シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10102109 

△イスラーム学9 (ハディース学概論)
Islamic Studies 9 -Introduction to Hadith-
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  森山 央朗

<概要/Course Content Summary>

 この講義では,ハディースとハディース学,ハディース学者について論じます。ハディースとは,預言者ムハンマド(西暦632年没)の言行に関する伝承を指すアラビア語の名詞です。ハディースは,ムスリム(イスラーム教徒)にとって,啓典『クルアーン(コーラン)』に次ぐ権威を持ちます。ハディース学とは,そうしたハディースの収集・保存や真正性の判定などをめぐる知識体系のことであり,ハディース学者とは,このハディース学に専門的に取り組むウラマー(イスラーム宗教知識人)を指します。 
 ハディースの伝達は預言者の死の直後(7世紀中葉)に始まりましたが,一編の書物にまとめられることはなく,様々な場面における預言者の発言や行為を伝える短い伝承が,主に口伝えで無数に伝えられていきました。イスラーム世界の各地に伝わるハディースを収集して書物に記録する活動は9世紀から本格的に行われ,10世紀にかけてハディースをめぐる知識体系,すなわち,ハディース学が形成されていきました。その後の11世紀から13世紀前半にかけて,ハディース学は学問として隆盛を迎え,多くの著名なハディース学者を輩出し,理論的にも成熟を迎えました。こうした歴史的展開の中で,ハディース学はどのような理論を形成し,それを担ったハディース学者たちは,どのような知的実践を行ってきたのでしょうか。 
 この講義は,10世紀後半から13世紀前半の西アジアを中心に,ハディース学の展開とハディース学者の知的実践を解説し,ハディース学とハディース学者が果たしていた社会的・文化的な機能を分析することで,ムスリムが預言者ムハンマドに帰される知識をどのように継承・受容・利用してきたのかを論じます。 
 
 なお,この授業はオンラインによる遠隔対面形式と動画配信形式によって行います。

<到達目標/Goals,Aims>

 イスラームの教義と規範のクルアーンに次ぐ源泉であるハディースと,イスラーム宗教諸学の基礎分野であるハディース学に関する基本的な知識を習得し,ハディース学とハディース学者に関する社会文化史的な分析を通して,ムスリム社会における宗教的知識と宗教指導者のあり方を考察するための基本的な問題意識を身につけることを目標とします。 

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 1回目  (内容/ Contents) 導入:ハディース・ハディース学・ハディース学者  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 2回目  (内容/ Contents) 預言者ムハンマドについて:生涯と預言者としての活動の概略  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 3回目  (内容/ Contents) ハディースの位置:特にクルアーンとの関係で  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 4回目  (内容/ Contents) ハディースの伝達の始まりとハディース学の誕生  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 5回目  (内容/ Contents) ハディースの真正性判定:それを必要とした状況と作業手順  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。小レポートの作成。 
(実施回/ Week) 6回目  (内容/ Contents) ハディース真正性判定理論(1):イスナード(伝達経路)の検証  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 7回目  (内容/ Contents) ハディース真正性判定理論(2):「よく知られた」ハディースと「珍しい」ハディース  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 8回目  (内容/ Contents) イスナードの価値と機能:「高いイスナード」と「低いイスナード」  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。小レポートの作成。 
(実施回/ Week) 9回目  (内容/ Contents) ハディース学者の活動(1):修行  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 10回目  (内容/ Contents) ハディース学者の活動(2):ハディース探求の旅  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 11回目  (内容/ Contents) ハディース学者の活動(2):ハディース探求の旅  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 12回目  (内容/ Contents) ハディース学者の活動(3):著述と競争  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。 
(実施回/ Week) 13回目  (内容/ Contents) ハディース学者の活動(3):著述と競争  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。期末レポートの作成を進める。 
(実施回/ Week) 14回目  (内容/ Contents) ハディース学の展開と停滞:「正伝」の権威化と近世における「復興」  (授業時間外の学習/ Assignments) 授業内容の整理と復習。次回使用するテキストや資料プリントが配付された場合にはその予習。期末レポートの作成を進める。 
(実施回/ Week) 15回目  (内容/ Contents) 近現代のハディース学:西欧実証主義的文献学の挑戦・サラフィー主義の台頭・インターネットの普及  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義全体の整理と復習。期末レポートの作成を進める。 

 受講生の予備知識などに応じて,開講後,受講生と相談の上で授業計画を変更する可能性があります。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加,グループ作業の成果等)  50%  きちんと出席して,不明な点に関する質問や感じたことに関するコメントを積極的に行ったか。 
小レポート  10%  授業の内容を理解し要約できているか。 
期末レポート試験・論文  40%  授業の内容を踏まえてテーマを設定し,関連する文献を調査して,論理的にまとめることができたか。 

<参考文献/Reference Book>

ブハーリー  『ハディース-イスラーム伝承集成-』(中央公論新社、2001)スンナ派の間で最も高い権威が認められているハディース集の和訳です。 
 

小杉泰  『ムハンマドのことば-ハディース-』(岩波書店(岩波文庫)、209)ISBN:9784003382417 
 

牧野信也  『イスラームの原典-【コーラン】と【ハディース】 -』(中央公論社、1996)
 

ムスリム  『日訳サヒーフ ムスリム』(日本ムスリム協会、1987-1989)上記のブハーリーのハディース集と並んで,スンナ派の間で高い権威が認められているハディース集の和訳です。残念ながら非売品です。 
 

 その他の参考文献については,授業中に紹介します。

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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