シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10280621 

△日本文学特殊講義(上代D)
Topics in Japanese Literature (Old1 D)
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  藤原 享和

<概要/Course Content Summary>

 上代(古代前期)の歌といえば誰しも思い浮かべるのが『万葉集』であろう。たしかに4,500首以上の歌が記された『万葉集』は上代の歌の宝庫である。しかし『万葉集』の成立に先立つ『古事記』にも多くの歌謡が収載されている。しかもその歌謡の一部は1924年に発見された『琴歌譜』によって平安朝の儀式の場で実際に歌われたことが確認できるのである。 
 また,『続日本紀』に記された歌は,上代の歌であるにもかかわらず,歌われた儀式の年月日や場所までもが正確に記録されている場合がある。 
 さらには『古事記』中巻ヤマトタケル葬送の場面に記された4首の歌は現代の天皇の葬儀にも歌われる。 
本授業では『古事記』や『続日本紀』,『琴歌譜』所載の歌謡が儀式の場でどのように機能したのかを中心に講義するほか,現代に見られる皇室儀礼の擬古性にも言及する。 
また,20年に1度の伊勢神宮の遷宮の遷宮における杵築祭で歌われる歌謡についてもその生成を辿りたい。

<到達目標/Goals,Aims>

『古事記』,『続日本紀』,『琴歌譜』所載歌謡の史料的意義を正確に把握し,儀式の場で歌謡が果たす機能について正確な理解ができるようになる。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 1 
 
(内容/ Contents) 講師の簡単な自己紹介,「上代」の範囲と上代文学の場  (授業時間外の学習/ Assignments) 上代文学の時代的背景を理解する。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 『古事記』と上代歌謡概説  (授業時間外の学習/ Assignments) 『古事記』の史料性の確認を行い,上代歌謡の基礎知識を習得する。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 『古事記』中巻ヤマトタケル条講読(1) 
ヤマトタケル西征説話 
(授業時間外の学習/ Assignments) ヤマトタケル西征説話と王権の論理を正確に理解する。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 『古事記』中巻ヤマトタケル条講読(2) 
ヤマトタケル東征説話 
(授業時間外の学習/ Assignments) ヤマトタケル東征説話と伊勢神宮の位置づけを正確に理解する。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 正倉院展について 
上代からの伝世品見学の意義 
(授業時間外の学習/ Assignments) 自主的に奈良国立博物館で正倉院展を見学する。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) ヤマトタケルと尾津崎歌謡 
「大刀佩けましを 衣着せましを」の意味するもの 
(授業時間外の学習/ Assignments) ヤマトタケルが尾津崎で歌ったと記される歌謡(『古事記』29番歌)のヤマトタケル説話における意味と意義を正確に理解する。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 葬送儀礼歌(1) 
古代の葬制と「大御葬歌」研究史 
(授業時間外の学習/ Assignments) 天皇葬儀の時代的変遷と大御葬歌の研究史を正確に押さえる。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 葬送儀礼歌(2) 
「大御葬歌」の場と『古事記』34番歌の解釈 
(授業時間外の学習/ Assignments) 『古事記』が位置づける大御葬歌の場はどこであるのかを正確に理解し,大御葬歌の1首目である『古事記』34番歌の意味を地の文の中で理解する。 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 葬送儀礼歌(3) 
「天皇の大御葬に歌ふ」歌としての表現 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 大御葬歌の2,3首目である『古事記』35,36番歌のどのような表現が天皇葬儀の歌として適当なのかを正確に理解する。 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 葬送儀礼歌(4) 
「大御葬歌」の実唱と現代の天皇大喪歌 
(授業時間外の学習/ Assignments) 古代において大御葬歌が実唱されたとすることの妥当性と,現代の天皇大喪における大御葬歌の歴史性を理解する。 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) 『続日本紀』歌謡 
天平15年5月5日の恭仁宮に舞う女性皇太子 
『続日本紀』3番歌における「この豊御酒を厳献る」 
(授業時間外の学習/ Assignments) 恭仁宮(8世紀,木津川市加茂地区に短期間存在した聖武天皇の宮)について理解し,天平15年5月5日の儀式で歌われた歌の意味とその儀式における歌の機能を把握する。 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 大歌所(1) 
『琴歌譜』1番歌と縁記 
(授業時間外の学習/ Assignments) 1924年に発見された『琴歌譜』についての知識を習得し,『琴歌譜』1番歌と並記される縁記の意味,縁記を伴った上でその歌が歌われることの意義を理解する。 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) 大歌所(2) 
『琴歌譜』1番歌と『古事記』94番歌 
(授業時間外の学習/ Assignments) 『琴歌譜』1番歌と『古事記』94番歌はほぼ同一の歌謡であることと,その歌が『琴歌譜』,『古事記』それぞれの縁記や物語のなかでどのように読まれるべきかを理解する。 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 伊勢神宮式年遷宮 
式年遷宮概説,天の石屋神話 
伊勢内宮遷宮杵築祭歌謡の形成 
(授業時間外の学習/ Assignments) 伊勢神宮の20年に1度の式年遷宮の歴史性とその意義,天の石屋神話との関連性を理解する。伊勢神宮の遷宮に伴う儀式である「杵築祭」の中で歌われる歌謡の形成過程を理解する。 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) まとめ 
秋学期の授業で扱いきれなかった部分の補完を行う。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 秋学期の授業をふり返り,知識を定着させる。 

日本文学特殊講義(上代C)の受講者と本講義の受講者の重なりが多い場合は,第1,2回の授業内容を変更する。また,授業の進捗状況によって授業計画の多少の変更はあり得る。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  20%  出席を重視する。 
 
期末レポート試験・論文  80%  「到達目標」に示した目標の達成度で評価する。 

授業を体系的に進めるため断片的な出席は避けられたい。 
授業内容に即したレポートを課す。

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
29 31.0 24.1 24.1 0.0 20.7 0.0 2.4

<テキスト/Textbook>

特定のテキストは用いず,プリントを配布する。

<参考文献/Reference Book>

土橋寛  『古代歌謡論』(三一書房、1960)
 

土橋寛  『古代歌謡と儀礼の研究』(岩波書店、1965)
 

土橋寛  『古代歌謡全注釈 古事記編-978-4047610224-』(角川書店、1972)
 

駒木敏  『和歌の生成と機構』(和泉書院、1999)ISBN:978-4870889651 
 

全国大学国語国文学会編  『日本語日本文学の新たな視座』(おうふう、2006)ISBN:978-4273034375 
 

藤原享和  『古代宮廷儀礼と歌謡』(おうふう、2007)ISBN:978-4273034689 
 

その他授業中に適宜紹介する。

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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