<概要/Course Content Summary>
予測困難な問題が頻発する複雑なビジネス世界を,システム思考・システムダイナミックスによって分析し,その問題解決のためのビジョンを共有化することが近年重要となってきています。すなわち,研究開発によって創造された新技術が,新商品として製品化され,市場で成功をおさめるためには,未来トレンドやライフスタイルと環境の変化等の予測,研究開発,製造,マーケッティング,カスタマーサティスファクション,アカウンティング等々多岐にわたる様々なメンバーが,有機的に連携しあい,その成果をつねにフィードバックしながら,ビジョンを共有化してゆくことが必要となりますが,システム思考やSD経営戦略モデル分析の方法がそのために不可欠となりつつあるのです。特にこうした手法は,複雑で相互依存的な経営分析に不可欠な戦略ツールとして,欧米のビジネススクールやコンサルティング会社で近年盛んに利用されだしております。しかるに我が国では,こうしたツールの紹介やその体系的な教育カリキュラムすらほとんど存在しないのが現状です。 本科目は,このような現状を踏まえ,システム思考・システムダイナミックスによるモデルング手法を体系的に講義し,受講者が短期間で効率的に,ビジネス世界における問題解決能力を開発できるようになることを目指します。モデリングソフトとしてUnicode 日本語対応のVensim PLE(Webから無料でダウンロード可能)を使用し, ダイナミック・モデリングおよびシミュレーション分析の基礎を学んでゆきます。
<到達目標/Goals,Aims>
システム思考による因果ループ図及びストックとフローを用いた簡単な会計システムダイナミックスのモデルが構築できるようになること。
<授業計画/Schedule>
(実施回/ Week)
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(内容/ Contents)
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(実施回/ Week)
1
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(内容/ Contents)
システムダイナミックスの歴史 2007年にシステムダイナミックス生誕50周年を迎えました。その間,ビジネス・マネジメントに於けるシステム分析を中心にしながら,ワールドモデル,ナショナルモデル,公共政策モデル,環境モデル等へと応用例が広がり,最近では初等中等教育へとSDの方法論が急速に浸透しつつあります。創始者でMIT名誉教授のJay Forrester の業績を中心にSDの半世紀の歴史を概観します。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
2
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(内容/ Contents)
システムとMental Model システムを理解するための Mental Model の形成過程について学び,いったん形成されたモデルが,固定観念となりシステム改革のための政策遂行に抵抗したり,その実現を遅らせるのはなぜかについて学びます。次にシステムとは何かを経済,経営システムを中心に考えます。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
3
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(内容/ Contents)
システム思考と因果ループ システム思考とは変数と矢印を用いて,正のフィードバックループ(増強ループ)および負のフィードバックループ(バランスループ)の概念を応用しながらシステム構造を分析する方法論です。この方法論の基礎を学び,次にキーワード(変数)から因果ループを構築する方法を,様々なビジネス例を参照しながら学びます。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
4
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(内容/ Contents)
システム思考の8基本形 現実の様々な経営問題から派生するキーワード(変数)を用いて,因果ループ図を実際に作成してゆく作業を継続してゆくと,その過程で繰り返し出現するパターンが観察されるようになります。そうしたパターンを8つの基本型として学びます
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
5
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(内容/ Contents)
ストックとフロー ダイナミックス〔動学,力学〕のエンジンとなるストックとフローの関係を学び,微分方程式や差分方程式との関係を理解します。あわせてオイラー積分法の考え方についても学びます。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
6
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(内容/ Contents)
ストックとフロー(シンプル・ダイナミックス) 次にフィードバックのないストックとフローからなる簡単なダイナミックスモデル(資産の現在価値,ランダムウオーク等)を作成します。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
7
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(内容/ Contents)
ストックとフローの会計への応用:会計システムダイナミックス 企業財務諸表(損益計算書,貸借対照表,キャッシュフロー計算書)の理解は,すべての経営者にとって必須ですが,ストックとフローの手法を用いることによって,これら3つの会計が統一的にモデル化されることになり,企業会計の総合的理解が非常に容易となります。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
8
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(内容/ Contents)
会計システムダイナミックス実践 新規事業を立ち上げる簡単な例をとりながら,会計システムダイナミックスによるモデリングの実践をハンドオンで学んでゆきます。また経営分析および将来の経営戦略シナリオ分析の基礎も学習します。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
9
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(内容/ Contents)
