シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2019年度

11433508-001 

○サイエンス・ナウ3-1 (報道と広報の現場)
Science Now 3-1 -Field of Media and Public Relations-
2単位/Unit  春学期/Spring  京田辺/Kyotanabe  講義/Lecture

野口 範子 西沢 邦浩 奥野 敦史 坂野上 淳
吉田 雅一 竹内 弘一 長谷川 聖治 伊藤 英之
櫻庭 陽子 瀬古 祥子 山梨 裕美 田中 正之
古川 圭子 山谷 清志

<概要/Course Content Summary>

健康•医療に対する人の関心は非常に高く,それを煽るような情報があふれている一方で,生命科学や医療技術の進歩は十分には伝えられていない現実がある。これらを正確にかつわかりやすく伝えるために,新聞やテレビなどの報道現場では直面する問題を解決しながら様々な取り組みがなされている。また,企業の広報部では,企業内外の情報を迅速に正確にキャッチし,製品の魅力ある情報発信が求められる。本講義では,実際に報道と広報の現場で奮闘している講師により具体的な例を掲げながら講義が行われる。資料配布やスライドの工夫など障害のある学生への配慮がなされている。

<到達目標/Goals,Aims>

報道や広報の現場の課題や解決への取り組みを学び,サイエンスコミュニケーターが社会のニーズに応えるために必要な課題設定とその解決に向けた思考能力を習得する。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「あなたも立派なサイエンスライター」  
情報拡散がスピードアップした現代,広報・宣伝の重要性が増しています。テレビ報道・番組における工夫を知ることで,一般の人に科学的な立場から説明する意識を高めます。(読売テレビ 吉田雅一) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「サイエンスコミュニケーションの実践」 
大学における広報を通じてステークホルダー(例えば納税者)への説明責任という概念が一般化し,非営利である大学においても例外ではない。大学や研究機関において得られた研究をいかにして外部に発信するか?問題点はなにか?海外での事例も含め考えたい。(大阪大学免疫学フロンティア研究センター 坂野上淳) 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習30分 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「科学技術の政策評価とアカウンタビリティ」 
 アカウンタビリティは民主主義社会を維持するために必須の価値としてグローバル社会で共有される価値であるが,「説明責任」と2001年に日本語訳されたとたんに形骸化した。もちろん日本の科学技術政策においても,この形骸化は避けられない。なぜなら科学技術政策が研究開発・高等教育だけでなく,外交,国防,産業育成,地域振興に深くかかわっており,政治行政の思惑に左右され,アカウンタビリティが錯綜しているからである。またアカウンタビリティ確保の方法を概念整理しなかったため,各府省や法人の評価担当者は混乱し,それが研究者を疲労させる。政策評価,独立行政法人評価,国立開発法人評価,事業仕分け,行政事業レビュー,そして研究開発評価の実例から,混迷する科学技術政策のアカウンタビリティ問題を紹介したい。 
 (山谷清志) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「言葉を使って情報を伝える 〜わかりやすく話すには」 
テレビやラジオで情報を伝えるには,視聴者・聴取者に「一度で聞き取って理解してもらう」ことを意識しなければならない。 
日々「文字情報を音声に変える」仕事をしているアナウンサーは,何を意識し,どんな工夫をしているのか。放送で実践している「聞き取りやすい話し方」「伝わりやすい言葉の選び方」を知り,プレゼンテーションの技術向上を目指す。(毎日放送 古川圭子) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「サイエンスコミュニケーションの要件」  
データは嘘をつかないが,それをどう解釈し伝えるかで大きな誤解やミスリードが生じる。こと,健康・医療分野において,エビデンスを正しく伝えることは,研究が「成果」として社会的に結実するかどうかのカギを握り,また人々の生活に直接影を与える。データを含む文章表現の落とし穴,二次情報のリスク,エビデンスは常に揺れ動くものであることなどサイエンスコミユニケーションの要件を,最新の注目研究とそれに関する報道を題材にして学ぷ(日経BP社 西沢邦浩) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「2020年代に向けた新たな医療情報メディアの姿とは」 
インターネットメディアの誕生後,あらゆる情報伝達の技術,形式,機会は激変し続けてきた。スマートフォン,SNS,動画などへのシフトは指摘されて久しいが,さらに人工知能の活用も現実的になっている。それらの変化を踏まえてメディア自体のあり方はどう変わっていくのか,どんな可能性が今探られているのか,最新の状況を概観する。 
(株式会社マイナビ/医療ジャーナリスト 奥野敦史) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「ローカル放送局の報道において記者が求められる能力とは」 
京都のローカル放送局であるKBS京都は東京や大阪などのキー局,準キ一局に比ぺて圧倒的に規模が小さく予算.人員など限られたなかで日々取材活動に当たっている。1人の記者が取材する分野も幅広く個々の専門性を高めるには不利な環境にあると言わざるをえない。しかし,基本的には転勤がなく「京都」という軸を作ることで長年,取材を重ねているうちに他のメディアとの差別化を図ることができ,地域の報道機関としてユニークな情報を伝えられる可能性もある。現場の記者,アナウンサー,キャスターを兼任する立場で記者に求めれる要素を解説する。(KBS京都 竹内弘一) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「科学と社会」 
