シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10280418 

△日本文学講読(広域B)
Readings in Japanese Literature (Integrated B)
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  山田 和人

<概要/Course Content Summary>

人形文化史 
日本人にとって人形は格別の存在である。街中にも自宅にも数えてみるとおびただしい人形があるはずだ。人形は,日本の文化と歴史に根ざしており,現代社会におけるロボットと人間の関係性にも深くかかわっている。介護用ロボットが話題になっているが,おそらく介護用ロボットは日本で最も早く普及するものと推測される。それはロボットの技術の問題だけではなく,その背景には日本人のロボット観が関連している。鉄腕アトムなどの例をあげるまでもなく,日本人にとってロボットは身近な存在として受け入れられている。この問題は近代的なロボット観よりも,もっと遡る日本人の人形観に行き着くのではないか。それは実は,人形のあり方だけにとどまらず,人形及びその周辺の文化にも通じる世界観や価値観に関わっていると考えられる。そうした歴史的なとらえ方をしてはじめて現代の人型ロボットの背景にある文化的存在としての人形の問題をとらえることができるのではないか。 
日本人にとって人形とはいかなる存在であるのか,改めて問い直してみたい。文楽人形や各地に伝承されている多様で個性的な人形のパフォーマンスの実情を踏まえながら,歴史的に足跡をたどることによって,その問いに答えていきたい。その意味で今回は人形文化史という視点からアプローチしてみたい。人形が,社会や文化とどのような関わりを持ち,いかに受け入れられてきたのか,この問いは人形の身体性や演劇性に深く関わるだろう。 
なお,文楽は,能楽や歌舞伎とともに世界無形遺産に指定されている。文化遺産としての価値は世界的にも認められている。東アジアの人形芝居は,世界の七割近くを占める。大人向けの人形芝居として人気を誇っている。ヨーロッパでは,人形芝居はこども向けであり,メルヘンとしてとらえられる傾向が強い。人形芝居の表現方法もその目的に応じて変わる。アジアの人形芝居という視点も踏まえて,世界の人形芝居の最高峰に位置する人形浄瑠璃文楽の魅力を探るとともに,そのルーツを探っていきたい。そして,ベトナムや台湾の人形芝居についても比較演劇的な視点から紹介していきたい。 
三人遣いの文楽に対して,それ以前には一人遣いの人形の時代があった。近松門左衛門の浄瑠璃も一人遣いの舞台で演じられた。一人遣いならではの豊かで楽しい操りと舞台の表現世界を想像するだけで楽しい。多様で個性的な人形の演技・演出を味わってみてはどうだろうか。エンターテインメントとしての人形浄瑠璃の魅力を掘り起こしていきたい。 
そのために今回は映像資料を毎回使用する。そのなかに,NHK「にっぽんの芸能」などに出演した映像や海外の人形芝居調査の記録も盛り込む。まだ,文楽を見たことがない人も,この機会に触れてみることで,日本の人形文化のすばらしさを実感してもらいたい。

<到達目標/Goals,Aims>

この授業では,街中の人形,文楽人形,海外の人形芝居や日本各地に残るからくり・人形芝居に至るまで幅広い素材を使って,世界に誇りうる日本の人形やその文化について理解を深めることができる。それによって,国際社会の中で活躍するために必要な文化的素養を身につけることができるようになる。そのために,今回は絵画資料や映像資料を使って,ビジュアルに授業を展開していく。同時に気軽に話し合う時間も設けていきたい。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 日本人と人形(対面授業)  (授業時間外の学習/ Assignments) シラバスの通読 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 文楽とは何か〜語りと人形芸の魅力〜(対面授業)  (授業時間外の学習/ Assignments) プリントの通読とまとめ 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「菅原伝授手習鑑」(文楽と歌舞伎)鑑賞(以後,オンライン授業)  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読とまとめ 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「菅原伝授手習鑑」(文楽と歌舞伎)比較研究  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読とまとめ 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「一谷嫩軍記」(文楽と歌舞伎)鑑賞  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読とまとめ 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「一谷嫩軍記」(文楽と歌舞伎)比較研究  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読とまとめ 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 近松以後の人形浄瑠璃(三人遣い) その1(プレゼンバトル)  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読と発表資料作成 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 近松以後の人形浄瑠璃(三人遣い) その2  (授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読とまとめ 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 近松・古浄瑠璃時代の人形浄瑠璃(一人遣い) 
 その1(プレゼンバトル) 
(授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読と発表資料作成 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 近松・古浄瑠璃時代の人形浄瑠璃(一人遣い) 
 その2 
(授業時間外の学習/ Assignments) テキストの通読とまとめ 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) からくり人形 その1  (授業時間外の学習/ Assignments) プリントの通読とまとめ 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) からくり人形 その2  (授業時間外の学習/ Assignments) プリントの通読とまとめ 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) アジアの人形芝居 その1 ベトナム水上人形芝居  (授業時間外の学習/ Assignments) プリントの通読とまとめ 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) アジアの人形芝居 その2 台湾の布袋戯  (授業時間外の学習/ Assignments) プリントの通読とまとめ 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 地方の人形芝居という視点  (授業時間外の学習/ Assignments) プリントの通読とまとめ 

授業の進捗状況によって進度がずれることがある。また,内容についても,他の資料を追加することもある。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点  40%  毎回のコメントシート。振り返り,自己評価力。 
受講に際しては以下の点に留意すること。 
 
1)授業中の入退室は認めない。 
2)授業中のスマホの操作は認めない。 
3)10分以上の遅刻は原則として認めない。 
4)3回以上の欠席は認めない。 
発表点  20%  適宜発表を織り込む。プレゼンテーションの技術。 
期末筆記試験  40%  人形文化史に関連するレポート。論理的かつ意欲的な報告。 

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
47 17.0 36.2 10.6 10.6 25.5 0.0 2.1

<テキスト/Textbook>

  授業時に配布するプリントを使用する。 

 

 

 

<参考文献/Reference Book>

阪口弘之編  『近世演劇を学ぶ人のために』(世界思想社、1997)
 

  『岩波講座「歌舞伎・文楽」八巻-近松の時代-』(岩波書店、1998)
 

人形舞台史研究会  『人形浄瑠璃舞台史』(八木書店、1991)その他は,授業の中で必要に応じて指示する。 
 

山田和人  『竹田からくりの研究』(おうふう、2017)
 

<参照URL/URL>

文化デジタルライブラリー 
 
 

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