シラバス
※学期中に内容が変更になることがあります。

2014年度

DB0322 

△技術とイノベーション
Science,Technology and Innovation
2単位/Unit  秋学期/Fall  烏丸/Karasuma  講義形式

  山口 栄一

<概要/Course Content Summary>

ポスト工業化社会にとって新しいビジネス・モデルは,価値創造を最大化する方法論として成立させざるを得ない以上,持続可能なイノベーションをその核としなければならない。イノベーションを定義づけその生成プロセスを分析しさらにその構造を明らかにして,イノベーションから出発する技術経営の方法論を考察することが,本科目の目的である。とくに本科目では,イノベーションの源泉は何か,そしてそれを如何に生み出し価値創造につなげていくかについて,体系的な理論を展開する。 
第1回において,イノベーションとは何かを概観したのち,クレイトン・クリステンセンの破壊的イノベーションを学んだうえで,その誤謬を発見する。 
第2回において,その誤謬の中から新しいイノベーションの構造であるパラダイム破壊型イノベーションを発見し,その表現手法としてのイノベーション・ダイヤグラムを学ぶ。 
第3回-5回において,パラダイム破壊型イノベーションの4つの例,すなわちトランジスタ,MOSFET,HEMT,青色発光ダイオードを,イノベーション・ダイヤグラムを描きながら学び,ブレークスルーのタイプ1を深く理解する。 
第6回では,青色発光ダイオード裁判を実際にディベートすることを通じて,日本国特許法(とくに35条)を深く理解する。 
第7回-8回では,舞台をイギリスに移し,ブレークスルーのタイプ2とタイプ3を理解する。 
第9回で,これらを体系的にまとめあげたのち,第10コマで,JR福知山線事故をケース・スタディとして取り上げて,企業の社会的責任とは何かをイノベーション学の立場から議論する。最後に第11回-15回において,イノベーションの創生手法とそれを育む組織のあり方にかかわる研究成果を,内外の専門家をまじえて発表しあい,全員で討論する。 

<到達目標/Goals,Aims>

 イノベーションとは何かを深く理解し,それをみずからの技術経営の実践のなかで適用できるようになるとともに,イノベーション学に関するあたらしい研究の契機をみずから発見できるようになる。 
 とくに,従来定説だったクリステンセンの破壊的イノベーションの誤謬を理解したうえで,パラダイム破壊型イノベーションを理解して,ブレークスルーの方法論を体系的に論ずることができるようになる。 
 さらには企業の社会的責任と社会の幸福のありかたを,イノベーション理論の立場から深く理解できるようになる。 

<授業計画/Schedule>

(実施回/
Week)
(内容/
Contents)
(授業時間外の学習/
Assignments)
(実施回/ Week) 第 1回  (内容/ Contents) クリステンセンの破壊的イノベーション 
イノベーションとは何かを,3次元(技術イノベーション,経営イノベーション,アイステシス・イノベーション)空間として理解する。とくに技術イノベーションについて,20世紀のイノベーション・モデルの真髄を理解する。つぎに,クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を議論し,彼の定義する破壊的イノベーションとは何かを学ぶ。さらに,その例を討論し,破壊的イノベーションの本質を理解する 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) クリステンセンの破壊的イノベーションについて,定義とともに例を考察しておく 
(実施回/ Week) 第 2回  (内容/ Contents) パラダイム破壊型イノベーションの発見 
クリステンセンの破壊的イノベーションに関する議論の誤謬を導き,そのほころびから出発して,パラダイム破壊型イノベーションを発見する 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書「イノベーション 破壊と共鳴」の第2章を繰り返し読んでおく 
(実施回/ Week) 第 3回  (内容/ Contents) ケース・スタディ=トランジスタ 
パラダイム破壊型イノベーションの典型例であるトランジスタについて,そのイノベーション・プロセスにかかわるケース・スタディを行なう。このケース・スタディを通じて,イノベーション・ダイヤグラムの描き方を学ぶとともに,ブレークスルーのタイプ1について理解する 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書「イノベーション 破壊と共鳴」の第3章の「トランジスタ」を繰り返し読んでおく 
(実施回/ Week) 第 4回  (内容/ Contents) ケース・スタディ=MOSFETとHEMT 
MOSFETとHEMTという,トランジスタに引き続いて起きたパラダイム破壊型イノベーションについて,そのイノベーション・プロセスにかかわるケース・スタディを行なう。このケース・スタディを通じて,イノベーション・ダイヤグラムの描き方を学ぶとともに,ブレークスルーのタイプ1について理解を深める 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書「イノベーション 破壊と共鳴」の第3章の「MOSFETとHEMT」を繰り返し読んでおく 
(実施回/ Week) 第 5回  (内容/ Contents) ケース・スタディ=青色発光ダイオード 
青色発光ダイオードという日本で生まれ育ったパラダイム破壊型イノベーションについて,そのイノベーション・プロセスにかかわるケース・スタディを行なう。このケース・スタディを通じて,イノベーション・ダイヤグラムの描き方を学ぶとともに,ブレークスルーのタイプ1についてさらに深く理解する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) 教科書「イノベーション 破壊と共鳴」の第4章を繰り返し読んでおく 
(実施回/ Week) 第 6回  (内容/ Contents) ケース・スタディ=青色発光ダイオード裁判 
青色発光ダイオード特許裁判の真実を理解するために,2004年1月30日の所謂「200億円判決」に基づいて控訴審をどう戦うかを考察し,原告側・被告側に分かれてディベートを行なう。さらに,このディベートを通じて,日本国特許法(とくに35条)を深く理解する 
(授業時間外の学習/ Assignments) 青色発光ダイオード特許に関する2004年1月30日の所謂「200億円判決」を調べ,三村量一裁判長による判決の根拠を明らかにしておく 
(実施回/ Week) 第 7回  (内容/ Contents) ケース・スタディ=ARMそしてPlastic Logic 
英国ケンブリッジのベンチャー企業であるARM社は,組み込み型マイクロプロセッサにおいてなぜ日立をしのいで世界第一位になれたのかを考察することにより,ブレークスルーのタイプ2について理解する。さらに,やはりケンブリッジのベンチャー企業Plastic Logic社について,成功と失敗の本質についてのディベートを行なう 
(授業時間外の学習/ Assignments) 英国ケンブリッジのベンチャー企業であるARM社およびPlastic Logic社について調べておく 
(実施回/ Week) 第 8回  (内容/ Contents) ケース・スタディ=Pax Britannicaと蒸気機関 
16世紀半ばまで「取るに足らない国」だったイギリスが,突然かつ急激に国際舞台に台頭し,ついに世界の覇権をにぎれた(Pax Britannica)のはなぜなのかを,イノベーション理論の立場から理解し,イノベーションの進化における技術の決定的重要さを学ぶ。さらに蒸気機関のイノベーション・プロセスを考察することにより,ブレークスルーのタイプ3について理解する。 
 
