シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2020年度


10101154 

△組織神学14 (現代世界における終末思想)
Systematic Theology 14 -Eschatological Thought in the Contemporary World-
2単位/Unit  秋学期/Fall  今出川/Imadegawa  講義/Lecture

  崔 弘徳

<概要/Course Content Summary>

 終末思想あるいは終末論と言うと,一般的にはただ個人の死や歴史・宇宙の終末に関する教えであると考えられる場合が多いのが事実です。もちろんそれは,「終末論」(Eschatologie)とは「最後の事柄(究極の事柄)に関する教説」(die Lehre von den letzten Dingen)を意味するという語義的な理解から生じるものであると考えられます。しかし,終末思想(終末論)は決して終末(来世)の事柄あるいは究極の事柄のみを取り扱う教説ではありません。むしろそれは,終末(来世)あるいは究極の事柄を意識しつつ,現在ないし現世の生を如何に生きるべきかについての教説であり,尚且つ,人をして自分の決断や責任を持って自分の生を積極的に生きるように導く教説でもあると言えます。 
 特に,キリスト教神学においても終末論は重要視されています。従来のキリスト教神学,とりわけ教義学においては,終末論は教義学の最後のところで扱う一つの事柄として理解されてきましたが,今日においては,他の諸教説すべてと密接に関連しているという,いわゆる教義学の「根幹」としてまで見なされる傾向があるのです。以上のような点から考えてみれば,終末思想(終末論)というのは神学徒だけが学ぶものではなく,現代人すべてが学ばなければならないものであると言っても過言ではないでしょう。 
 この授業では,キリスト教神学の立場から様々な終末思想(終末論)にアプローチしていきますが,従来の教義学における終末論理解にとどまらず,現代世界における様々な終末思想との関りの中で展開します。まずは,旧約聖書と新約聖書にあらわれている諸終末的内容を概観することから始めます。それから,その解釈をめぐる様々な見解や立場を,キリスト教の神学思想史にそって,つまり古代,中世,宗教改革時代,近代,そして現代における主な見解を中心に検討します。ここでは便宜上,幾つかの類型に分け,それらを対照させることによって,各々の主張内容を明確にします。その類型とは,1)過去的終末論(実現された終末論),2)現在的終末論(永遠の現在としての終末論),3)未来的終末論(歴史内在的終末論),4)来世的終末論(黙示文学的終末論),5)現在-来世的終末論などです。特に,より深く探究すべきところでは一定の方法論をもって分析や批判などを行います。最後には,最近の諸終末思想や終末論的ハプニングなどを多様な面から考察しつつ,特定のところでは批判的検討を行います。  