よりよい生活や安全・安心確保のために,科学技術の知識や考え方は不可欠になっている。その知識や考え方が欠如したとき,時には命を落とすことさえもある。科学技術をいかにわかりやすい言葉で伝え,行動変容に結び付けられかが重要になっている。原子力,災害報道などを通じて科学者・研究者やメディアの役割などを考える。 
(読売新聞 長谷川聖治) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 予習 
「メディアを読み解く力」 
小島正美(著)を読む。 
(3~5時間) 
(実施回/ Week) (内容/ Contents) 「科学の明と暗」 
AI(人工知能)に関連するニュースがない日がないほどAI情報はメディアにあふれている。科学の発展にイノベーションの必要性は声高に叫ばれている。明るい夢物語が語られる一方で,その裏に暗部,落とし穴もある。職の創出,研究不正,科学の両義性(民生にも軍事用にも使われえる可能性),不正確な報道など。科学を一歩離れて展望する。 
(読売新聞 長谷川聖治) 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) 10  (内容/ Contents) 「動物園学入門~京都市動物園で伝えられることを考える~」 
動物園といえば,日本では子どもを楽しませるためにいくところといった目的での利用が主流だが,世界的に見ると「動物園」とは博物館としての教育施設であり,研究施設として位置づけられている。京都市動物園には,「生き物・学び・研究センター」があり,研究と教育を統括しいている。同園で実践している,サイエンスコミュニケーションの様々な手法について解説する。 
(講義後の実践的インターンシップの紹介) 
京都市動物園が進める教育プログラムに,サイエンスコミュニケータとして参加してもらうことを推奨している。座学だけでなく,直接に来園者と接することでサイエンスコミュニケーションの楽しさと難しさを体験してほしい。 
(京都動物園 田中正之) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) 11  (内容/ Contents) 「野生動物学のすすめ~動物園は自然への窓~」 
動物園で飼育される動物のほとんどは,家畜化されていない野生動物で,その多くが絶滅の危機に瀕している。訪れた来園者に彼らの野生の暮らしを知ってもらうことが,動物園の大事な役割のひとつである。動物たちの野生での生態を知る研究や,それを伝えるために動物園で行う取組について概説する。 
(京都動物園 山梨裕美) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) 12  (内容/ Contents) 「動物園における希少動物の保全」 
現在,多くの動物が絶滅の危機に瀕しており,様々な保全の取り組みがなされている。動物園は希少動物の生息域外保全の拠点であり,種の保全は重要な責務である。本講義では動物園における希少動物の保全の取り組み・課題について解説する。 
(京都動物園 伊藤英之) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) 13  (内容/ Contents) 「動物福祉~動物たちの幸せを考える~」 
動物園は動物たちがいなければ成り立たない。しかし動物たちの多くは野生で生きるための形態や暮らしをしているため,飼育下で問題が起こることも多い。動物を飼育している以上,動物たちが健康で生き生きと暮らせるよう配慮することは我々の責任である。本講義では,動物福祉の概説,動物園で実際に行っている工夫,動物福祉に関する研究について実例を交えて説明する。 
(京都動物園 櫻庭陽子) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) 14  (内容/ Contents) 「動物園の環境デザイン」 
動物園では野生動物たちの魅力とその多様性,生態,生息環境を伝えるためのさまざまなデザインがなされている。これまでの動物展示方法の変遷と現在実践されている各地のデザイン事例について紹介する。 
(京都動物園 瀬古祥子) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 復習4時間 
(実施回/ Week) 15  (内容/ Contents) 総合討論(野口範子)  (授業時間外の学習/ Assignments) 予習3時間復習3時間 

講義の順番は変更される可能性があります。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加,グループ作業の成果等)  50%  出席と受講態度,積極的な議論への参加 
小レポート  50%  講義の理解度と考察 

各講義を通してサイエンスコミュニケーターとして重要な課題を見出し,自らその解決に向けて取り組むべき指針を考えることができているかについて評価する

 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
18 33.3 44.4 22.2 0.0 0.0 0.0 3.1

<テキスト/Textbook>

山谷清志  『『政策評価』』 (ミネルヴァ書房、2012) 内閣府,経済産業省,防衛省,外務省,JICA,JAXAのHPを参照 

 

<参考文献/Reference Book>

アラン•アルダ高橋 洋 訳  『最強の伝え方』(青土社、2017)著者は米国の俳優業の傍ら,コミュニケーションセンターを設立しサイエンスを含め人に伝えるために必要な能力を研究している。訳者は本校副専攻の取り組みを知ったことから本書の翻訳に取り組んだ。 
 

<備考/Remarks>

nnoguchi@mail.doshisha.ac.jp 

 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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