シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


30206224 

△日本文学史研究Ⅱ
Studies in History of Japanese Literature II
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  前田 貞昭

<概要/Course Content Summary>

日本近代文学における本文の問題を押さえた上で,昭和戦前期の井伏鱒二作品を「私」「語り」「象徴」「寓意」などの観点から検証する。

<到達目標/Goals,Aims>

近代文学における本文研究について必要な知識を獲得するとともにその課題についても理解を深めること,および,先鋭な方法意識を持ちつつも,それを作品の表層には顕現させない井伏文学に迫る視角を獲得すること,さらに,新しい井伏研究が出現した要因に理解を深めることができるようになる。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 1回 
 
(内容/ Contents) 自筆原稿と印刷(1)/日本近代文学における本文研究の課題について講義する *講義形態・内容についても説明する  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 2回  (内容/ Contents) 自筆原稿と印刷(2)/「兼行寺の池」「丹下氏邸」の自筆原稿を取り上げて,その字体・字形について検証する  (授業時間外の学習/ Assignments) 事前に配付した資料〔井伏自筆原稿〕の字体・字形について,概要を把握しておく。 
(実施回/ Week) 3回  (内容/ Contents) 自筆原稿と印刷(3)/「兼行寺の池」「丹下氏邸」の本文推移について検証する  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 4回  (内容/ Contents) 前回までの講義を踏まえて,本文校訂の諸課題について,総括的に講義する  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 5回  (内容/ Contents) 井伏文学における「私」(1)/「炭鉱地帯病院」の「私」にいて,作品内存在としての側面から検証する  (授業時間外の学習/ Assignments) 「炭鉱地帯病院」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 6回  (内容/ Contents) 井伏文学における「私」(2)/「丹下氏邸」における〈丹下氏〉像を明らかにしつつ,〈語り手〉の巧緻な企図を考察する  (授業時間外の学習/ Assignments) 「丹下氏邸」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 7回  (内容/ Contents) 井伏文学における「私」(3)/「朽助のゐる谷間」における「私」を〈無能〉なる存在として分析する  (授業時間外の学習/ Assignments) 「朽助のゐる谷間」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 8回  (内容/ Contents) 井伏文学における「私」(4)/「言葉について」の「私」を〈欲望〉〈回避〉〈逃亡〉というキーワードから分析する  (授業時間外の学習/ Assignments) 「言葉について」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 9回  (内容/ Contents) 井伏文学における「私」(5)/「『槌ツァ』と『九郎治ツァン』は喧嘩して私は用語について煩悶すること」の「私」を,作品世界の癒着構造の面から分析する 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 「『槌ツァ』と『九郎治ツァン』は喧嘩して私は用語について煩悶すること」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 10回  (内容/ Contents) 井伏文学の出発とその課題/〈プロレタリア文学〉・〈私小説〉の批判的継承者として,井伏を位置付ける  (授業時間外の学習/ Assignments) 復習 
(実施回/ Week) 11回  (内容/ Contents) 寓話という選択・「山椒魚」/〈寓話〉という方法が獲得したものを検証する  (授業時間外の学習/ Assignments) 「山椒魚」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 12回  (内容/ Contents) 象徴の課題・「鯉」/作品内の形象を可能な限り〈象徴〉として読んでみる  (授業時間外の学習/ Assignments) 「鯉」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 13回  (内容/ Contents) 市場の芸術家・「寒山拾得」/市場価値で測られる芸術作品という観点から「寒山拾得」を読んでみる  (授業時間外の学習/ Assignments) 「寒山拾得」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 14回  (内容/ Contents) 権力に対抗する〈他界〉・「へんろう宿」/戦時体制への抵抗の側面から,へんろう宿〈波濤館〉を検証する  (授業時間外の学習/ Assignments) 「へんろう宿」を読んでくる。 
(実施回/ Week) 15回  (内容/ Contents) 執着と不機嫌・「白毛」/戦後という時代への気分を「白毛」に読む  (授業時間外の学習/ Assignments) 「白毛」を読んでくる。 

受講者と相談の結果,また,配付可能な資料との関係で内容は些少の変更があり得る。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加,グループ作業の成果等)  10%  受講状況を評価する。 
期末レポート試験・論文  90%  独自の観点含むか否かを評価する。 

期末レポート試験に関しては,先行研究を踏まえた上で,独自の観点をどれだけ論理的に提示しているか否かを評価のポイントとする。講義内容を上手にまとめる必要はない。

<テキスト/Textbook>

井伏 鱒二  『山椒魚・遙拝隊長他七篇-岩波文庫-』 (岩波書店、1956) ISBN:978-4003107713  下記の新潮文庫と収録作品に重なりがあるが,現代表記化の様相が異なり,また,収録作品の底本も異なっている。 

 

井伏 鱒二  『山椒魚-新潮文庫-』 (新潮社、1948) ISBN:978-4101034027  上記の岩波文庫と収録作品に重なりがあるが,現代表記化の様相が異なり,また,収録作品の底本も異なっている。 

 

講義に取り上げる作品が多く収録されている文庫本を二つあげておいたが,テキストとして特に指定するつもりはない。講義に取り上げる作品が収録されていれば,『井伏鱒二集』〈現代日本文学全集41〉(筑摩書房,1953年)ほかの文学全集類を古書店などで入手してもよい。

<参考文献/Reference Book>

東郷 克美  『井伏鱒二という姿勢』(ゆまに書房、2012)ISBN:978-4843340981 井伏文学研究の原点たるべき論文集であり,著者の既発表論文の殆どが集成されている。 
 

滝口 明祥  『井伏鱒二と「ちぐはぐ」な近代-漂流するアクチュアリティ-』(新曜社、2012)ISBN:978-4788513143 井伏文学研究の現時点における到達の一つを示すもの。 
 

第1回に参考文献一覧を配布の予定。また,授業時にも適宜指示する。

<備考/Remarks>

連絡は,carpsaramandar■yahoo.co.jpまで。(■はアットマーク) 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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