シラバス・講義概要

2008年度

37638 ○政治行動論 2単位 春学期 今出川

西澤 由隆

<概要>

「政治行動論」とは,どういう科目なのか。まず,それを説明する必要があるでしょう。

政治的な営みは,それは政治的なアクターの「行動」の結果であるということができるでしょう。その時の総理大臣が,ある政策の実現を目指して,具体案の作成を関係省庁に指示をするから,その原案が準備される。そして,それに賛成する政治家と,また反対する政治家との駆け引きのなかで,具体的な政策が形成されるわけです。そして,その政策過程のさまざまな局面で,個々のアクターの「行動(行為)」があります。

もちろん,ここでのアクターは,政治家だけにはかぎりません。一般市民や有権者はもちろんのこと,市民団体の活動家なども含みます。また,個人ではなく,集団もアクターと成りえます。政党・派閥・市民団体・利益集団も立派なアクターです。そして,国家も,また,国際政治の舞台では1つのアクターです。

これらの「政治的」なアクターが,なぜ,どのような理由で,どのようなメカニズムで,一定の「行動」を取ったかを説明しようとするのが,政治学の1つの役割です。そして,その際に有用だと思われる理論や分析アプローチを紹介するのがこの科目の目的です。

政治行動を説明する理論は多くありますが,そのうち,ゲーム理論と中心とした合理選択論的アプローチと,認知心理学を参考にした社会心理学のアプローチをこの講義では紹介します。「囚人のジレンマゲーム」に代表されるゲーム理論についても,また,「同調行為」のような社会心理的なアプローチについても,基礎科目の「政治参加と選挙」で,その「さわり」を紹介しましたが,時間の制約もあり,あまり詳しく説明することができませんでした。この講義では,より詳しい説明を試みたいと思います。

このクラスのもう1つの目的は,きみたちの読書の道案内をすることです。

そもそも,大学の授業では,あるテーマについて,これまでの膨大な知識の蓄積について,そのすべてを紹介することはできません。担当者は,そのエッセンスを紹介することしかできません。そして,結局,そのテーマについてのより深い理解は,みなさんの主体的な取り組みによって初めて実現します。具体的には,先行研究についての文献を,みなさんがひたすら読むことが求められます。このクラスでは,そのお手伝いをしたいと思います。

取り上げるテーマごとに,毎週,100から150ページくらいの文献を指定します。それを事前に読んで,教室に来てほしいと思います。毎週のクラスの前半には,私は,それについて要点を紹介します。そして,後半には,質疑応答をつうじて理解を深めてもらいます。一緒に考える授業にしたいと思います。

授業での資料は,原則,私のホームページ(http://ynishiza.doshisha.ac.jp/)で事前にアクセスできるようにします。必要に応じて各自で印刷して授業に持参してください。また,連絡事項なども掲示しますので,定期的にホームページを確認するようにしてください。

 

<授業計画>

A.はじめに

1.講義概要と授業の進め方

 [必読文献]

 1.草野 厚1997,『政策過程分析入門』東京大学出版会,5章

 [参考文献]

 1.アリソン, G. T. 1971,『決定の本質』宮里政玄訳 中央公論社

B.ゲーム論的アプローチ

2.ゲーム理論の基礎・囚人のジレンマゲーム

 [必読文献]

 1.西山 賢一 1986,『勝つためのゲームの理論』講談社,序章―2章

 [参考文献]

 1.鈴木 光男 1970,『人間社会のゲーム理論』講談社

3.社会のジレンマ(N-1人ゲーム)・進化ゲーム

 [必読文献]

 1.西山 賢一 1986,『勝つためのゲームの理論』講談社,3章―5章

 [参考文献]

 1.アクセルロッド,『つきあい方の科学』ミネルバ 1987年

 2.山岸 俊男 1990,『社会的ジレンマのしくみ:「自分1人ぐらいの心理」の招くもの』サイエンス社

 3.Morrow, James D. 1994, Game Theory for Political Scientists.

  Princeton: Princeton University Press.

 4.Brams, Steven. 1980. Biblical Games: A Strategic Analisys of Stories in the Old Testament. Cambridge: MIT Press.