<到達目標/Goals,Aims>

 この授業を受講する者は,1)終末論あるいは終末思想の内容を概観することにより,それに関する一定の基本知識を得ることができる。2)自分の信仰や人生観などについて真摯に考えながら,責任ある人生を生きることができる。3)自分だけの次元を超えて,世界や歴史といった次元の事柄にも関心を持つことができる。4)現代世界における様々な終末思想を検討・分析・批判し得る能力を得ることができる。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 1回目  (内容/ Contents) 終末論序説―終末論の概念及び類似概念,方法論,テーマなど   (授業時間外の学習/ Assignments) <終末論>とは何か,について調べてみること。 
(実施回/ Week) 2回目  (内容/ Contents) 聖書における終末思想(1)―旧約聖書  (授業時間外の学習/ Assignments) 旧約聖書の「創世記」,「イザヤ書」,「ダニエル書」を読むこと。 
(実施回/ Week) 3回目  (内容/ Contents) 聖書における終末思想(2)―共観福音書とヨハネ福音書  (授業時間外の学習/ Assignments) 新約聖書の「マルコ福音書」,「ヨハネ福音書」を読むこと。 
(実施回/ Week) 4回目  (内容/ Contents) 聖書における終末思想(3)―パウロ書簡とヨハネ黙示録  (授業時間外の学習/ Assignments) 新約聖書の「テサロニケ信徒への手紙」(1,2),「ヨハネ黙示録」を読むこと。 
(実施回/ Week) 5回目  (内容/ Contents) キリスト教思想史と終末論(1)-古代  (授業時間外の学習/ Assignments) 古代キリスト教の教父たちについて,またアウグスティヌス(Augustinus)について,調べてみること。 
(実施回/ Week) 6回目  (内容/ Contents) キリスト教思想史と終末論(2)-中世及び宗教改革   (授業時間外の学習/ Assignments) M. ルター(M. Luther)とJ. カルヴァン(J. Calvin)について,調べてみること。 
(実施回/ Week) 7回目  (内容/ Contents) キリスト教思想史と終末論(3)-近代および現代(i)  (授業時間外の学習/ Assignments) Fr.シュライアマハー(Fr. Schleiermacher),A. シュバイツァー(A. Schweitzer),K. バルト(K. Barth)について調べてみること。 
(実施回/ Week) 8回目  (内容/ Contents) キリスト教思想史と終末論(4)-現代(ii)  (授業時間外の学習/ Assignments) P. アルトハウス(P. Althaus),P. ティリッヒ(P. Tillich),J. モルトマン(J. Moltmann)について調べてみること。 
(実施回/ Week) 9回目  (内容/ Contents) 死の問題―死の神学的,哲学的理解を中心に   (授業時間外の学習/ Assignments) 特に<死の神学>について,またmemento mori, memento Dominiとは何か,について調べてみること。 
(実施回/ Week) 10回目  (内容/ Contents) キリスト教的死生観―信仰,希望,愛を中心に   (授業時間外の学習/ Assignments) 自分の将来的夢とは何か,自分の生を如何に生きていけば良いのかについて書いてみること,また<愛の本質>について調べてみること。 
(実施回/ Week) 11回目  (内容/ Contents) 従来の教義学における終末論(1)-個人的終末論;死後の状態・場所,復活,永遠の命など  (授業時間外の学習/ Assignments) 人は死んだらどうなるのかについて,また<復活>,<永遠の命>とは何か,について調べてみること。 
(実施回/ Week) 12回目  (内容/ Contents) 従来の教義学における終末論(2)-普遍的終末論;イエス・キリストの再臨,千年王国説,最後の審判,神の国など  (授業時間外の学習/ Assignments) <千年王国>に関する諸説について,また<神の国>(das Reich Gottes)とは何か,について調べてみること。 
(実施回/ Week) 13回目  (内容/ Contents) 歴史哲学における終末思想 
 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) ヘーゲルの歴史哲学における終末的思想の特徴を研究してみること。 
(実施回/ Week) 14回目  (内容/ Contents) 東アジアにおける終末思想 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 日本における<キリシタン>とは何か,韓国における<ダミ宣教会>とは何か,について調べてみること。 
(実施回/ Week) 15回目  (内容/ Contents) 生態学の危機と終末思想及び様々な終末思想的ハプニング/総括  (授業時間外の学習/ Assignments) 旧約聖書の「創世記」1~3章を読み,また生態系の危機について調べてみること。そして終末思想(終末論)の諸類型や内容を要約し,終末論の視点から自分の人生観を書いてみること。 

この授業計画は開講後に受講生との相談のうえ,変更されることもありえます。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加など)  30%  授業に楽しく積極的に参加することが大切です。 
出席チェックの代わりに,授業参与度に関する小レポート(A41枚)を一回提出する。 
期末レポート  70%  一回提出。論題をよく熟知した上で,講義レジュメ・動画の内容に基づいて作成することが大切です。 

<テキスト/Textbook>

毎週,資料(プリント)を配付します。 

<参考文献/Reference Book>

G. ザウター著,深井智朗・徳田 信訳  『終末論入門』(教文館、2005年)
 

芦名定道・小原克博  『キリスト教と現代-終末思想の歴史的展開-』(世界思想社、2001年)
 

* その他の文献は,授業の中で紹介します。

<備考/Remarks>

<担当教員の連絡先> honglee0928@yahoo.co.jp 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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