(授業時間外の学習/ Assignments) イギリスの16世紀以後の歴史を調べておく 
(実施回/ Week) 第 9回  (内容/ Contents) ブレークスルーのイノベーション理論 
第8コマまでに行なってきた議論をまとめながら,ブレークスルーのイノベーション理論を体系化する。さらに,ブレークスルーとは何かを念頭に置きながら,未来ビジョン(とくに,More MooreとMore than Moore)に関するブレインストーミングをする 
(授業時間外の学習/ Assignments) 最終課題にむけてのグループワークをしておく 
(実施回/ Week) 第10回  (内容/ Contents) ケース・スタディ=JR福知山線事故の本質 
JR福知山線事故の本質を理解するために,検察側と被告人(JR西日本)側に分かれて裁判のシミュレーションを行なう。このシミュレーションを通じて,「会社とは何のために存在するのか。企業の社会的責任とは何か。さらには,21世紀における社会の幸福のありかはどこか」を,全員で議論する 
(授業時間外の学習/ Assignments) 最終課題にむけてのグループワークをしておく 
(実施回/ Week) 第11回  (内容/ Contents) 外部講師による招待講義 1 
イノベーション理論を研究・教育しておられる専門家をお招きし,とくにイノベーション・ダイヤグラムとパラダイム破壊型イノベーションについて講義いただき,イノベーションと技術経営の未来ビジョンについて,全員で討論する 
(授業時間外の学習/ Assignments) 最終課題にむけてのグループワークをしておく 
(実施回/ Week) 第12回  (内容/ Contents) 外部講師による招待講義 2 
イノベーション理論を研究・教育しておられる専門家をお呼びし,とくにイノベーション・ダイヤグラムとパラダイム破壊型イノベーションについて講義いただき,イノベーションと技術経営の未来ビジョンについて,全員で討論する 
(授業時間外の学習/ Assignments) 最終課題にむけてのグループワークをしておく 
(実施回/ Week) 第13回  (内容/ Contents) 受講生による研究発表 1 
1人15-30分程度で,最終レポートの進捗を発表してもらう (4名-8名) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 最終課題にむけてのグループワークをしておく 
(実施回/ Week) 第14回  (内容/ Contents) 受講生による研究発表 2 
1人15-30分程度で,最終レポートの進捗を発表してもらう (4名-8名) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 最終課題にむけてのグループワークをしておく 
(実施回/ Week) 第15回  (内容/ Contents) 受講生による研究発表 3 
1人15-30分程度で,最終レポートの進捗を発表してもらう (4名-8名) 
(授業時間外の学習/ Assignments) 最終課題にむけてのグループワークをしておく 

受講生の理解度と興味にしたがって,授業計画を変更する可能性がある。

<成績評価基準/Evaluation Criteria>

小レポート  50%  小レポートを5回課す(各10点) 
出席評価にもこのレポートを用いる 
期末レポート試験・論文  50%  最終レポートの提出を課する 

<成績評価結果/Results of assessment>   成績評価の見方について/Notes for assessment

    

登録者数  2名
  成績評価結果は公表されていません。

<テキスト/Textbook>

山口栄一  『イノベーション 破壊と共鳴』第5刷  (NTT出版、2006年) ISBN:4-7571-2174-1 

 

山口栄一  『JR福知山線事故の本質-企業の社会的責任を科学から捉える-』第2刷  (NTT出版、2007年) ISBN:978-4-7571-2196-6 

 

FUKUSHIMAプロジェクト委員会  『FUKUSHIMAレポート-原発事故の本質-』第2刷  (日経BPコンサルティング、2012) ISBN:978-4-86443-000-5 

 

<参考文献/Reference Book>

クレイトン・クリステンセン  『イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき-』(翔泳社、2001年)ISBN:4-7981-0023-4 
 

 

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