シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2016年度

3B5352 

○臨床まちづくり学
Clinical Approach to Community Building
2単位/Unit  春学期/Spring  烏丸/Karasuma  講義形式

  山口 洋典

<概要/Course Content Summary>

広辞苑第五版にはじめて登場した「まちづくり」ということばだが,学術的には確定的な定義を置くことは困難である。なぜならば,まちづくりとは実践家が絶え間なく変化する現場を応答し続ける営みを指すものであり,実践を通して見出す知見によって,あるまちに存在する形式知や暗黙知を上書き保存し続けていくローカルな挑戦であるためだ。そこで本講義では,「そのまち」に関わる(働く,住む,学ぶ,遊ぶ)意味や価値を創出している担い手に着目し,それらの担い手によって導かれる集合体の動態について,グループ・ダイナミックスの観点から接近する。 
とりわけ本講義では現場の「語り」に着目する。その「語り」は,強いリーダーシップの中で見られる「明快な主張」あるいは「演説」ではなく,むしろ「つぶやき」や「ぼやき」の類のものである。そのため後半には,講義室で「座って学ぶ」だけでなく,大学を飛び出し<まち>に「臨んで学ぶ」こととする。ゆえに,より効果的な学びを導くため,長らく鳥取県智頭町にて「ゼロ分のイチ村おこし運動」の牽引役を担い,地域経営の視点から実践的な学びを深める「人財育成塾」の取り組みを京都で始めた寺谷篤志さんの示唆を得て,自らの「事起こし(これをソーシャル・イノベーションへの社会実験と読み替えて差し支えない)」を促していく。机と現場を往復することで,「臨床」の難しさを前提にした醍醐味が体感されることを望んでいる。

講義では「紙芝居プレゼンテーション」方式で,現場のことばを紡いでいきます。

<到達目標/Goals,Aims>

事例検討をとおして臨床のローカリティを愚直に追求し,理論的な考察を経て,現場とともにまちづくりに関するインターローカルな知を協働で編集していくために,理論と実践の両面から,自らの現場の実践を豊かに語ることができるようになる。

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第1回  (内容/ Contents) 臨床まちづくり学を研ぎ究めるために:いざ「臨床の知」へ  (授業時間外の学習/ Assignments) グループワークに伴う情報収集 
(実施回/ Week) 第2回  (内容/ Contents) まちづくりへの学問的接近:「調査地被害」  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義担当者の修士論文の梗概を通読 
(実施回/ Week) 第3回  (内容/ Contents) まちづくりのための学問:グループ・ダイナミックスとは  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第4回  (内容/ Contents) グループ・ダイナミックスの基本的な考え方:「かや」で紐解く集合性  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第5回  (内容/ Contents) 当事者と研究者の協同的実践:社会構成主義における研究方法  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第6回  (内容/ Contents) 事例が語る・事例を語る:映像素材からの理解  (授業時間外の学習/ Assignments) 論文のあらましを指定の図解でまとめる 
(実施回/ Week) 第7回  (内容/ Contents) 事例が語る・事例を語る:エスノグラフィーからの理解  (授業時間外の学習/ Assignments) 論文のあらましを指定の書式でまとめる 
(実施回/ Week) 第8回  (内容/ Contents) 中間まとめ:ビジョンを描いて,語ってみよう  (授業時間外の学習/ Assignments) プレゼンテーション素材の作成 
(実施回/ Week) 第9回  (内容/ Contents) 研究実践の構造化と言語化:いい研究をいい論文にする  (授業時間外の学習/ Assignments) CiNiiもしくはGoogle Scholarで論文を渉猟する 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) 先行研究に見る問題の設定:課題から問題を探る  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) 理論とは何か:理論を実践に援用するために  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 科学を科学する:2つのメタ理論で人間と自然に向き合う  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 人間科学の方法論:「ベターメント」の手法をめぐって  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 時間と空間の設計概念:「いま・ここ」の場へのまなざし  (授業時間外の学習/ Assignments) 講義内で指示する 
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) まとめ  (授業時間外の学習/ Assignments) この間のレジュメ,講義ノートの精読 

受講生の理解の状況等を鑑み,上記の計画を変更することがある。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

平常点(出席,クラス参加,発表,グループ作業の成果等)  30%  出席状況と講義内容に関する議論への参画,電子メールの反応等より総合的に判定する 
期末レポート試験・論文  70%  分量,論理展開の明快さ,問題への対応,知識の理解度,現場への貢献の姿勢を総合的に判断する 

評価のポイントに示したとおりです。

<テキスト/Textbook>

寺谷篤志・平塚伸治・鹿野和彦  『「地方創生」から「地域経営」へ-まちづくりに求められる思考のデザイン -』 (仕事と暮らしの研究所、2015) ISBN:978-4908278006  「地方」は「中央」に対置する概念として用いられます。それに対して本書は「地域」の営みに関心を向けるため,図解化による抽象化と,巧みな造語を生み出すことによる具体化の双方に着目します。アクションリサーチにおける論文執筆へのヒントが多々埋め込まれた一冊です。 

 

本書は前から読むか,後ろから読むかで,読み解き方が異なる。前から読めば中央が語る政策について,後ろから読めば,図解を通じた臨床の知について,触れることができる。

<参考文献/Reference Book>

杉万俊夫  『グループ・ダイナミックス入門-組織と地域を変える実践学-』(世界思想社、2013)ISBN:978-4790715887 文章表現としては,日常生活で用いている言語が社会心理学の専門用語として扱われているので,難解に感じるだろう。しかし,科学論文を執筆,精読する経験ともなるため,精読の練習には格好の一冊となる。 
 

西村 仁志  『ソーシャル・イノベーションが拓く世界-身近な社会問題解決のためのトピックス30-』(法律文化社、2014)ISBN:978-4589036278 サブタイトルのとおり,30のトピックスから,実践の抽象化が図られた一冊ゆえ,多様な分野に関心を向ける一助として欲しい。 
 

上町台地コミュニティ・デザイン研究会(編)  『地域を活かすつながりのデザイン-大阪・上町台地の現場から-』(創元社、2009)ISBN:978-4-422-25055-7 実践を理論的観点から紐解く上でも参考となるので,1章と2章と8章を読んだ上で,興味のある章から読むことを薦める。 
 

その他,関連する学術雑誌の論文(特に『実験社会心理学研究』や『質的心理学研究』)などを適宜紹介する。

<参照URL/URL>

NHK地域づくりアーカイブス 
第6講での情報収集に積極的に用いる。無論,各々が日常的に多地域の事例に関心が向けられる手がかりとなることを期待している。 
 

お問合せは同志社大学 各学部・研究科事務室まで
 
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