4.(補講)小論文の書き方

5.混合戦略

 [必読文献]

 1.鈴木 光男 1970,『人間社会のゲーム理論』講談社,5章

 [参考文献]

 1.大和 毅彦・西條 辰義 2000,「公共財供給」中山 幹夫他編『ゲーム理論で解く』有斐閣,3章

6.政治学への応用 1:連立政権の形成ゲーム

 [必読文献]

 1.武藤 滋夫 2000,「政党の分裂と連合政権の形成」中山 幹夫他編『ゲーム理論で解く』有斐閣,8章

 [参考文献]

 1.Dodd, Lawrence. 1976. Coalitions in Parliamentary Government. Princeton Univ. Press. 岡沢訳『連合政権考証』

 1977,政治広報センター

7.政治学への応用 2:中選挙区制のもとでの議員行動

 [必読文献]

 1.建林 正彦 2004.『議員行動の政治経済学』有斐閣,2章

 [参考文献]

 1.カーチス, G. 1968.『代議士の誕生 新版』山岡 清二訳 サイマル出版 1983.

C.社会心理学的アプローチ

8.対人認知・原因帰属

 [必読文献]

 1.池田 謙一・村田 光二 1991,『こころと社会』東京大学出版会,1章―3章

 [参考文献]

 1.加藤 義明編 1987,『社会心理学』有斐閣

 2.Schneider, Hastorf and Ellsworth 1978. Person Perception, 2nd ed. Addison-Wesley.

9.ヒューリステイクス・スキーマ・スクリプト

 [必読文献]

 1.池田 謙一・村田 光二 1991,『こころと社会』東京大学出版会,1章―3章

 [参考文献]

 1.Nisbett and Ross. 1980. Human Inference: Strategies and Shrtcomings of Social Judgment. Prentice Hall.

 2.池田 謙一 1997,『転変する政治のリアリティ』木鐸社

10.同調・グループ心理

 [必読文献]

 11.池田 謙一・村田 光二 1991,『こころと社会』東京大学出版会,7章,9章

 [参考文献]

 1.Irving Janis. 1972. Victims of GROUPTHINK. Houghtn MIfflin.

11.援助行為

 [必読文献]

 1.B. ラタネ・J. M. ダーリー 1977,『冷淡な傍観者』竹村 研一・杉崎 和子訳,ブレーン出版 1977

12-13.権威への服従

 [必読文献]

 1.S. ミルグラム 1969,『服従の心理―アイヒマン実験』岸田 秀訳,河出書房新社 1985

D.まとめ

14.政治行動論の今後

 

<成績評価基準>

◆評価指定した文献についての理解を確認する小テストを4回実施します。小テスト実施日は,事前に「授業計画」の中でアナウンスします。なお,成績分布は,「平均を75点・標準偏差を10点」を原則としています。すると,理論的には,90点以上が5%,80点以上が25%,70点台が40%,70点未満が30%となります。

<成績評価結果>  成績評価の見方について

37638    政治行動論

登録者数

成績評価(%)

評点
平均値

備考

A B C D F
59 10.2 23.7 23.7 15.3 27.1 0.0 1.7 *

 

<参考文献>

◆参考文献◆
・草野 厚 1997,『政策過程分析入門』東京大学出版会
・アリソン, G. T. 1971,『決定の本質』宮里 政玄訳 中央公論社
・鈴木 光男 1970,『人間社会のゲーム理論』講談社
・西山 賢一 1986,『勝つためのゲームの理論』講談社
・アクセルロッド,『つきあい方の科学』ミネルバ 1987年
・山岸 俊男 1990,『社会的ジレンマのしくみ:「自分1人ぐらいの心理」の招くもの』サイエンス社
・Morrow, James D. 1994, Game Theory for Political Scientists. Princeton: Princeton University Press.
・Brams, Steven. 1980. Biblical Games: A Strategic Analisys of Stories in the Old Testament. Cambridge: MIT Press.
・中山 幹夫他編『ゲーム理論で解く』有斐閣
・Dodd, Lawrence, 1976, Coalitions in Parliamentary Government. Princeton Univ. Press. 岡沢訳『連合政権考証』1977,政治広報センター
・建林 正彦 2004.『議員行動の政治経済学』有斐閣
・池田 謙一・村田 光二 1991,『こころと社会』東京大学出版会
・加藤 義明編 1987.『社会心理学』有斐閣
・Schneider, Hastorf and Ellsworth 1978. Person Perception, 2nd ed. Addison-Wesley.
・Nisbett and Ross. 1980. Human Inference: Strategies and Shrtcomings of Social Judgment. Prentice Hall.
・池田 謙一 1997.『転変する政治のリアリティ』木鐸社
・Irving Janis. 1972. Victims of GROUPTHINK. Houghtn MIfflin.
・ラタネ,B. and ダーリー, J.M. 1977,『冷淡な傍観者』竹村 研一・杉崎 和子訳 ブレーン出版
・ミルグラム,S. 1969,『服従の心理』岸田 秀訳 河出書房新社

 

 

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