2014年度

＜概要/Course Content Summary＞

世界の政治経済システムは現在，数百年のオーダーで大きな転換期にある。中国・インド・ブラジル・韓国・南アフリカなど新興国の経済・科学技術活動の急激な拡大や，世界経済の調整システムのＧ－７（先進国）からＧ－２０（先進国と新興国）への移行はその象徴であろう。一方で，産業革命以後の技術革新と生産力の増強，人類の活動範囲の拡大は，人類に大きな富と利便性を生み出してきたが，戦争・テロの拡大，地球温暖化，資源・エネルギー・水の枯渇，感染症，貧富の差など，近代化の“陰”の部分は今や人類社会の持続的発展に大きな脅威となっている。　
１９８９年の東西冷戦の終了と１９９２年のインターネットの民間開放は，グローバリゼーションを加速し，２０世紀から２１世紀への移行のわずか２０年の間に，世界システムの大転換を引き起こしている。　
２１世紀に，世界規模であるいはアジア，国，地域レベルで，持続的発展を実現するために，新しい視座，方法として，２００４年のアメリカ競争力評議会のパルミサーノ報告以来，世界的に産学官で「科学技術イノベーション」政策・戦略が実施されている。　
経済だけでなく科学技術活動の世界の重心が，欧米からアジアへと急速に移動している。グローバリゼーションとＢＲＩＣＳなどの新興国の台頭とは，科学技術の分野にも，研究開発戦略の策定，マネジメント手法，大学の経営戦略，人材の育成確保の方法，研究評価の方法にまで大きな影響を与えている。こうした中で，先進国，新興国，途上国を問わず世界中が，科学技術イノベーションの公共政策を強力に進め始めている。　
これは，教育・科学・技術・生産・流通そして最終的な社会的経済的価値の創出に至るまでの，イノベーションの各段階の連鎖システム全体の革新をめざすものである。そして，ルネサンス以来ヨーロッパ・アメリカ主導で築き上げられてきた，研究開発の実施と支援の制度体制，大学制度，成果の評価と蓄積・提供，産学官の連携システムなどの科学技術システム全体が大きな変革を迫られている。　
イノベーションのプロセスは確率過程である。基礎研究から価値創出までの確立と速度を上げ，研究の成果を社会実装し，限られた資源の下にイノベーションを効率的効果的に実現するためには，物理学，化学，生物学，人文社会科学といった伝統的分野を越え，組織を越えさらに国境を越えて，人，もの，カネ，情報の循環が必須となる。いわゆるオープンイノベーションである。世界的な人材の循環（brain circulation）やマネジメント，デザイン・システム思考の重要性が強調され，地域の産学連携からアジア，そして地球規模でのネットワークの形成が重視されている。　
日本政府は，経済の再生と多くの社会的問題の解決のため，また，２０１１年３月１１日に起こった東日本大震災・津波・福島原発事故を受けて，２０１３年６月に，従来の政策を大きく転換し「科学技術イノベーション総合戦略」を打ち出した。　
その柱は，従来のＩＴ，バイオ，ナノテクといった重点分野の推進から，経済的，公共的な課題解決型の研究開発への転換であり，エネルギー・環境，医療・高齢化対策，社会インフラの強化などである。これは，科学技術の公共政策・システム全体の再設計といえる。政府の科学技術政策の最高決定機関である総合科学技術会議の強化から，研究開発のテーマの設定，実施，助成制度，評価方法，産学連携，人材育成，税制・規制の改革，成果の社会実装，社会影響評価の仕組み，政策決定への市民参加などに及ぶ。　
本科目では，まず，欧米中心に築かれてきた科学技術システムが，急速に進むグローバリゼーションの下で，政策から実施の各層において大きく変わろうとしているダイナミズムを概観する。次に，企業，大学，行政，市民の各セクターの取り組みについて，政策，制度・体制，人材，企業・大学・学会，世界・地域・国・地方，分野（ｴﾈﾙｷﾞｰ・環境，ﾅﾉﾃｸ・材料，ﾊﾞｲｵ，情報など），規範・倫理などのテーマ毎に，国際比較や歴史的な視点を踏まえて講義し議論し，知識と洞察を深めたい。　
複雑で不透明な大転換期の下で，企業や大学，公的機関の経営戦略，技術開発，マーケティングに携わる者，21世紀の社会と科学技術の相互作用に関心をもつ者を対象に，俯瞰的な視座，歴史認識と洞察力，危機への対応力を身につけることを目指したい。

＜到達目標/Goals,Aims＞

科学技術の分野におけるグローバルなイノベーションを理解できるようになること。

＜授業計画/Schedule＞

＜成績評価基準/Evaluation Criteria＞

＜成績評価結果/Results of assessment＞   成績評価の見方について/Notes for assessment

登録者数  1名
  成績評価結果は公表されていません。

＜テキスト/Textbook＞

講義の中で指示する。

＜参考文献/Reference Book＞

講義の中で指示する。