/Course Content Summary>

本科目「特殊講義(アメリカ史概説)」では,建国から今日までのアメリカ合衆国の歴史を概観する。これまで担当教員はこの国の歴史を,アメリカ合衆国憲法(以下「合衆国憲法」)を通じて学生諸君と一緒に分析し考えてきた。今年度は合衆国憲法だけでなく,より多くの視点から,可能な限りわかりやすく,面白く,トピックを絞って概観する。 
 
アメリカ合衆国は近年衰退しつつある,アメリカの世紀は終わったとしばしば言われるが,この国が依然として軍事,外交,経済,通商,金融,科学技術などの分野で世界第一の大国であり,良くも悪くもその動向が世界全体に影響を及ぼす事実に変わりはない。特に日本にとっては唯一の同盟国であり,太平洋戦争後に受けた影響の大きさ,関係の深さ,相互依存度の高さは他国を抜いて圧倒的である。今日でも,新聞やテレビでアメリカについての報道がない日はない。創立者新島襄の留学を契機にアメリカの影響を強く受けた同志社大学でも学生諸君のアメリカへの関心は高く,留学を希望する学生が多いとの印象を受ける。合衆国憲法を扱う担当教員のこれまでの授業を,憲法を超えたアメリカへの関心ゆえに履修した人も多かった。卒業後に何らかの形でアメリカに住み働く,アメリカ企業や個人と仕事をすることを希望する人も多いだろう。 
 
しかし一方で,大統領選挙,議会選挙の結果,大統領の政策や決定,アメリカ国内の景気動向,アメリカと中国,北朝鮮,ロシア,イラン,西ヨーロッパの同盟諸国などとの関係の推移などについての情報が日々溢れているにも関わらず,アメリカの歴史,その政治システム,司法の役割,首都ワシントンやニューヨークなどいくつかの主要都市以外のアメリカについての総合的な知識と理解は,一般に限られていると言う印象がある。世界史など高等学校の授業でも,アメリカに割かれる時間は少ないようだ。アメリカとの関係が我が国にとって今後ますます重要であることを考えると,若い人たちがアメリカへの関心を高め,アメリカの歴史について多角的な理解を得ることは,重要である。今年度が同志社大学で教える最後の年になる担当教員は,そう考えて,本科目を新しく担当することにした。 
 
以上の観点に立って,本年度春学期の本科目「特殊講義(アメリカ史概説1)」では,主として建国から20世紀初頭までのアメリカ史を,秋学期の本科目「特殊講義(アメリカ史概説2)」では,主として第1次世界大戦へのアメリカ参戦から今日までのアメリカ史を扱う。これら2つの科目はワンセットなので,春と秋で続けて履修することが望ましいが,どちらかだけ履修しても十分理解できるように授業を行う。歴史を扱う以上ある程度年代順に授業を進めるが,担当教員の専門領域である憲法だけでなく,分野,主題,人物ごとにまとめて取り扱うなど,多角的な視点からアメリカの歴史を学生諸君に伝えたいと考えている。 
 
授業は原則として講義形式で行う。ただし可能なかぎり,履修者との問答形式で双方向の授業を行い,担当教員だけが発言する一方的な講義にはしないつもりである。強制ではないが履修者に質問を投げかけるので,その場でできる限り考えて答えてほしい。履修者諸君の積極的な授業参加を期待する。その他詳細は,初回授業で説明する。 

<到達目標/Goals,Aims>

アメリカ史についての講義を受けることによって,現代のアメリカ合衆国の政治,社会,経済,安全保障,憲法,法律,思想,文化などについての理解を深めることができる。アメリカについて新しい視点が得られる。 