指数的成長と衰退のモデル 正のフィードバックおよび負のフィードバックの意味を考え,それとの関連で指数的成長および指数的衰退モデルの性質を考察します。特にストックの倍増時間の経済・経営的意味について考えます。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
10
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(内容/ Contents)
システムに於ける遅れ システムに於ける様々な遅れ〔認識の遅れ,判断の遅れ,決断の暮れ,投資の遅れ,工期の遅れ,生産・出荷の遅れ等〕は組織の効率的運営にとって,決定的に重要なファクターとなります。こうしたシステムに於ける遅れの一般的性質を,パイプラインの遅れと情報の遅れに分けて詳細します。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
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(内容/ Contents)
S字型成長と超過・崩壊のモデル 新商品の市場拡散や,マーケッティングに於ける顧客の獲得競争等で用いられるS字型モデルの性質や構造について学びます。次に,株価暴落や企業倒産等のシステムが崩壊するモデルの性質や構造について学びます。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
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(内容/ Contents)
循環と並行フローのモデル 振り子の運動や在庫・雇用の変動は一見無関係に見えますが,こうしたシステムの循環運動は,全く同じ構造から引き起こされているのです。こうした循環をもたらすシステムの一般的構造について学びます。従業員が昇進するに従い,経験や知識も並列的に変化してゆきます。こうした並列フローの構造についても考察します。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
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(内容/ Contents)
「ビールゲーム」:サプライチェーンマネジメントゲーム 「ビールゲーム」はMITで開発されたサプライチェーンマネジメントゲームで,経営者セミナー等で広く利用されています。ビールの売れ行き状況に応じて,小売店は卸売店にビールを発注し,卸売店は在庫の変動状況に応じて,ビールメーカーに生産注文を出し,工場はこれに応じて原材料を仕入れるといった一連のサプライチェーンからなり,在庫コストの少ないチームが勝利します。各チームに分かれて実際にこのゲームをプレーします。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
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(内容/ Contents)
システム構造と行動パターン:ビールゲームからの教訓 「ビールゲーム」を実際にプレーすれば,例外なく在庫変動を観察しますが,なぜそうなるのか,またそうした変動を少なくし,在庫コストをより削減できる効率的なシステムを構築するにはどうすればいいのかを考えます。このサプライチェーンマネジメントゲームを通じて,システムの構造とその構造がもたらす様々な行動パターンとの関連を理解してゆきます。また効率的なシステムをデザインしたり構築することの重要性を実感してゆきます。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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(実施回/ Week)
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(内容/ Contents)
まとめ 講義の総まとめを行い,職場で直面する問題を解決するためにシステムダイナミックスの方法がどのように有効利用できるかについて議論します。
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(授業時間外の学習/ Assignments)
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<成績評価基準/Evaluation Criteria>
平常点(出席,クラス参加,グループ作業の成果等)
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30%
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クラスディスカッションへの参加態度
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小レポート
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40%
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毎週ホームワーク課題を提出
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期末レポート試験・論文
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30%
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最終レポートの評価
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出席,クラスディスカッション,グループワーク,毎週のホームワーク,最終レポート等を総合的に評価。
<成績評価結果/Results of assessment>
成績評価の見方について/Notes for assessment
登録者数 3名 成績評価結果は公表されていません。
<テキスト/Textbook>
John D. Sterman
, Business Dynamics
:
Systems Thinking and Modeling for a Complex World
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(McGraw-Hill Companies, Inc., 2000)
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國定 克則 『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』 (朝日新聞社、2007)
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<参考文献/Reference Book>
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