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) イントロダクション:本科目の概要,授業の進め方,授業計画。履修者諸君にとって最も強く印象に残っているアメリカの事件,事物,あるいは人物を挙げてもらい,比較・討論する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 次回に扱う,文献,論文などがあれば,必ず事前に読んでおくこと。そのための資料は,予め指定もしくは配布する。以下同じ。 
 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 大統領の歴史:憲法の定める大統領の役割と選挙人の投票による選定,ワシントン大統領の挙国一致体制,閣内対立から生まれた連邦党と民主共和党の誕生,南北戦争以後の民主党(民主共和党の後進)と共和党の二大政党制の確立,大統領選挙制度の実質的な変更,憲法改正による任期制限,T・ローズヴェルト以後の大統領の役割の変遷。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 連邦議会の歴史:憲法の定める議会の役割と上院,下院の異なる議員選定方式,州単位の選挙と連邦制との密接な関係,小さな州と大きな州の力の均衡,法律制定の仕組み,大統領との協調と対立の仕組み,強い議会,弱い議会,イデオロギーによる分極化。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 連邦司法の歴史:憲法の定める連邦司法(合衆国最高裁とその他の連邦裁判所)の仕組みと判事任命の仕組み,最高裁の違憲審査権確立と影響力の増大,保守的司法と進歩的司法の対立,共和党大統領と議会による保守的な最高裁判事の任命,民主党大統領と議会による進歩的な最高裁判事の任命,アメリカの文化戦争と最高裁の影響力。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) (内容/ Contents) ウィルソン大統領と超大国としてのアメリカ:第1次世界大戦への参戦と巨大な産業力による大統領主導の戦時体制の確立,国際政治での大きな影響力獲得,建国以来国内の発展に集中したアメリカが国際舞台へ登場,国際連盟創設はじめ理念的な戦争目的の掲示とベルサイユ会議での挫折,孤立主義への回帰とワシントン海軍軍縮会議の成功。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) (内容/ Contents) フランクリン・D・ローズヴェルト大統領と危機の時代:20年代の繁栄と大恐慌,FDRの大統領就任とニューディール政策の実行,連邦政府の権限拡大と最高裁との対立,全体主義体制の脅威と欧州での第2次世界大戦勃発,真珠湾攻撃とアメリカの参戦,国際連合創設による戦後構想とソビエト連邦との関係模索,戦争終了以前の急死。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 第2次世界大戦終結と冷戦勃発:トルーマン副大統領の大統領就任,ドイツの無条件降伏,原爆投下と日本の降伏,ドイツ占領をめぐるソ連との対立,日本占領と朝鮮半島の分断,ケナンのX論文とソ連封じ込め政策採用,対欧マーシャルプラン,対日援助によるドイツと日本の民主化,西側陣営への組み込み,共産中国誕生と朝鮮戦争勃発。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 人種差別の歴史:南部における黒人差別の継続,2つの世界大戦での黒人兵士活躍,北部への黒人移住と北部諸都市での差別,公民権運動,人種差別をめぐる憲法訴訟,ブラウン対教育委員会事件判決,南部の抵抗,公民権法の制定,キング牧師の暗殺,連邦立法府,行政府,司法府による人種差別解消のための積極的対応,結果の平等への反発。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 連邦政府権限の拡大:民主党政権の大きな政府による福祉国家実現政策,1950年代のアメリカの圧倒的な経済力,ケネディー大統領の理想主義とキューバ危機,相互破壊戦略と核戦争の可能性,ジョンソン大統領の「偉大な社会」,「大砲もバターも」,朝鮮戦争,ベトナム戦争の挫折,冷戦継続と緊張緩和,貿易赤字とドル防衛,通商戦争の激化。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 帝王的大統領ニクソンの栄光と没落:アイゼンハワー以来の共和党大統領の登場,大統領権限の極大化,大きな政府の政策継続,ベトナム戦争からの力ずくの離脱,共産中国との関係,ニクソンショックとアメリカ第1主義,ソ連との緊張緩和,権力乱用とウォーターゲート事件の発覚,ニクソン対合衆国事件判決,大統領弾劾の動きと自発的辞任。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) ロナルド・レーガン大統領と小さな政府:戦後民主党政権の大きな政府政策への反発,ゴールドウォーター大統領候補による保守思想の復権,ニクソン大統領による南部民主党支持者の取り込み,レーガン政権の誕生と小さな政府の政策,対ソ強硬政策と軍備拡大,ソ連との軍縮実現。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 冷戦終了と新しい世界秩序:ブッシュ41代大統領の就任,ベルリンの壁崩壊と冷戦の終結,東西ドイツの再統一実現,新しい世界秩序の模索,冷戦の配当をめぐる議論,イラクによるクウェート侵略,第1次湾岸戦争勝利,日米同盟の危機,クリントン政権の経済戦略重視と同盟の一時的軽視。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) 最高裁の保守化:FDR,アイゼンハワー,ケネディー,ジョンソン大統領による進歩的判事の任命と進歩的判決,ニクソン,レーガン,ブッシュ親子大統領による保守的判事の任命と最高裁の保守化,妊娠中絶の権利を定めたロー事件判決の行方,クリントン・オバマ政権による進歩派判事,トランプ政権による保守派判事の任命。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 9.11同時多発テロ事件と新しい戦争:9.11同時多発テロ事件とブッシュ43代大統領によるアフガン・イラク戦争の開始,議会による大統領への武力行使権限付与,戦争の長期化と国民の不満増大,グアンタナモ海軍基地に拘留されたテロ容疑者の裁判を受ける権利と最高裁の判断。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) オバマ・トランプ大統領と内向きのアメリカ:ブッシュ政権の中東政策,戦争政策への不満とオバマ大統領の就任,史上初の黒人大統領誕生と一つのアメリカの理想,進歩的な国内政策と保守派の反発,アメリカ第一主義を唱えるトランプ大統領の就任,両者に共通するアメリカの内向き傾向,西側同盟の弱体化,中国の対等とアメリカの覚悟。まとめ:統計から見るアメリカ史。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments)  

実際に授業を行ったうえで,講義の進捗,判例その他の分析などに要する時間によっては,上記の計画を変更する可能性がある。 

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加,グループ作業の成果等)  40%  多面的なアメリカの歴史を総合的に理解するためには,継続して授業に参加して考えることが重要であるため,出席日数を重視する。また授業参加への自発的積極性を評価する。 
 
期末レポート試験・論文  60%  本科目で扱った内容をきちんと理解できたか,実際に表現できるかどうか確かめるために,期末レポートを重視する。(ただし履修者の人数が多いときには,期末試験に変更する場合がある。) 
 

出席回数,期末レポート(もしくは期末試験)の内容と質 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
15 86.7 6.7 6.7 0.0 0.0 0.0 3.8

<テキスト/Textbook>

特定のテキストは用いないが,授業で扱う資料を必要に応じて指定あるいは配布する。 

<参考文献/Reference Book>

阿川尚之  『憲法で読むアメリカ史(全)』(筑摩書房、2013)
 

阿川尚之  『憲法で読むアメリカ現代史』(NTT出版、2017)
 

A. ハミルトン・J.ジェイ・ J.マディソン(斎藤眞・中野勝郎訳)   『ザ・フェデラリスト』(岩波書店、1999)
 

久保文明   『アメリカ政治史』初版 (有斐閣、2018)
 

ポール・ジョンソン(別宮貞徳訳)  『アメリカ人の歴史I, II, III』初版 (共同通信社、2001)
 

<参照URL/URL>

Constitution of the United States 
 
 

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